神様と酒盛り_06
「アオイよ、透も呼んだらどうだ?」
「でも透さん、仕事中ですよね?」
「ふむ。だがアオイが呼べば来るやもしれぬ」
くすっと月読様はいたずらっぽく笑った。
そりゃ来てくれたら嬉しいけど、さすがに仕事中の彼を呼び出すのは忍びない。透さんは名月神社の神主だけれど、本業は別の大きな神社に勤めているのだ。ひとまず月読様のところに来ていますとメッセージだけ入れておくことにして、私は酒造りのお手伝いを始めた。
少彦様が出してくれた樽に、名月神社の井戸水を注ぎ込む。これはかなりの重労働。少彦様とモフ太は小さいから戦力外。私と月読様が井戸と樽を何往復もしながら、樽の中を水でいっぱいにしていく。
「よいしょっ」
思わず掛け声が出る。幸い井戸は社務所と屋根続きで雨に打たれることはないけれど、井戸水を入れたバケツを運ぶのは骨が折れる。すると、すっとバケツが軽くなって、ふと顔を上げた。
「やはり透も参加させるべきだったな」
月読様が眉間にシワを寄せながら、私のバケツを軽々と持ってくれる。まだ止まない外の雨を見て「この雨ではなかなか来れぬか」と困ったように笑った。
「神様の力でこう一気に水を注ぐとか、できないんですか?」
「できる神もいるやもしれぬが、私はできぬ。それに、こうして体を動かすからこそ酒が美味いのであろう」
「ずるしちゃダメってことですね」
「わかっているではないか」
月読様は目を細め、ぽんぽんと優しく頭を撫でてくれた。月読様のおかげで俄然やる気が出た私は、秋にもかかわらず汗だくになりながら、水を運び続けたのだった。




