No.11 姉
1990年5月
約束をした次の日、大介に連れられて家まで来ていた。
「覚えとけよ。あの赤いアパートの角を右に...」
みたいな感じに道案内をしてくれているが、そんなこと全く頭に入ってこない。周りが懐かしすぎて思わず凝視したりしているような気がして、内心顔に出てないかハラハラしながら家にたどり着いた。
「おじゃましま〜す」
と言いながら大介の部屋に入っていこうとすると、女の人が出てきた。
大介はゲゲッとしたような顔つきだった。
「こんにちは」
女の人が清らかそうな声で言った。懐かしいような顔をしているが全く思い出せない。なんとなく大介と似ているような...
「裕二。早く行くぞ」
と明らかにアセアせしながら大介が言ってくる。飛び込むように部屋に入れられた。
「なんでそんな急いでたんだよ?」
「喧嘩してんだよ...あのクソ姉のプリンを食べただけで...殴って来たんだよ...朝」
「うん。脳内裁判官によると100%お前が悪い。」
「ちげーんだよ。お腹が空いてたし、名前も書いてなかったし、普通に冷蔵庫のど真ん中にあったんだぜ?普通食べるだろ。うん。むしろ食べないほうがおかしい」
「はぁ?よし、お前の倫理がおかしいことはわかった。ってかねーちゃんに勉強教えてもらえばよかったじゃん。なのに、プリンを食べたせいで冷戦だから仕方なく俺に教わったと、」
「正解!ってことで教えてくれよぉ。ゆーじー」
って感じの会話をしながら勉強をしていった。
ところで、勉強していているときに地球儀を見て気がついたのだが、北の国にある社会主義国家が崩壊していないのだ。ちょっと驚き。でも史実だとあと1年ぐらいで崩壊するんだよなぁ。なんて思いながら、余裕過ぎて退屈な勉強timeを過ごした。