神様の使いとお月見_06
透さんは箒で煤を払い、私は雑巾で拭いていく。
「ねえ、透さん。私にもタメ口でいいんですよ。透さんの方が年上なんですから」
「そうですか? では葵さんも、僕にタメ口で構いません」
「え、それはちょっと……」
「その方が僕も話しやすい……かな。あまりそういうの、慣れていないというか……」
「友達いないんですか?」
しん、と静まり返る部屋。モフ太のむしゃむしゃ食べる音だけが聞こえる。
……って、私ったら!
「ごっ、ごめんなさい! そういう意味ではなくて、えっとえっと、なんていうか……」
失言過ぎる。数秒前の自分に待ったをかけたい。
透さんが黙ってしまったので、怒ったのかなと思ったけれど、ふふっと困ったように笑った。
「葵は僕の友達でしょう?」
「と、友達ですね」
「それなのに友達がいないとか、言う?」
「ひぃっ、ごめんなさい!」
「罰として僕に対してタメ口禁止ね」
「わ、わかりました」
「ん?」
「わ……わかった」
私の言葉に、透さんは満足そうに頷いた。その笑顔はずいぶんと甘くて、イケメンの破壊力たるや私の胸をドキドキさせるには十分すぎて困る。しかも、「葵さん」じゃなくて「葵」って。
男性への免疫力低いんだから、不意打ちはやめてほしいものだ。変に意識してしまうではないか。
そんな気持ちを打ち消すために、私はモフ太に話しかける。
「ところでモフ太はどうしてそんなに煤まみれなの?」
「お腹が空いて食べ物を探しながらここまで来たのだ。意外と遠くてな」
「どこから来たの?」
「出雲だ」
「出雲って島根県?」
「だからお腹がペコペコなのだよ」
モフ太は月見団子をまたひとつ頬張り、お茶をずずっと飲んだ。




