表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の住まう街  作者: あさの紅茶


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/104

神様とクリスマス会_05

「アオイ、と言いましたか?」


「はい」


「この花はご自分で咲耶姫に届けなさい」


千々姫様はポインセチアを私の胸へ押し返す。


「あ、でも、私、咲耶姫様にお会いできないんです。会ったのは一回だけで、その後何度も行こうとしたけど咲耶姫様の神社が見つからなくて……」


展望台のある山はわかっているので何度か足を運んでみた。けれどあの日迷い込んだ登山道も神社も、灯篭の一つさえ、見つけることができなかった。どんなに咲耶姫様に会いたいと願ってもまったく道は開かれない。ただあの出来事が夢ではないと思えるのは、咲耶姫様からもらったびーどろのぐい飲みグラスが手元にあるからという理由だけだった。


千々姫様はおもむろに首にかけていたストールのようなものをしゅるりと抜く。


「私と一緒に行けばいいのです」


「え?」


「さあ、ここにお乗りなさい」


ストールだと思っていた布は、目の前でまるで魔法の絨毯のように大きく広がった。千々姫様は音もなくその上に乗る。


「さあ、アオイも」


手を差し出され、恐る恐る千々姫様に触れた。ぐっと手を引かれ布の上に乗ると、一気に上昇していく。


「え、え、え、ちょっと待って。千々姫様!」


「怖いですか? 私に掴まっていればいれば大丈夫ですよ」


「絶対絶対手を離さないでくださいねっ!」


安定して飛んでいるのだと思う。だけど足元の布は風に揺られてなびき、視覚から恐怖を感じ取ってしまう。私は千々姫様の手を力いっぱい握りしめた。


「アオイ、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。ほら、下を見てごらんなさい」


「怖いですっ」


「大丈夫ですから。ほら」


千々姫様が体を支えてくれるので、私は恐る恐る下を覗き込んだ。


「うわぁ!」


赤や青やオレンジ、ピンク。色とりどりの光がまるで宝箱を開けたみたいにキラキラと輝いている。街の至るところでこんなにロマンチックに光を放っているなんて知らなかった。


感嘆のため息を漏らす私に、千々姫様は柔らかく微笑んだ。


「これは私からアオイへのクリスマスプレゼントです」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ