駆け込み寺の月読様_03
「月読様とキヨさんの話が聞きたいです」
「急にどうした」
「恋愛初心者の私に指南してくださいよ」
私の無茶振りに、月読様は困ったように眉を下げた。手で口元を覆い、ふむと考え込んでしまう。
「……酔っ払っているのか?」
「やることやってるって須世理姫様言ってましたし」
「この酔っ払っいめ」
コツンと痛くないゲンコツが飛んでくる。呆れたように笑う月読様は「そうだな」と夜空を見上げた。オリオン座が綺麗に瞬く冬の空。思わず私も見上げる。
「そもそも、恋愛など人それぞれだろう。正解なんてないのだよ。だが一つだけ言うとするなら……」
月読様の瞳がまるで星を宿したように揺れる。それはとても哀しいようで寂しいようで、それでいて慈しむような暖かい眼差し。
「……神と人は時間の流れが違う。当然寿命が違うことはわかるだろう? それでも私は喜与と生きたいと願った。だが喜与はあまり長生きではなかった。変わらぬ日々でも、突然変わる日も来るのだ。自分が望まなくてもな。だから後悔のない選択をしなさい」
月読様の感情が流れ込んでくるみたいに、胸が苦しくなった。同時に愛おしさも込み上げる。月読様と喜与さんの思い出は二人だけの大切なものだったのかもしれない。それを私は聞きたいだなんて、図々しくお願いしてしまった。どうあがいても、月読様はもう喜与さんには会えないのに。
「聞きたいなんて我儘言って、ごめんなさい」
「よい。私は喜与を愛したことを後悔しておらぬ。それに、こうして思い出させてくれてありがたい」
ニコリと微笑む月読様は月夜に照らされてとても美しく偉大で、まるで隣にキヨさんがいるのかと錯覚してしまう。その昔、キヨさんともこうして夜空を眺めていたのだろうか。そんな大切な空間に私なんかを引き入れてくれて、月読様はなんて懐が深いのだろう。とても感慨深い気持ちになる。




