表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/104

星降る夜に神様と、まさかの女子会をしました_12

「あの、生まれつきなんですか?」


「え?」


「痣です。あ、すみません、言いたくないですよね、気にされてるのに」


「いや、これは……」


咲耶姫様が何かを言おうとした時、急にガタガタと襖が震え出し、突然のことにビクッと肩が震えた。二人して揺れる襖の方を見やる。


「地震?」


「いや、違うな」


ビクビクする私とは反対に、咲耶姫様の声は冷静だ。恐怖に思わず咲耶姫様の袖を掴んだ。


何だろう、今度こそ幽霊とか?

やっぱりここは別の世界とか?


私が考えるより早く、突然パーンと勢いよく襖が開き、大きな声が響く。


「元気にしておるか! 見舞いだ!」


そこには厳つい男が立っていた。咲耶姫様と似たような装束を纏って右手に何かを持っている。それに何だかとんでもなく熱いオーラを漂わせながら仁王立ちだ。

もしかしてこの方も神様なのだろうか。


「誰だ? 俺の咲耶姫と何をしている?」


「ひっっ!」


ギロリと睨むその目力の強さに私は小さく悲鳴を上げ、尚更身を小さくした。

怖い。怖すぎる。

咲耶姫様は私を後ろ手に庇うように立ち上がり、厳つい男の前に立ちはだかる。

オーラだけなら咲耶姫様も負けていない。


「帰ってくれ。今日は客人が来ているんだ」


「なんだと! 俺より客を取るのか!」


「そうだ! 女子会をしているのだ」


「じょしかい? なんだそれは?」


「大事なことなのだ、邪魔するな」


ピシャッ。

食いつかんばかりの男に咲耶姫様は冷たく言い放つと、彼を押し出しそのまま襖を閉めた。


急に静かになる部屋。

空気がゆっくりと元に戻っていく。

汗がたらりと落ちた。


襖をきっちりと閉めた咲耶姫様はこちらを向き直ると、眉を下げた。少し困ったような顔で私を見つめる。静かな落ち着きを取り戻した室内に、私はほうっと胸を撫で下ろした。


「すまなかったな」


「いえ、何かすごく熱かったです」


額の汗を拭う私に対して、咲耶姫様は涼しい顔をしている。私だけが汗をかいていて、もしかしたら自分で思うよりもはるかに緊張したのかもしれない。すごく怖かったし。

と思ったのも束の間。


「あいつは火の神だから、興奮すると燃えるのだ」


「えっ! 神様?! 燃える?!」


「おかげでお前の服が乾いたな」


咲耶姫様は可笑しそうに笑う。

部屋の隅に掛けてある私の雨で濡れた服を見れば、すっかりと乾いたようだった。

ありがたいけど私は全然笑えない。

そりゃ汗も出るわけだ。

燃やされなくてよかった。

火の神様恐るべし……。


「えっと、火の神様? あの方は何をしにいらしたのでしょう? 見舞いがどうとか……?」


私が疑問を投げ掛けると、咲耶姫様の顔が曇る。


「どうもこうも、私の顔の痣を嘲笑いに来ているだけだ」


ふんとそっぽを向きながら、咲耶姫様は冷たく言い放つ。


「ええ? でもお見舞いって言ってましたよね? それにお花、置いていかれましたよ」


私は襖の前に無造作に置かれている花を手に取った。そこに置いたのか落としたのかよくわからないけれど、確実に火の神様が持ってきたものだ。

それは花束ではなくただの切り花で、もしかしてどこかで摘んできたのだろうかと思わせる。切り口が雑だが、紫色の花が見事に咲いていた。

これはキキョウ……?


「あ、それに、火の神様って、もしかしてこのぐいのみ作った方ですか?」


私は先ほどまでの咲耶姫様との会話を思い出してみる。確か、「火の神に作ってもらったお気に入りなのだ」と言っていた。


んんん?

お気に入り?

もしかしてもしかする?

私の(あまり当てにならない)第六感がピーンと反応する。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ