星降る夜に神様と、まさかの女子会をしました_06
息が切れるほど一気に山道を駆けのぼると、見えていた明かりは街灯ではなく神社の灯籠の明かりだった。参道に沿って本殿まで等間隔に灯っている。
こんな山奥に神社があって、灯籠に明かりまで灯っていることは奇妙に思えた。だってこんな時間、登山者だっていないのに、明かりが灯っているなんて変だ。
けれどふと思う。
誰かがいるから明かりが灯っているのではないだろうか。そう、例えば神社を管理している人とか。山の管理者とか。
本殿も淡い光が煌々と灯っていた。
「す、すみませーん」
奥の方へ向かって呼びかけてみる。
雨の音で聞こえないのだろうか、呼びかけには誰も反応しない。
「すみま……ひゃあああっ!」
もう一度呼びかけようとするのと同時に激しい光と轟くような音が頭上から聞こえ、私は転がり込むように本殿の中へ入った。
雷がちょうど上を通っているようだ。
「ああっ、土足で上がっちゃった。やばい、やばい!」
慌てて靴を脱いで、雷と雷の合間を縫って靴を外に出す。ついでに賽銭箱に小銭をありったけ入れて、鈴紐をブンブンと振った。
ガランガランと小気味良い音が響く。
「すみませんが雨宿りさせてください!」
柏手を打ち、矢継ぎ早にお願いをする。
そして慌てて拝殿の中へ身を隠した。
直後に雷がまた大きな音を立てる。
「ひ~! マジ怖い。神社があってよかったよぅ」
ドキドキした胸を抑えながら、私はその場にへたれこんだ。
外は雨と雷で大荒れだ。
時折強く眩しい光が目に飛び込んでくる。
髪も服もずいぶん濡れてしまった。
けれど建物の中にいるという安心感が、私の緊張を幾ばくか溶かしていく。
私は辺りを見渡した。
外の灯籠の明かりが柔らかく室内を照らしている。薄暗いものの、先程までの暗闇を思えば何倍もましだ。
入口は開け放たれているものの、ここなら寒さもしのげるだろう。
しばらくここで様子を見よう。
もう動くのは得策ではない。
私はポケットから携帯を取り出した。
電源ボタンを押すと一際明るい光が放たれる。
残念ながらここでも圏外と表示されていた。
時間はとっくに日付を越えている。
「……はぁ」
「大丈夫か?」
ひときわ大きなため息をつくのと、背後から声が聞こえたのは同時だった。
ふわりと肌触りのよい布を肩に掛けられて、私は驚きのあまり声が出せず、ただ反射的に振り返った。
綺麗な漆黒の長い髪。
決して化粧が濃いわけでもないのに目鼻立ちがくっきりとした美人顔。睫が長く、薄暗闇でもわかる宝石のようなキラキラとした瞳が印象的な美人さんが、心配そうな顔でこちらを見ている。
服装は何と言ったらいいのだろう。
着物ののようなワンピースのような、はたまた装束のような、昔歴史の本で見たものに似ている気がする。
そして、顔全体に赤っぽい大きな痣のようなものがあった。
あまりの衝撃に私は言葉も発せず、ただ彼女を凝視した。動けなかったと言う方が正しいかもしれない。
綺麗で凛とした空気感が彼女から発せられていることを肌でビンビンと感じ、ぞわりと鳥肌が立った。