神様との繋がり_10
透さんのお父様が、「透」と肩に手を置いた。
「私は神職だが、何も見えないし何も感じない。だけど今、ここでいろいろなことがあったことはわかったよ。お前たちの会話でね。お前は見えることに対してあまり良く思っていなかったみたいだけど、私は初めて透を羨ましいと思った。私も神様が見えたなら、どんな会話をするのだろうかとわくわくしたよ」
お父様は拝殿を見渡す。お父様の目には月読様もモフ太も見えていない。だけど、私たちの会話を通して、そこに何かがいるのだということを感じ取ってくれたのだろう。
「……それは、きっと葵がいるから。葵が神様との橋渡しをしてくれているから、そう思えるんだと思う。僕も、葵に出会ってから、ようやくこの“見える”ことに対して嬉しいとか楽しいとか思えるようになったから」
少し照れたように笑う透さんはとても眩しく見えて、胸が熱くなった。私も、透さんに出会って、今まで以上に嬉しいとか楽しいとか、感じられるようになった。見える人が近くにいる幸せを、ひしひしと感じている。
「あと、月読様も……。ずっと僕の味方でいてくれたから……」
透さんは恥ずかしそうに目を伏せる。
月読様はふっと目元を緩めると、「素直な透も悪くない」と透さんの頭を撫でた。
私にはその光景が、親子のように見えた。
もちろん、月読様が透さんのお父様なわけはない。それはわかっているけれど、透さんと月読様の繋がりはとても尊いもののように思えて胸が熱くなる。
透さんは小さい頃から神様が見えていて、身近にいた月読様と二人だけの思い出があるんだろう。長い間誰とも想いを共有できなかった透さん。月読様はそんな透さんに寄り添い、ずっと見守ってきたんだ。




