表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私と面倒ごとと君  作者: 立花 みどり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/19

13 私と大切な君


 ミスティアとテオールはしばらく一緒にいて、みんなでお喋りをした。特にテオールが学園でアレクがどう過ごしているか面白おかしく語るものだから、また大笑いしてしまった。

 

 こんなに笑ったのはすごく久しぶり。頬が痛くなったくらいだ。


 二人は夕方頃になると帰った。そのあとアレクと一緒に部屋で夕食をとり、入浴を済ませた。すっかり住み慣れてしまった寝室でアレクが来るまで本を読んでいる。


 図書館から貴族名鑑を持ってきてもらった。リストにある貴族の姿を一人ずつ確認していく。こうしてみると本当に貴族は似た色が多いな。


 絵姿を見ても誰もピンとこなかった。ピンと来るとは思っていなかったけれど。リストに上がっていた五人は濃淡は違えどみんな同じ色を持っていた。私と同じ色。年代も同じ。

 この中の誰かが父親かもしれない、と言われても実感が湧かない。


 父親が分かったらどうすればいいんだろう。名乗り出るべきなのか。

 血縁関係があるとはいえ今まで会ったことがないから、他人みたいなものだ。会ったとしても何を話せばいいのかわからない。


 何度か絵姿を見て、でもやっぱりよくわからなくて、諦めて本を閉じた。

 もういいや、この辺にしておこう。


 サイドテーブルに本を置いて水でも飲もうかと立ち上がった時、寝室の扉が開いてアレクが入ってきた。


「まだ起きてたの?」

「うん、貴族名鑑見てた」

「なんかピンときた?」

「それが全然。ちょうど今諦めたとこ」

「そっか」


 アレクはベッドに座って、隣をぽんぽんと叩く。私は素直に隣に座る。アレクはいつも通り私の方に頭を預けて目を瞑った。


「今日はありがとう、ミスティアたちを連れてきてくれて」

「ううん。元気出た?」

「とても」

「それはよかった」


 ミスティアとの会話を思い出す。ミスティアとの約束。


「アレク」

「ん、なに?」


 手を握ると肩から頭をあげて向き合ってくれた。でも顔を見て言うのが恥ずかしくて、私は手を見たまま。昼にミスティアとした約束を思い出す。


「私、アレクと結婚するわ」


 恥ずかしくて握った手をぎゅっと握る。昔よりもずっと大きな手。私より大きくて、指が長い。剣術もやっているからか少し手のひらが硬い。私はこの手が好きだ。


「……アレク?」


 私的にはそれなりにハードルの高い告白をしたはずなのに、アレクからは何も返事がない。だから不安になって顔をあげると、アレクは静かに涙を流していた。


「え……?!泣いてるの?」

「……うん」


 握っていた手を離してゆっくりと抱きしめられる。


「な、なんで泣いてるの」

「わからない。嬉しすぎてだと思う」

「……本当に私のことが好きなのね」

「好きとか愛してるとか、そう言う表現が軽く思えるくらいにはイザベラのことが好きだよ」


 抱きしめる手に力が入る。


「嬉しい。すごく嬉しい。ありがとう、イザベラ。決心してくれて本当にありがとう」

「ううん、遅くなってごめんなさい」

「ミスティアに色々言われた?」

「……うん。全部なんとかするとか。そんな感じのこと」

「僕じゃなくてあいつが決め手だと思うと妬けるな」

「ごめん、それは許して」

「今回だけだよ」


 抱きしめていた腕の力を抜いて、向き合う。すごく近い距離で。こんなに近くで顔を合わせるのは本当に久しぶりで、恥ずかしくて目線を逸らしてしまう。

 アレクはそんな私を少し笑うと、額にキスをした。


「僕たちが結婚するにはいくつか壁があるけれど、それは明日話そう。……今日はこのまま幸せな気持ちで寝たいから」

「賛成」

「大丈夫、僕が、僕たちが全部なんとかする。面倒なことは全部僕に任せてよ」

「頼もしいこと」

「うん、だからめいいっぱい頼って」


 面倒が嫌いで逃げたいとは言ったけれど、甘やかしすぎじゃなかろうか。そんなことを言ってみたけれど今まで苦労した分、これから一生甘やかすくらいでちょうどいいのだと言われてしまった。


 なんだそれはと笑ったりしているうちに、いつの間にか眠ってしまい気づけばすっかり朝だった。朝日が眩しくて目を開けると、向かいにいたアレクはすでに目覚めていて目が合う。


「おはよ」

「……おはよう」

「確認だけど、僕と結婚するよね」

「ふ、起きて一番それ?……するよ。夢じゃないわ」

「よかった」


 本当に心から安心したみたいに息を吐いて、私を抱きしめる。


「ずっと起きてたの?」

「いや、少し前に起きてベラを見てた」

「やめてよ恥ずかしい」

「今更だよ。言ってなかったけどいつもそうしてる」


 確かにそれは聞いていない。寝ている無防備な顔を見られるのは少し恥ずかしいからやめてほしい。でも多分やめてくれないんだろうなと言うのもわかるから何も言わなかった。


 二人でベッドで少しのんびりして、その後支度をして朝食に向かう。

 今日は公爵夫妻も一緒らしい。


 公爵夫人はよく一緒に食事をするけれど、公爵様が一緒なのは珍しい。

 公爵様は忙しい人で朝早くにどこかへ行き、夜遅くに帰ってくる。見た目はアレクにとてもよく似ているけれど、アレクよりもずっと寡黙な方だ。

 でも優しくて一緒にいても沈黙が苦にならないような人だ。それを前にアレクに伝えた時は「そう感じるのは多分イザベラと母上だけだ」と言われてしまったけど。


「イザベラ、おはよう」

「おはようございます、フランおばさま。公爵様」


 挨拶すると公爵様は静かに頷いた。


「今日一緒に食事しようと思ったのは、二人の結婚に関して話しておこうと思ってね。まずはイザベラ、アレクと結婚を決めてくれてありがとう。私たちはあなたを歓迎するわ。これからも」

「ありがとうございます」


 話が通るのが早すぎて驚きつつ、顔には出さないようにお礼を伝える。


「婚約するには幾つかの壁を乗り越えなければいけないわ。とはいえ、私たちからすれば大したことのない壁だけど。……とりあえず、最初の一歩として申し訳ないけれど伯爵家の、あなたのお父上の罪を暴くところから始めるわ」


 それは予想していたので頷く。異論はない。このために何年も準備してきたから。


「もちろん、すでに話していた通りイザベラには罪が及ばず社交界でも支障がないようにあらゆる手を尽くすつもりよ。これに関しては第二王女殿下の協力も得られるから心配しなくていいわ。社交界において私と王女殿下が揃えば叶えられないことはないと思って」

「はい」

「その次は縁のある貴族の養子に入ってもらう。まだ確定はしていないけれど伯爵家以上で良さそうなところをすでに絞ってあるから。状況をみて最終的にどこにするか決めましょう」

「わかりました」

「そこまでいったら正式に手続きをして婚約を結びましょう。早く結婚したいと息子がうるさいから、婚約期間はそうね……半年でどうかしら」

「はい。大丈夫です」

「あなたの父親は並行して探すわ。多少時間はかかるかもしれないけれど最終的に見つけることはできる。それは断言するわ」

「わかりました」


 おばさまが共有してくれた手順は、どれも予想の範囲内だった。私でもそうするくらいの安全な手順だ。


「公爵家のお嫁さんになるのよ。今は亡き親友の一人娘が。全力で守るから。イザベラは安心してのんびり屋敷で暮らして、たまに私やアレクの指示通りにしてくれればいいわ。面倒はかけないし、面倒ごとも起こさないわ。安心して守られてちょうだい」

「全てお任せする形になってすみません」

「謝らないで。……イザベラに自覚はないでしょうけど、あなたがこの家にきたばかりの頃は精神的にも肉体的にもそれなりに限界が近い状態だったのよ」

「……そうなんですか?」

「そうなんですよ。ここしばらく休むことに専念させたからだいぶ顔色は良さそうだけど、それでもまだ休むべきだわ。父親の件でまた気を揉んで病んでしまわないか心配だけれど」


 そんなに体調悪かっただろうか。特に自覚がない分、よくわからない。

 確認するようにちらりとアレクに視線を送る。


「母上の言っていることは本当だよ。治癒の素質がなければとっくに倒れていたと思う。というか、それもあって父上の件を少し止めてたんだ。手続きを進めるとどうしてもイザベラが動かなきゃいけなくなる時もあるから。回復するまで待ってた」


 そうなんだ。全然気づかなかった。


「ありがとうございます」


 お礼を言うと、アレクは優しく微笑んで私の頭を撫でた。


「あなたの叔父に連絡して明日には始めるわ。アレク、頼んだわよ」

「はい」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ