神様の使いとお月見_04
「……神使か?」
透さんは私を背に匿いながら、ボソリと呟く。そしてこちらを振り返る。
「葵さん、見えてるんですよね?」
「はい、見えてます」
「じゃあやっぱり、神使ですね」
「しんし?」
「神の使いのことです。どこかの神社の使いなのかな?」
透さんは首を傾げる。
灰色の毛むくじゃらは赤い目をくりっとさせながら、飲んでいた湯呑みを差し出し「おかわり」と言った。
「しゃべった!」
「すみませんが、何か御用ですか?」
透さんの背中越しに恐る恐る覗き見る私とは対照的に、透さんは神使である毛むくじゃらに話しかける。
「お腹すいた。あれ、食べていいか?」
毛むくじゃらはぴょんっと軽やかに飛んで、社務所の床の間に飾られていたお月見団子にダイブする。直後に聞こえる、ガッシャーンという大きな音。
「……ええー」
「自由な神使だ」
派手な音を立てたきり動かなくなった神使に、私と透さんは顔を見合わせる。その頃にはもう毛むくじゃらに対して怖さはなくなっていて、この奇妙な出来事に若干わくわくしていた。一体何者なんだろう。
「こらっ!」
透さんが毛むくじゃらをヒョイッと掴む。
くるりんと猫背に抱えられたそれは、赤い目をくりくりとさせた。
「うさぎ……?」
長い耳に大きな後ろ足。透さんに抱えられながら、足をバタバタとさせる。そして勢いよくぴょーんと私の胸にダイブした。
「うわあ!」
「葵さん!」
「抱っこされるなら女子!」
毛むくじゃらの言葉に、私も透さんもしばし黙る。
胸に抱いた毛むくじゃらは、前足で私の胸をぽんぽんとタッチする。
そして――
「お主、小さいな」
毛むくじゃらの言葉は私の胸にズゴーンと突き刺さったばかりか、室内を冷え冷えに凍りつかせた。そして私と目が合った透さんは、ふいっと目を逸らした。
うおいっ!




