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星降る夜に神様と、まさかの女子会をしました_18

悩む私に火の神様は顎で“座れ”と指示をする。私はおずおずと火の神様の横に腰を下ろした。


「昔ひどい山火事があったのだ。そのときに俺は助けに来るのが遅れた。俺は火の神だ。火を操ることができる。咲耶姫は山の神だ。木々やそこに住まう動物たちを救おうと尽力していた。だから俺がもっと早く気付いてここに着いていれば、咲耶姫も火傷を負わずに済んだろうに。まさかそのことをずっと怒っているのか?」


火の神様は顎に手を当てて考え込む。

私はガックリと項垂れた。

何かこう、モヤモヤしてウズウズする。


「だあああっ! ええ、ほんとに、何千年も何やってるんですか。こじれすぎです。完全にすれ違いです! 早くご結婚なさってください」


私の叫びに、火の神様の眉間にシワが寄る。


「結婚? だが咲耶姫が嫌がって……」


「ああ、じれったい! 見舞いだなんてごまかさずに、好きだから会いに来たと言ったらどうなんですか。咲耶姫様、気付いてませんよ?」


「何がだ?」


私は火の神様の手に携えられている一輪のキキョウを指差した。火の神様も視線をキキョウに向ける。


「キキョウの花言葉。永遠の愛、深い愛情、ですよね?」


「ぐっ! なぜそなたが知っておるのだ」


「この際だから言いますけど、お互い想いやってるわりには言葉が足りないからすれ違ってしまうんですよ。ちゃんと言わなきゃ伝わるものも伝わりませんよ」


私の言葉に、火の神様の纏うオーラが一段と激しくなった。そして私を睨みつけると怒りの満ちた声で怒鳴った。


「なんだと!」


その勢いに汗が流れ落ちる。

火の神様が怒って興奮しているのだ。

今にも燃え盛らんとする姿に、私はすぐさま謝罪した。


「すみません、でしゃばりました!」


咲耶姫様が気さくなのでついついそのノリで火の神様ともお話をしてしまったが、この方が一体どんな神様なのか知らない。もっと慎重に言葉を選ぶべきだった。しかも咲耶姫様が気持ちを伝える前に説教してしまうなんて。


あああ、何てことだ。

大失態だ。

私は思わず頭を抱えた。


これはもう殺されるかもしれない。

きっと現実世界では望月葵は山で遭難して行方不明とかになるんだ。

なんて焦っていると、


「何事だ?」


突然背後から声がして、私は振り向いた。


「あ、咲耶姫様」


しずしずと近寄るにつれて咲耶姫様の顔が険しくなる。そしてキッと火の神様を睨みつけた。


「火の神、何を興奮しているのだ。まさかアオイに欲情しておるのか!」


「なんでそうなるんですか!」

「ありえぬ!」


火の神様と私の叫びがハモる。


「俺はお前以外欲情せぬわ!」


「ぶはっ!」


思わず吹く私。

うん、言いたいことはわかるけれど、欲情って、神様方落ち着いてほしい。しかもどう考えてもこれは痴話喧嘩だし、そんなものに私を巻き込まないでください。


静かな睨み合いが続く中、火の神様が口を開く。


「花を付けてくれたのか?」


「あ、これはアオイが勝手に」


咲耶姫様は耳元に挿したキキョウを手で確かめながら、困った顔でこちらを見た。


いやいや、こちらが困るんですけど。

なぜ強気に文句は言えて、こういうことは弱気なのだろう。むず痒いというか甘酸っぱいというか。


私はひとつ咳払いをし、


「咲耶姫様、キキョウの花言葉をご存じですか?」


「花言葉?」


「永遠の愛、深い愛情ですよ。それは火の神様のお気持ちです」


「なぜそのようなことアオイが知っているのだ」


「フラワーデザイン専攻卒で花屋勤務の私にとってはそんなこと朝飯前です!」


私はドヤ顔だ。

むしろ今まで日の目を見なかったこの知識が、こんな形で役に立とうとは誰が想像しただろう。普段花屋で仕事をしていても、花言葉で花を買っていく人はほとんどいない。それなのに火の神様に花言葉の知識があったとは、驚きだ。見た目によらずロマンチストなのかしら?

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