駆け込み寺の月読様_06
もふもふでお日様のような香りに包まれて目を開けると、私の胸の中にはモフ太が包まっている。
「モフ太おはよぉ」
むくりと起き上がればそこは自分の部屋……ではなくて……。
「おはよう、葵」
「おはよう……。あっ、おはよう!」
爽やかな透さんの笑顔が朝から眩しい。そうだった、鍋パーティーをして須世理姫様に飲まされ過ぎて、みんなでここで寝てしまったんだった。どうやらいつまでも寝ていたのは私とモフ太だけだったようで、透さんも須世理姫様もしゃんと座ってお茶を飲んでいる。ていうか、モフ太ったらいつの間に私の胸の中に来たんだろう。須世理姫様と一緒に寝ていたはずなのに。
「アオイ、昨晩は迷惑をかけました」
「いえ、鍋パーティー楽しかったですね」
「大国主様からお手紙が届きましたのよ」
そういえば八咫烏が大国主様から須世理姫様への手紙を運んで月読様に預けていた。須世理姫様は手紙を胸に抱えてニコニコしている。
「何か良いこと書いてありましたか? とっても嬉しそう」
「ええ。愛しい妻へと歌が送られてきましたの。愛しのまいはにいって。やっぱり大国主様はわたくしのことを愛してくださっているんだわ。うふふ」
「それはよかったですねぇ」
やはり昨晩のあれは見間違いではなかったらしい。「愛しのまいはにい」って書くなんて、大国主様ったらどんな神様なんだろう。それでご機嫌が直ってしまう須世理姫様を見ていると、きっと須世理姫様のことをよく理解している旦那様なんだろう。
「それでわたくしも大国主様にお返事を出そうと思うのです」
「それはいいですね。……って、お帰りになるのではないのですか?」
「それとこれとは別ですわ。愛してくれているなら迎えに来てくださらないと。手紙だけでは想いは伝わりませんのよ」
「ええー……」
「ぎゃふんと言わせてやりますわ」
須世理姫様はぐっとこぶしを握ってメラメラと闘志を燃やす。ニコニコと嬉しそうなのは機嫌が直ったわけじゃなかったらしい。