神様の結婚式_05
ズカズカと大きな足音と共に、大きな声が拝殿に響いた。
「皆のもの、米が炊けたぞ!」
手には大皿。
大きなおにぎりが山のようにのっている。
「おお、さすが火瓊瓊杵じゃ」
「やつの米炊きは絶品じゃからの」
神様たちがわらわらとおにぎりを手に取り、美味い美味いと食べ始める。モフ太は神様の合間を縫いながら、ガツガツと一心不乱に食べている。(ちょっとは遠慮しなさいよ)
「……ほのににぎ?」
「アオイは火の神の名を知らなかったか?」
「火の神様は別のお名前があったのですか?」
「ふふっ、火の神とは私が呼んでいる愛称のようなものよ」
「ええっ!」
私の驚きに、咲耶姫様はまた綺麗に笑った。
火の神様は火瓊瓊杵様というらしい。通称、火の神様。熱い性格のため、咲夜姫様がそう呼び始めただけだとか。五穀豊穣の神様で火を操るのに長けており、「俺の米と火捌きで、格別美味い飯を食わせてやろう」とおにぎりを振る舞われているらしい。
「火の神が作るおむすびは絶品なのだ。アオイも食べてみろ」
「はい、ではいただきます」
お皿からひとつおにぎりを取る。触れただけでお米が立っているのがわかる。ぱくりと食せば、ほのかなでんぷんの優しい甘みが口いっぱいに広がった。
「美味しい!」
「そうであろう」
咲耶姫様は自分のことのように誇らしく頷く。
楽しそうな神様たち。宴は終わることを知らないかのように、賑やかな時間が続く。
ふと外を見れば、透さんが拝殿の石段に座って一人月を眺めていた。
「透さん、おにぎり食べました?」
「いや?」
「火の神様が炊いてくださったんですって。すっごく美味しいから、食べてみて」
はい、と手渡すと「ありがとう」と柔らかく微笑む。その笑顔がどこか憂いを帯びている気がして、私は心配になって隣に座った。




