神様との繋がり_06
「堅苦しいことはよい。そなたもアオイのように図々しくなればよいものを」
「図々しいって、ちょっと咲耶姫様!」
「ふふっ、冗談であろう」
咲耶姫様は袖で口元を隠しながら楽しそうに笑った。
今夜、ここで咲耶姫様の結婚式だ。ということはつまり、私の神楽もお披露目ってことで……。ああ、やばい、緊張する。
「では私は支度をしてくるとしよう。千々姫が手伝ってくれるそうなのでな」
「あ、火の神様は?」
「あやつが来ると暑苦しくなるからな、後で来いと申しておいたわ」
終始楽しそうな咲耶姫様は黒髪をなびかせながら、音もなく社務所へ消えていった。
「葵、僕たちも今のうちに休憩しておこう。何か食べる? 氏子さんたちがいろいろ差し入れしてくれてるし、下に屋台も出てるよ」
「わあ、そうなんだ。緊張が解けてお腹ぺこぺこだよ」
「ボクもお腹がぺこぺこだ。アオイが花を食べたらダメだって言うから、ずっと我慢していた」
「モフ太……」
「どうだ、偉いであろう」
ふふんと偉そうに胸を張るモフ太。別に偉くなんてないのだけど。
「ところであなた、咲耶姫様にご挨拶しなくてよかった? 出雲の神様の代理で来たんでしょう?」
「はっ、そうだった。急ぎ挨拶をしてくるとしよう」
モフ太はピョンピョンと軽やかに社務所へ入っていく。しかし――
ガラッと社務所の窓が開く。
「着替えの最中に入ってくるとは言語道断! この出雲のバカうさぎが!」
咲耶姫様の怒り声とともに、窓からぴゅーんとモフ太が放り投げられた。「ぐえっ」と鈍い声が聞こえたけれど、見て見ぬふりをした。(モフ太、ドンマイ)
「自業自得でしょ」
「ね。火の神様いなくてよかったよ。もしいたらあれだけじゃ済まないもん」
透さんと笑い合う。なんだかすごく嬉しい。神様が見える人と想いを共有できることってすごく胸が震える。




