神様の使いとお月見_02
「衣装、着てみます?」
「えっ、いいんですか?」
実は巫女さんの朱色の袴は憧れでもある。こんな機会滅多にないしと思って羽織らせてもらったら、背筋がしゃんとして神聖な気持ちになった。
「こちらもどうぞ。千早という装束です」
薄手の白い生地に緑色で模様が描かれている羽織に袖を通し、神鈴を持たせてもらう。まるで自分が神様にでもなったかのように錯覚した。
「とてもよく似合いますね」
「そうですか?」
「咲耶姫様も喜ばれると思いますよ」
「やってみようかな……?」
「ぜひ。僕も嬉しいです」
透さんに煽てられ、あれよあれよと神楽を踊ることが決まった。ちなみに、神様に喜んで納めていただくという意味で、「奉納する」と言うらしい。
透さんは神職とだけあって、神社や神様のいろいろなことを教えてくれる。それがとても新鮮で興味深く、いつも長居をしてしまう。透さんの低くて落ち着いた声は、私の鼓膜に癒しをもたらすのだ。
そんなわけで始めた神楽の練習なのだけど、これがどうにも難しくて、私は壁にもたれながら深いため息を吐いたのだった。
しかも仕事終わりに月読様の神社に寄って、透さんの笙に合わせて神楽の練習。結構、しんどい。
けれど――。
「お茶、どうぞ」
「ありがとうございます。いただきます」
透さんの綺麗な笑顔に絆されて、疲れていた気持ちが飛んでいくみたい。店長が透さんをイケメンだと言った意味を最近ようやく実感している。
透さんは、礼儀正しくて優しくて気が利く。顔だけじゃなくて性格が超絶イケメンだ。ときどき月読様に揶揄われてムスッとした表情をするのは、いわゆるギャップ萌ってやつだ。




