星降る夜に神様と、まさかの女子会をしました_13
「あいつは、いつもこうして花を持って見舞いだとやってくる」
咲耶姫様は私からキキョウを受け取ると、ため息混じりにポツリと呟いた。そして無造作にこたつの上に置く。
ふんとそっぽを向く咲耶姫様だが、そこに悪意はまったく感じられない。むしろ好いているような。嬉しいのに素直に嬉しいと表現できない、そんな感じが漂っている。
「……もしかして彼氏さんですか?」
私の問いかけに、咲耶姫様はビクッと肩を震わせ、ほんのり顔が赤くなる。そして困ったように視線が泳いだ。
とんでもない乙女感を出す咲耶姫様が可愛らしく、なぜだかこちらが恥ずかしくなってしまう。
この反応、私の第六感間違っていないかもしれない。
「……じゃあ、好きな人です?」
咲耶姫様の顔がさらに赤くなった。
神様でもそんな反応するんですね。
咲耶姫様の反応がいちいち可愛くて、私は段々とウキウキしてしまう。
「もしかして迫られてる、とか?」
畳み掛けるように問うとギロリと思い切り睨まれ、その凄みにすぐさま私は畳に頭を押し付け謝った。
「すみません、調子に乗りました!」
いや、本当に。
神様相手に調子に乗りすぎだ、私。
これはもう酔ってるってことにしてください。
ここはひとつ無礼講で。
何卒、なにとぞ!
心の中で謝罪するも、咲耶姫様からの応答はなく、私はそろりと顔を上げる。
「ああっもうっ」
そこには、顔を真っ赤にして両手で頬を包んでいる咲耶姫様がいた。その瞳は若干潤んでいるように感じる。
咲耶姫様、分かりやすいにも程があるし、その反応は可愛すぎます。
と、私は心の中でじたばたする。
調子にのってすみませんと謝ったばかりなのに、私の好奇心はまた調子よくムクムクとわいてきた。
「咲耶姫様の恋愛話も聞きたいなー……なんて。ほら、女子会だし。ささ、飲んで飲んで」
私は咲耶姫様のぐいのみグラスに日本酒を注いだ。トクトクと良い音がする。
咲耶姫様はおもむろに手に取ると、それをしばらく見つめたあと、一気に煽った。
「お前も飲め」
目の据わった咲耶姫様に凄まれ、私はおずおずとぐい飲みを差し出した。
咲耶姫様、飲み過ぎのような気がするけど、大丈夫だろうか。
「は、はい、いただきます!」
言うや否や、トクトクと注がれる日本酒。
注ぐ音が心地よい。
そんなに高いお酒には見えないけれど、このぐい飲みグラスに入れると見た目より何倍も美味しくなる気がするのはなぜだろうか。
こたつの対面に座り直した私たちは、ガンガンお酒を飲みながらスルメを食べ始めた。先程までのお菓子は女子会のほんのプロローグに過ぎない。本番はこれからと言わんばかりの咲耶姫様と私だ。
咲耶姫様はぐい飲みをトンと置くと、ふーっと深いため息をつく。そしてポツリと言った。
「火の神とは結婚を約束した恋人だったのだ」
「っぐ! こ、恋人ですか!」
思わず口に含んだお酒を吹き出しそうになってしまった。
結婚を約束した恋人って、つまり婚約者ってことで。そんな風にはまったく見えなかったので衝撃が大きい。しかも過去形。これは一体どういうことだろう。