神様との繋がり_09
あたたかくて、でも少し憂いを帯びた空気が体に流れ込んでくる。まるで月読様の気持ちを共有しているみたい。
「アオイ……」
「は、はいっ!」
「……ありがとう」
そう呟いた月読様の目からは、一雫の涙がきらりと零れ落ちた。
「つ、月読様……?」
涙の意味がわからず私は慌てる。
どういうこと……と尋ねようとしたときだった。
「ギャー!!」
モフ太の悲鳴が聞こえたかと思うと、私の胸目がけてびょーんと飛び込んでくる。
「ぐえっ!」
「葵?!」
とっさに透さんがモフ太ごと受け止めてくれたけれど、モフ太は私にしがみつき「丸焼きにされる」とブツブツ呟きながら長い耳を抱えて震えている。
「え? 丸焼き? ……はっ! あつっ!」
見れば拝殿の開け放たれた間口で、燃え盛る厳つい男性が仁王立ちしている。
「火の神様!」
「このクソうさぎが! 俺の咲耶姫の着替えを覗いただと! 丸焼きにしてくれるわ!」
怒り心頭、燃え盛る炎に空気が熱く揺らぐ。突然の熱量に、参拝者さえも「なんかここ暑くない?」とざわつき始めた。
「ちょ、ちょ、ちょ、火の神様落ちついて!」
「ようこそおいでくださいました」
透さんは床に膝をついて深々とご挨拶をする。
「透さんは落ち着きすぎ!」
もう何からツッコんでいいのやら、よくわからない。カオスだ。でもきっとモフ太のせいだけど。
「暑苦しいわ! 早く支度をせぬか!」
いつの間に来たのか、咲耶姫様が一喝すると、火の神様はようやく炎を鎮めた。そして咲耶姫様に連れられてすごすごと社務所へ入って行く。
とたんにしーんと静まり返る拝殿。
「騒がしい奴らよ」
「騒がしかったわね」
月読様と透さんのお母様が呟いたのは同時だった。
私はまた、透さんと顔を見合わせて笑う。




