駆け込み寺の月読様_01
吐く息が白い。寒いけれど体がポカポカしていて、冷たい空気がちょっとだけ気持ちいい。
須世理姫様に付き合ってどれだけお酒を飲んだだろう。そのおかげで体中の血行が良くなっているし、さらには透さんからキスされちゃって……。
衝撃で酔いは覚めたけれど、火照りは収まりそうにない。心がざわざわしている。
「……月読様」
鳥居の上に呼びかけると、月読様はすぐに気づいて降りてきてくれた。
「どうした? 鍋パーティーは終わったのか?」
「みんな酔いつぶれて寝ちゃいました」
「そうか。星でも眺めるか?」
こくんと頷けば、月読様は自分が羽織っていたショールのようなものを私の肩にかけ、ひょいっと抱えて鳥居の上まで運んでくれる。もう何度目の夜空だろう。鳥居の上から見る光景は地面から空を見上げるのとは違って、混じり気のない綺麗な空だ。吸い込まれそうになる。
「どうした? 何かあったか?」
「……わかります?」
「聞かぬ方がよいか?」
ふふっ、そういうところ、月読様の優しいところだと思う。気づいてくれて、でも気遣ってくれて。
「月読様って優しいですよね」
「ふむ、優しいかどうかはよくわからぬが、昔女心がわからないと叱られたことがあってな、少しばかり反省したものだ」
「ええっ、女心? あはは! 誰ですか、そんなこと言うのは。咲耶姫様ですか?」
「喜与に言われたのだよ」
「あ、キヨさん……」
月読様は夜空を見上げる。空に手を伸ばしくるりと円を描くと、星がキラキラと流れ始めた。しばらくその幻想的な光景を眺める。こんな美しい光景を、キヨさんも月読様と眺めていたのだろうか。
「私、透さんのことが好きなんです」
ぼそりと呟いた。
月読様は視線だけをこちらに向けてくれる。
「その好きの意味が恋愛の好きかどうかわからなかったんですけど、でもきっと恋愛の好きなんだろうなって。それで、透さんも私のことが好きって言ってくれて。透さんの好きは恋愛の好きだよって。嬉しいんだけど、どうしたらいいのか分からなくなっちゃった……」




