神様の結婚式_12
「ここは年中花が咲いておるな。前に訪れたときは別の花が咲いていた。月読は花好きであったか」
「お花は好きみたいですけど、育て方は知らないみたいで、最近は私が時々手入れしていますよ」
「なるほど。月読は愛情が深いからな。ああ見えて案外人好きだろう?」
「そうですね。神様に対して失礼極まりない私のことを寛容に受け入れてくれるくらい優しいです。ま、それは咲耶姫様も一緒ですけど」
「ずっと寂しそうな月読が、最近はとても楽しそうだ。アオイ、お前と出会ったからであろうな。私もお前と出会えて嬉しいよ」
咲耶姫様はドキリとするくらい妖艶に微笑む。
そんなことを言われて嬉しくないわけがない。勝手に緩む頬。咲耶姫様と一緒に笑いあう。なんて幸せな時間だろうか。心があったかくなって、夜明け前の寒さも吹き飛ぶくらいに熱い。……ん、熱い?
はっと後ろを振り返る。
そこには、わなわなと燃えさかる火の神様が!
「またお前は俺の咲耶姫を独占するか!」
「ひぃっ!」
「うるさい。女子会をしているだけだ。いつもいつも邪魔しおって、この酔っ払いが。もう少し寝ておれ」
咲耶姫様は火の神様をむんずと掴んでずるずると拝殿へ引き戻していく。相変わらず火の神様は咲耶姫様への独占欲が強いみたいだ。でも咲耶姫様もまんざらじゃなくて、火の神様が来ると嬉しそうに微笑む。
「ふふっ、可愛い神様たち」
そんな風に思うのは失礼だろうか。
でも神様といいながら、とても人間味溢れていて愛おしい。
「あっ!」
大きな鳥居の上に、月読様が座っているのが見える。
装束の裾が風に煽られてしなやかに揺れた。まるで秋桜が揺れるみたいに、繊細で儚い。
――ずっと寂しそうな月読が、最近は楽しそうだ
寂しいのはキヨさんのことだろうか。初めて月読様に会った日、教えてくれた。名月神社の草花は、キヨさんが植えたものだと。




