神様の使いとお月見_10
「ずいぶんと遅くなってしまって、ごめん」
「ううん、お月見、楽しかった」
帰り支度をして神社の石段の下まで透さんに送ってもらう。透さんもここに住んでいるわけではないため、自宅に戻るようだ。と言ってもすぐ近くのようだけど。
すると今日は月読様も、風がふわっと吹くように静かに舞い降り、見送ってくれた。
「お前たち、これを持って行くがいい」
月読様が差し出す手には、風に揺れて柔らかに揺れるススキが二本。それを私たちは一本ずつ受け取る。
「葵、知ってる? ススキの茎には神様が宿り魔除けになると昔からの言い伝えがあるんだよ」
「へえ、そうなんだ。透さんって物知りだね」
どこに飾ろうかと考えていると、月読様が急に装束の袖で口元を隠し、上品に笑った。その目元はとても優しく、慈しむような温かな瞳。
「お前たち、ススキのようだな」
「はい?」
「ススキが風に揺られてなびいている様に似ておる」
透さんはよくわからない、といった顔で首を傾げる。私も、同じく首を傾げたのだけど、ふとあることに気づいてしまった。月読様の真意はわからないけれど……。
ススキの花言葉。
なびく心。心が通じる。
ドキン、と大きく心臓が高鳴った。
ううん、きっと月読様はそんな花言葉なんて知らない。そんな意味で言ったんじゃない。花言葉なんてたくさんあるもの。そう思うのだけど――
今日の出来事を思い出して、胸がときめく。
少しだけ、透さんと近くなった距離。
「月読様はいつもよくわからないことを言う」
不満そうに呟く透さん。
私は美しい中秋の名月を目に焼き付けながら、そうだね、と笑った。
心がとても満たされた、十五夜だった。




