神様の結婚式_13
「どうした、そんな薄着で。まだ夜明け前なのに、眠れなかったのか?」
ぼんやり見ていたら、ふわりと音もなく降りてきてくれる。そして月読様が巻いていたストールのようなものを私の肩に掛けてくれた。
「いえ、月読様の焚いてくださったお香のおかげでぐっすり眠れましたよ。咲耶姫様に呼ばれて起きてきただけです」
「そうか。よい語らいができたか?」
「はい! でも火の神様に、俺の咲耶姫を独占するなと怒られました」
「あやつらしい。咲耶姫のことが愛しくて堪らないのだろうな」
月読様はくくっと静かに笑う。
慈しむようなとてもあたたかい瞳。
「月読様は今日も夜景を?」
「ああ、見ていたよ。お主もまた見てみるか?」
「わわっ」
月読様は私をひょいっと抱えると、軽々と鳥居の上まで跳ぶ。高くなった視界は、手を伸ばすと空に届きそう。星のひとつでも掴めるのではないかと思うほど、近い。
「きれーい」
「ああ、綺麗だな」
しばらく二人で夜空を見上げた。地球から遠い星は、何年も前の輝きが見えているという。今、私たちの目に映る星は、何年前のものなのだろう。月読様たち神様が生まれた何千年前のものもあるのだろうか。
「昨夜は嬉しかった」
「え?」
「喜与に触れられた気がした」
「キヨさん……?」
「ああ。透の母親は、喜与によく似ている」
そう言って、月読様は遠くを見つめた。
以前、月読様はキヨさんとの思い出を少し話してくれた。そのときは寂しいなんて言わなかったけれど、本当は寂しいのだろう。そうじゃなきゃ、あんなふうに抱きしめて涙を流すなんてありえないじゃないか。
「……キヨさんのこと、……好きだったんですか?」
神様に対して不躾だったかもしれない。
なんてことを聞くんだと咎められるかもしれない。
それでも、知りたかった。名月神社を草花でいっぱいにしたキヨさんは、月読様にとってどんなに大切な人だったのかを、知りたいと思った。




