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駆け込み寺の月読様_07

音もなく障子が開き、月読様が入ってきた。手には何かを持っている。


「これで返事を書くといい」


「まあ、ありがとうございます」


須世理姫様は和紙と筆ペンを受け取ると、嬉々として腕まくりをした。何を書くつもりだろうか、やる気は満々だ。


「ていうか筆ペンって。てっきり硯と墨かと思った」


「神様も時代に追いつこうとしているのかな」


「便利なものは取り入れたほうがいいだろう?」


「わたくしの愛の深さを知らしめてやりますのよ」


真剣な須世理姫様を見守る私たち。一体何に付き合わされているのだろう。傍らでは目を覚ましたモフ太が「腹が減った」とうるさい。


「あっ、そうだ。モフ太が予言してあげたらいいじゃない。須世理姫様と大国主様のこと」


「ふむ、そういえば昨晩もそんなことを言っていたな」


昨晩は、須世理姫様を差し置いて私と透さんのことを予言してくれたモフ太。『なんかいい感じになるであろう』って、めちゃくちゃ抽象的だけど、本当にその通りになってしまった。


ふと透さんと目が合う。ニコッと微笑んでくれるので、つられてヘラッと頬が緩んだ。なんか、それだけで幸せな気持ちになる。そんな私たちを見て、月読様が温かい眼差しをくれる。ちょっと恥ずかしい。


「うーん、うーん……大国主様と須世理姫様は誓いの盃を交わすことで、夫婦の愛を固く約束できるであろう」


モフ太が頭を抱えながら予言っぽいことをつぶやく。そしてパタリと倒れた。


「モフ太? 大丈夫?」


「予言するために力を使ったらお腹が空いた。ボクはもうダメだ、なにか食べ物を……バタリ」


「朝ご飯でも食べようか。準備するね」


「あっ、透さん。私も手伝う」


私たちが立ち上がると同時に、須世理姫様もガバッと立ち上がる。書いた手紙をぎゅっと握りしめると声高に叫んだ。


「大国主様の元へ帰りますわ」


「えっ、あっ、はい」


「誓いの盃を交わすのですわ!」


どうやらモフ太の予言に感化されたらしい。それにしても変わり身が速すぎる。とてもアクティブな神様だ。

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