表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の住まう街  作者: あさの紅茶


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/104

月夜の晩、神様に出会う_01

高台から見下ろす街並みはオレンジや黄、白といった明るいネオンがキラキラと瞬き、まるで宝石箱を覗き見ているような様相を醸し出している。

こんな素敵な立地にある結婚式場では、明日のパーティーのために着々と準備が進められていた。


私は花屋に勤めていて、花を会場に届けセットしたところ。作業が終わって結婚式場から出る頃にはもうすっかり日も暮れて、まんまるい月がぽっかりと浮かんでいた。


「やばっ、もうこんな時間」


時計を確認して慌てて帰る支度をする。社用車で来ているため一度店に戻らなくてはいけないし、この辺りの街灯は少なく街に出るまで夜道が怖い。


エンジンをかけるとヘッドライトが点灯した。

ラジオからは、夜にピッタリなしっとりとしたパーソナリティーの声が心地よく耳に流れ込んでくる。


今夜は月明かりが綺麗でいつもより星はあまり見えない。明るい藍色の夜空が静かに帳を下ろしていた。


結婚式場を出ると緩やかな坂道が丘をぐるりとまわるようにしながら街まで続いている。僅かに下ったところで大きな鳥居が見えた。木々に囲まれている神社の中、その鳥居だけはすっと抜き出ていて月明かりの夜空にくっきりとシルエットを映し出している。


「えっ?!」


思わず声が出た。

その鳥居の上に人影が見えたからだ。鳥居の上に座って夜空を見上げている、そんな風に見えた。


「……なんて罰当たりな。ていうか、どうやってのぼったの?!」


意味がわからなすぎて運転中だというのにそちらを凝視してしまう。そしてその人影はふいにそこから飛び降り、ついに驚きすぎた私にブレーキを踏ませた。


「……うそ、落ちた?」


人通りも車通りもない暗く細い道。このまま立ち去ることもできるけれど、もしもあれが人だったら大けがをしている可能性もあり、見て見ぬふりをすることができない。


車を安全な場所に止めた後、私はその神社に向かって歩いていた。


……人だったよね?

……落ちたよね?

……幽霊じゃないよね?


心臓がドクンと嫌な音を立てる。

生まれてこの方一度も幽霊を見たことがない私の霊感はゼロといえる。だから幽霊の類いではないと思うのだけど。


でもその代わりと言っては何だけど、幽霊とは違う人ならざるモノを見た経験があるのもまた事実で――。


まさかね、と思いつつも私はそれを確認するために神社の入口に立った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ