04 私とミスティア
今回短めです
「イザベラ、なんで授業に来なかったのよ」
「ごめん、妹に見つかっちゃって。撒いてたら間に合わなくなっちゃったの。ほら、あの先生は遅刻に厳しいでしょ。遅れて入って怒られるくらいならいいかなって」
「……はい、今日の授業のノート」
「ふふ、ありがとう」
アレクと別れを告げて教室に戻ると、案の定拗ねた様子のミスティアが待ち構えていた。拗ねながらも、私の事情を理解してノートを貸してくれる。
「ミスティア、今日も生徒会ある?」
「あるわよ。でも重要な話題は無いの。今日は惰性で集まるようなものだから。ノートはゆっくり写して大丈夫よ。もし何かがあってもテオがうまいことやるわ」
「ありがと」
ゆっくり、とは言われたけれど一応急いでノートを写す。その間ミスティアは私の前に座って難しそうな本を読み出した。
ほとんど誰もいない教室で、静かに時間が過ぎていく。
「あと15分くらいで終わると思う」
「相変わらず書くのが早いわね」
「まあね」
本から視線を逸らさないままに話す。私もノートから目は離さないし手を止めない。これが許されるからミスティアといるのは本当に心地がいい。
「イザベラ」
「んー、なに?」
「私はイザベラの一番の友達よね?」
「うん」
「じゃあ本当にどうしようもなくなったら、私に助けてって言うって約束して」
思わず手が止まる。見上げればミスティアと目があった。
「私はね、イザベラが大事なの。だからイザベラがどうにかなっちゃう前に、助けてって言って欲しい」
「……もう十分助けてもらってると思うんだけど」
「私は納得してないの。わかるでしょ」
「んー…ふふ」
「んーじゃない。なによ、いつもよりヘラヘラしちゃって」
「えー、そう?」
いつも通りだと思うのだけど。
「私にはわかるわよ。何かいいことあったでしょ。いつもなら私がさっきみたいなこと言ったら「はいはい」って流すもの」
「なにそれ、すごく無礼じゃん」
「そうよ、王族の私に対してイザベラはすごく無礼なんだから」
そういうミスティアは王族なのにあけすけだ。普通は伯爵家程度の娘とこんなに気楽に話してノートを貸したりしない。
「そうね、ミスティアの言う通り、今日はちょっといいことがあったの」
ミスティアは意外そうに驚く。
「イザベラが、笑った……」
「ええ?なにそれ。私だって笑う時くらいあるわ」
「ああ、真顔に戻っちゃった。珍しい。そんなにいい出来事だったの?」
アレクを思い出す。
日差しを浴びて、眩しいプラチナブロンド。あの頃と変わったけれど、変わってない優しい表情。思い出すと、少し胸が苦しくなる。
「そうね。いい出来事なんだと思う」




