神様の結婚式_08
「月読様は宴はもういいんですか?」
「私はああいう騒がしいのが苦手でな。咲耶姫と火瓊瓊杵には挨拶をしておいたからいいだろう。しかしあやつらはいつまで飲むつもりだ? 酒が足りぬと少彦に作らせておったわ。しかも私が労働に駆り出されてな、ようやくお役御免と逃げてきたところよ」
はー、と月読様が珍しくため息をつく。
月読様は優しいから、いろいろと手を貸してあげちゃうんだろうな。
「それよりも、もう夜も更けておる。お前たちは早く寝るがいい。今日は疲れたであろう」
月読様は優しく私の頭を撫でてくれる。七五三の御祈祷のときみたいに優しい手つきだ。月読様の甘い白檀の香りがふわりと鼻をかすめる。
「透も、大役ご苦労であったな」
「月読様も、ありがとうございました」
「よく眠れるように香を焚いておいてやろう」
部屋の片隅に小さな香炉が置かれる。揺らぐ空気にのってほんのりと甘い香りが漂ってくる。心がすうっと落ち着いていく感じ。
「子守歌でも歌ってやろうか? なあ、透よ」
「……遠慮しておきます。おやすみなさい」
透さんはモフ太を強引に月読様に手渡すと、ピシャっと障子を閉めた。静寂が訪れる。ひんやりとした秋の空気が体を震えさせた。私はもそもそと布団にもぐり込む。モフ太がいなくて手持ち無沙汰だけれど、隣に透さんがいるから怖くないし寂しくない。
「月読様の子守歌、ちょっと聴いてみたかったな」
「そう? 僕が子供の頃によく歌ってくれたよ。嫌なことがあったときは、よくここに逃げ込んでいたからね」
「そうなんだ。透さんと月読様の思い出、聞きたいなー」
「……寝ないの?」
「寝るよぅ」
お布団をぐっと口元までかぶる。ふかふかのお布団と甘い香りで、すぐに意識が持っていかれそうになる。




