駆け込み寺の月読様_05
静かに部屋に戻ると、須世理姫様とモフ太は毛布にくるまったまま大爆睡中。グローランプの薄明りの中、透さんのスマホの明かりが煌々と灯っている。
「起きてたんだ」
「うん。どこ行ってたの?」
「ちょっと月読様のところに」
「帰ったのかと思った」
「お酒飲んでるもん。帰らないよ」
「そうじゃなくて、逃げられたかなって思って……」
こたつ布団にくるまった透さんはバツが悪そうに目線をそらした。私はその隣に座って、透さんの手に触れる。温かくて大きな手。指と指が控えめに絡まる。
「さっきの、覚えてた?」
「覚えてるよ。酔って記憶ないとか、情けないだろ」
「えへへ……」
「……手、冷たい」
絡まっていた指がほどかれて、ぎゅうっと握られる。それだけで心が満たされていく感じ。好きで愛おしいって、そういうことなのかな。
結局のところ、恋愛って何かわからない。でも、これからもずっと一緒にいたいなって思ったり、触れて触れられて嫌じゃないなって、むしろ嬉しいって思うことを素直に受け入れていけばいいのかもしれない。
コテンと頭を透さんの肩にあずける。何も言わないけれど、息遣いだけで受け入れてくれているのがわかるから安心する。
「透さん」
「うん?」
「私の好きも、恋愛の好きだからね」
薄明りの中、須世理姫様とモフ太を起こさないように小さな声でボソボソと伝える。なんだか秘密の会話をしているみたいでドキドキするけれど、自分の気持ちをきちんと伝えられたことに満足した。
透さんがどんな顔をしていたのか、どんな気持ちだったのか、私にはわからない。繋いだ手から伝わる透さんのぬくもりとこたつの温かさに包まれて、すうっと意識がとんでいったからだ。それはとても心地よくて、どんなに頑張っても抗えない眠気。
「……葵はいつも肝心なところで寝ちゃうね」
透さんがくすくすと笑いながら私の体を横たえてくれていたことなど、私にはもう夢の中の出来事だった。