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神様の住まう街  作者: あさの紅茶


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神様の結婚式_06

「透さん疲れちゃった?」


「え?」


「なんか元気なさそうだから」


透さんはふと目を伏せてから、夜空にぽっかり浮かんだ月を見上げた。煌々と照らす月は、今夜はやけに明るい。


「いや、ちょっと感慨深くなっていただけ。葵、今日はありがとう」


「私だけじゃなくて、透さんもでしょ? 一緒に頑張ったから素敵な結婚式になったんだよ。さっき咲耶姫様からもお礼言われちゃった」


「そっか」


透さんは優しい笑みを浮かべてから、火の神様のおにぎりをぱくりと食べた。


柔らかな風が拝殿を抜けていく。

今夜はあまり寒くない。


「……僕が子供のころから神様が見える話は少ししたよね」


「え、うん」


「気味悪がられて避けられるようになってから、そのことは誰にも話さなかった。僕の家は神様に対して敬意を払って祈りを捧げることばかりで、でも両親は神様は見えない。じゃあ神様が見える僕の存在意義ってなんだろうとずっと思っていたんだ」


「存在意義……?」


そんなこと、考えたこともなかった。私はある時たまたま見えてしまって今に至るけれど、透さんは幼い頃からなのだ。ご両親も、もっと寄り添えたのにと仰っていた。私なんかでは計り知れないたくさんの苦労や葛藤があったのかも。


「でも、さ……」


透さんは私の手をきゅっと握る。

ドキンと心臓が揺れた。


「そんな能力いらないって思ってたんだけど、葵とこうして神様の話が出来て、神様ともたくさん触れ合えて、今凄く胸がいっぱいなんだ。それに、これは葵と出会うためだったのかもと思うと、存在意義とかどうでもよくて、無駄じゃなかったなと思う」


視線が交われば柔らかく目尻を落とし、ふっと微笑む。繊細で儚くて、でもとびきり優しい微笑み。


「私もね、何で神様が見えるんだろうって思ってたけど、こうして透さんと知り合えて、素敵な経験をたくさんさせてもらえて、今とても幸せ。透さん、私の前に現れてくれてありがとう」


握られている手を握り返す。透さんのあたたかい気持ちが流れ込んでくるみたい。


ちょっぴり照れくさくなって、えへへと笑う。

透さんもくすっと笑ってくれた。

それでも手は繋いだまま。


藍色の空には大きな月が浮かぶ。今夜は月がとても綺麗だ。ずっと眺めていられそう。


穏やかな空気が名月神社に流れ、甘い香りがほのかに香る。

風に煽られた花びらがふわっと舞い上がり、夜空を彩った。


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