駆け込み寺の月読様_09
「……もしかして嫉妬?」
「そうだよ」
間髪入れず肯定され、私の頬は一気に染まった。寒いって思ったのは何だったんだろう。体の奥から発熱したように熱くなってくる。
だって、月読様に相談したのは透さんとの恋愛のことだし、そんなこと透さんには言えるわけないし。だけどそうやって思ってくれることが嬉しくて胸がいっぱいになって……。
「今度からは一番に透さんに相談する」
「うん、約束」
「約束ね」
繋いでいた手を小指と小指に変えて、指切りげんまん。子どもっぽいことにちょっと笑えて、でもそれがとても楽しくて。
気持ちを伝えあっても、こうやって変わらず笑い合えることがとても愛しい。
ううん、やっぱり変わったのかも。もっと深く透さんのことを知りたいって思うようになった。もっと深く私のことも知ってもらいたいって、今なら思える。変わることは悪いことばかりじゃない。本当にそのとおりだ。
「白菜の浅漬け作っておいたんだけど、食べる?」
「わあ、食べたい。透さんって料理上手だよね」
「葵が喜んでくれるかなって思って」
「えへへ。すっごく嬉しい」
お茶碗にご飯をよそって、透さんの作ってくれた白菜の浅漬けとインスタントのお味噌汁。たったこれだけなのに、ものすごくご馳走に見える。
「お腹が空いたー。まだできぬのか」
待ちくたびれたモフ太が催促に来る。
「はいはい、今行くから」
「モフ太も手伝って。モフ太はお箸担当ね」
「腹が減りすぎて何もできん」
「ここまで来れたから大丈夫だって」
「モフ太ならできる。やればできる子」
「お前たち、ボクの扱い雑じゃないか?」
「気のせい気のせい。さ、ご飯食べよ」
透さんとモフ太と月読様。いつもの光景に今日は須世理姫様。朝から明るい笑い声が響く。
名月神社は今日も賑やかだ。