神様の使いとお月見_03
そんな透さんを横目で見ながらお茶を啜っていると、ふいに目が合ってドキンと心臓が揺れる。長い睫毛に縁取られた瞳がゆっくりと瞬きをした。
「たまには食事でも行きませんか?」
「ほへ?」
透さんの綺麗な顔に見惚れていた私は、変な声が出てしまう。けれどすぐに言われた意味を理解してはっとなった。
「あ、行く。行きたいです!」
「断られたらどうしようかと思いました」
「まさか、そんな。断るだなんて。お腹ペコペコです!」
などと話しながら、なぜか私の鼓動は心なしか速くなる。
な、なんで? ちょっと落ち着いて。透さんと食事に行くだけじゃん。そんなに緊張することある? ていうか、お腹ペコペコとか恥ずかしいこと言っちゃったかも?
「着替えてきますね。少し待っててください」
柔らかな笑みを落として、透さんは奥へ消えていった。私も、神鈴を片付け出かける準備をする。
男の人と食事をするのは随分と久しぶりだ。
というのも、依然私はお一人様満喫中。山の神様が悪い縁を切ってくれたおかげで、元彼である玲みたいな薄情な男性と知り合うことはなくなったけれど、だからといって良いご縁に恵まれることもなく数年が経っている。
「あ、湯呑みも片付けなくちゃ」
と、テーブルの上に手を伸ばしたときだった。
丸くて赤い目と、目が合う。
は…………?
「き、きゃぁぁぁぁーーーー!」
「葵さん?!」
私の悲鳴に気づいた透さんが、奥から駆けつけてくれる。
「どうしました?」
「あ、あ、あ、あれ! なんか、いる!」
灰色で毛むくじゃらのそれは、赤い目をギョロリとさせながら湯呑みを抱えて残っているお茶を啜った。




