05 私と叔父様
アレクと私は授業の合間に逢瀬を楽しんだ。
昔みたいに散歩してみたり、お互いの食べ物を持ち込んでランチしてみたり、危なくない程度に魔法の実験をしてみたり。かと思えば領地運営の書類に対して討論を交わしたりもした。隣国で学んできたアレクの発想は面白かった。
おかげでいくつかの問題が解決したのはありがたかった。
当初の予定よりもずっと資金に余裕ができた。これならばもう少し早く私の目的を達成できる気がする。
とある週末の夜。
今日はアレクの誕生日を祝うために公爵邸でパーティが開かれている。
私も招待されたけど当然参加できるわけがない。もしも私がドレスを仕立てようとすれば、何かしら妨害してくるだろう。想像しただけでも騒々しくて頭が痛くなる。
私以外の家族はそれぞれ私に何かしらの用事を言い渡してパーティへ出掛けて行った。よっぽど私を外に出したくないらしい。私が幼馴染だからだろう。そんなに警戒しなくとも私は行かないのに。
週明けアレクにはパーティに参加できなかったことを謝っておかないと。アレクには家の事情を明かしていない。多少察してはいると思うけど。
今頃ベルは王子と踊っているはずだ。公爵邸のパーティは皇室のパーティに引けを取らないほど豪華なはずだから、きっと彼らはギリギリまで会場に居座り楽しむだろう。……だから私は参加しないのだ。
家族から言い渡された用事を早々に片付け、秘密裏に家を出る。使用人たちにも内緒。家族が帰ってきたらお世話で忙しいだろうから今のうちに休んでおくように言ってある。
向かう先は決まっている。
「叔父様、お久しぶりです。体調はいかがですか?」
「イザベラのおかげで大分良いよ。君のおかげで無事に死に損なってる」
「それはなによりです」
私は叔父様の家に来ていた。
お母様の兄。本来であれば伯爵邸を継ぐはずだった人。父が誰よりも私と会わせたくない人。
学園に通うようになってから、さらにいえば義妹の入学が決まってから、私に対する監視や拘束が緩くなった。なんとか家族にバレずに叔父様に接触し、以来家族全員が不在になる度に叔父様のもとを訪れていた。
「リハビリは続けていますか?」
「ああ、もう杖がなくても歩けそうだよ」
「もうすぐですね」
「……そうだな。イザベラ、お前は本当にそれでいいのか?」
「もちろんですよ。前もお伝えしたとおり、本来は叔父様が継ぐべきものでしたから」
そう。伯爵家は本来、叔父様が継ぐはずだったのだ。
叔父様は伯爵家を継ぐ前に何者かにより毒を盛られた。毒のせいで半身が不自由な身になり、以来寝たきりだった。
当時の叔父様の婚約者は半身不随となった叔父様を見捨てることなく、そのまま結婚し従兄弟のオリバーを産んでいる。
「お前は何も悪くないだろう。」
「……だとしても、私は、私たちは今の地位にいるべきではありません」
「イザベラ……。お前は私の妹の娘であり、私の姪なんだ。お前を養子に迎えるという手もある。必ずしも全てを捨てる必要はないということを、覚えておきなさい」
「わかりました」
「わかったような顔をしているが、あまり言うこと聞く気ないだろう」
「はい。そうですね」
私の返事を聞くと叔父様はため息を吐いた。そういうところは母親に似て頑固だな、といいながら。
叔父様の手を握って体を癒す。魔力を流せば、叔父様があと少しで完治するのがわかる。あと少し。あと少しで面倒ごとが片付くはずだ。




