神様の結婚式_10
「ねえ透さん。今日、月読様って泣いてたよね?」
「そうだね」
「何でだろう? 私が月読様の手を掴んじゃったからかなぁ? あれはさすがに失礼だったよね。今になって差し出がましい真似しちゃったって反省してる」
「あんなことできるのは葵くらいだと思うけど……、でもあれは嬉しかったんじゃないかな?」
「確かにありがとうとは言われたけど、意味がわからなかった」
「うん……。なにか、思うところがあったのかもね。今までも、月読様は母が来るとよく姿を現していたし」
私はあの時の月読様を思い出す。とても優しい目をしてお母様を見つめていた。お母様は月読様のことが見えないけれど、あたたかい気配は感じているみたい。二人、どんな繋がりがあるんだろう。
「もしかして、……好き……なのかな……?」
「……それは、神のみぞ知る」
「ソクラテス! ……ぷっ、あははっ」
「ソクラテスは上手いこと言い当ててるよね。ははっ」
まさに神のみぞ知ること。余計な詮索は無用なのかな。神様なんて何千年も生きているんだもの。私とは比べものにならないくらい、いろいろな思い出があるんだろうな。
橋渡しだなんて言ったらおこがましいかもしれないけれど、私の行動がなにか月読様の心に響くものだったらいいなと思う。
「……もしかしたらだけど、月読様は僕の母に大切な人を重ね合わせているのかも。前に、似ているって聞いたことがあるから」
「……すぅー」
「葵? 寝ちゃった?」
お布団の気持ちよさと透さんの心地良い声に包まれながら、私はいつの間にか眠りに落ちていたみたいだ。
今日はいろいろなことがあった。
神様の結婚式に参加したこと、神楽を舞ったこと、たくさんの神様を見たこと、透さんの過去に少し触れたこと。そのどれもが尊くて愛おしい。これからもずっと、神様たちと触れ合えたら嬉しいな。
「おやすみ、葵」
透さんが優しく頭を撫でてくれたことは、知る由のないことだった。




