彼女に贈る水彩画
放課後の校庭端に、男が一人。男の名は堤 龍之介。美術部の龍之介は筆を片手に風景を書いていた。続きを描こうとするが、夕焼けに染まるグラウンドはとても綺麗でついついボーっと眺めてしまう。
「じゃ100m走始めるぞー」
陸上部顧問の先生が号令をかける声に意識が持っていかれる。グラウンドでは陸上部の生徒がスタートの準備をしていた。少ししてスタートの合図がされる。先頭を走るのは三月さやかさんだ。彼女はクラスのマドンナのような存在でクラスの男子から好意の目で見られている。そんな彼女をうっとり見ていると、後ろからものすごいスピードで追いかけてくる人がいた。あれは恐らく権田いろかさんだろう。顎が長いという特徴で一目でわかる。そのまま一着が三月さん、二着が権田さんで100m走は終わった。ここで我に返った龍之介は筆を持ち直す。コンクールの提出期限が迫っておりあまり時間がないのだ。
しかし、その後1時間ぐらい、書いては陸上部の練習を見るという動作を繰り返してしまい、あまり作業が進まなかった。そのまま下校の時間が迫っていたので、絵の具の片付けをしながらtwitterを見る。龍之介は自分が描いた絵をtwitterにあげており、少ない人数だがフォローといいね、コメントをしてくれる人がいる。特にtukikaというフォロワーは毎回コメントまでしてくれていつも自分の励みになっている。
「tukikaさん新しい投稿見てくれたかなぁ」
などと独り言を呟きながら確認をしていると、
「ねえ」
と声をかけられた。慌ててスマホの画面を閉じ後ろを向くと、三月さんが立っていた。
「どうかしましたか…?」
僕が恐る恐る尋ねると彼女は敬語じゃなくていいわよ。と言い僕のキャンパスを指差す。
「いつもそこで描いてるからどんなの描いてるのか気になって聞いてみたの。」
僕は胸を撫で下ろす。取り敢えず苦情というわけではないらしい。
「これは校庭とグラウンドを水彩画で描いてて……」
僕が説明を始めると三月さんの後ろから権田さんが走ってくるのが見えた。
彼女は三月さんに話しかけようとしたが、僕と話していることに気づくと
「またさやかに惚れた男〜?」
と二人に聞こえる甘ったるい声で喋った。
「違いますーー!」
「違うってばぁーー」
二人揃って否定したせいで言葉が被ってしまった。
「うっわほんとに付き合ってるみたい…」
すかさず権田さんに言われてしまった。龍之介は恥ずかしくなり、
「僕、片付けがあるから中に戻るね!」
といい校内に逃げるように入った。そのまま道具一式を片付けた後、三月さんたちと会わないよう、少し時間を空けてから龍之介は帰る。その頃には空もすっかり暗くなっていた。
一週間後の放課後、龍之介は教室で2学期期末テストの対策をしていた。今ではテスト週間に入り部活動がなくなったのである。あの日以来、三月さんとは放課後の部活終わりにそこそこ話す関係になっていた。話す内容は、学校や部活動のことなどたわいもない話だが、女子と話す機会が少ない龍之介からすると嬉しい時間でもあった。テスト週間が終わった後、何を話そうか考えていると、
「ねえ」
と声をかけられた。もしやと思い振り向くと、そこには数学の参考書を片手に立っている三月さんの姿があった。
「ここの問題教えてくれない?」
そう言って三月さんは龍之介に参考書を差し出す。龍之介は急な出来事にドキドキしつつも問題を確認する。幸いにも問題はそこまで難しいわけではなく龍之介でも解けるレベルだった。
「まずはこの数を左辺に移項して…」
龍之介が解説を始めると、三月さんが顔をグッと近寄せてきた。その行動で龍之介の心臓がバクバクと激しく鳴り始める。落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせ、解説を再開しようとすると、こちらに目を向けた三月さんと目があってしまった。恥ずかしさで咄嗟に目を逸らすと、
「どうかしたの…?」
と、三月さんに聞かれる。
「な、なんでもないよ!」
言った勢いのまま解説を再開し、夢中で喋ってなんとか解説を終わらせる。一呼吸ついた後、
「どうして僕に聞いたの?」
龍之介は三月さんに質問した。三月さんは少し目を逸らし、
「知ってる数学の先生は出張で居ないし……クラスの中だと龍之介君って頭良くて頼りになるから……」
と答えた。龍之介は勉強と絵だけはできる方なので褒められるのは素直に嬉しかった。嬉しさを静かに噛み締めていると
「さやか帰ろーー!もう6時だよー……」
と権田さんが教室を覗いて声をかけてきた。しかしその声はだんだんと小さくなっていく。
「げっ、今度は二人きりで勉強会ですか……自習室から教室行くとは聞いてたけどこんなにイチャイチャしてたなんて……」
「違うってー!」
咄嗟に三月さんが否定する。それに続き龍之介も赤べこのようにうんうんと頷いておく。それを若干引いた目で見ながら権田さんが言う。
「まあいいわ…それより早く帰るわよ。最近は陽が落ちるのも早いし。それに不審者も出たらしいしねー。」
「確かに先生が朝のホームルームで言ってたよねー。最近そんな話多くてちょっと怖いわー。」
そう言いながら三月さんは龍之介の方に向き、
「龍之介君、教えてくれてありがとね!」
と笑顔で言う。その笑顔にほっこりしながら頷くと、三月さんはじゃあねと手を振りながら権田さんと帰って行った。龍之介も帰ろうと思い荷物を片付け始める。片付けながらスマホをいじっていると、僕がした投稿にいいねとコメントが来ていることに気づいた。
「おっ、tukikaさんまたコメントしてくれてる!」
自分の書いた絵を褒めるコメントをされたことが嬉しく、上機嫌で片付け、そのまま校門を出る。その時雨がポツポツと降り始めた。
「今日は雨の予定なんてなかったと思うんだけどなー…」
独り言を呟きながら折りたたみ傘を取り出す。龍之介の気持ちを下げるような雨は、何か不吉なことが起こることを暗示しているようだった。
雨に濡れたくなくて早足で下校していると、前に三月さんと権田さんが歩いてるのが見えた。あの二人と同じ下校方向だったのか…とひそかに思っていると、二人が手を振り別々の道に分かれていく。なんと三月さんが行った道は龍之介の通る道と同じ道だった。もしかして家が案外近いのかもと思いながら龍之介もその道を進み、気配を消しながら後ろをついていく。その頃には雨が強くなっていた。三月さんも傘をさしているので、気づかれていることはないだろう。その後、話しかけるべきなのか悩みながら後ろを歩いていると、三月さんの横に一台の黒い車が止まった。その時龍之介は朝のホームルームで先生が言ってた不審者のことを思い出した。内容は生徒を車に引き摺り込み誘拐しようとしているというものだったと思う。龍之介は嫌な予感を覚え、傘を放り投げ三月さんに向かって走り出した。案の定後部座席の扉が開き、そこから男の腕が伸びてくる。
「キャーーーーー!!!」
三月さんが悲鳴を上げ、抵抗するが、その抵抗も虚しく三月さんを傘ごと掴み強引に車の中に押し込もうとする。
「三月さん!!!」
龍之介は無我夢中で走り、男の腕に飛び蹴りをしようとした。しかし龍之介は美術部であり運動神経は皆無。飛び蹴りなどできるはずがないのだ。かくして龍之介は少し足を上げた姿勢のまま男の腕に衝突した。龍之介はそのまま体勢を崩し雨で濡れた地面に顔から倒れ込む。
それと同時に、車から腕を伸ばしていた男はチィッと舌打ちをし、運転席の男に何かを話しかけた。すると、車は勢いよく走り出しそのまま住宅街に消えて行った。それを見て安心したのか龍之介の体に痛みがどっと押し寄せてくる。
「ったいっ…」
「龍之介君大丈夫!?」
三月さんが龍之介のそばに駆け寄り、手を添え身を起こした。
「龍之介君!血!顔から血が出てるよ!」
三月さんがそう叫ぶので顔を手で触ると手に血がべったりついていた。
「僕は大丈夫だよ。それより三月さんが無事でよかった…」
「なんでこの状況でそれが言えるのよ!?早く!手当てするからうちに来なさい!」
そんなやりとりをし、三月さんの家まで体を支えてもらいながら歩いた。龍之介が怪我をした場所から三月さんの家はそこまで遠くなく1分もしないうちに到着することができた。
「おじゃまします…」
家の中に入ると三月さんがリビングまで案内してくれる。三月さんの家族は誰も居ないようだった。
「そこの椅子に座って待ってて、救急セット持ってくるから。」
そう言い残し三月さんは隣の部屋に入って行った。龍之介は近くの机に置いてあった手鏡を拝借し自分の顔を見てみる。龍之介の顔は左目の横を擦りむいており血が出ていた。そして顔全体が泥で汚れている。手鏡を戻した後、龍之介は飛び蹴りじゃなくて普通にパンチで良かったなと馬鹿正直に反省しながら三月さんが戻ってくるのを待った。
少しして三月さんが救急セットを片手に戻ってきた。
「まずは顔をタオルで拭いて、その後消毒をして絆創膏を貼るわ。消毒が痛いと思うけど……我慢してね…」
そうして龍之介の顔をタオルで拭き、消毒液をつけていく。
「いたっ…」
「ごめん!ちょっと我慢して!」
消毒液をつけ終わると絆創膏を丁寧に貼ってくれた。三月さんの手際に感心してると、彼女は立ち上がり隣の部屋に戻って行った。そして救急セットを置いて代わりにあったかいお茶を持ってきてくれる。それを龍之介の前に置き、三月さん自身も一口啜る。
「手当てとお茶ありがとう」
龍之介がお礼を言う。
「お礼を言うのはこっちよ助けてくれてありがとう。あのまま車の中に入れられてたらと思うとゾッとするわ……」
三月さんはそう言い下を向いた。気の利いたことを言えずに龍之介が黙っていると、三月さんは顔を上げ、別の話題を振る。
「そういえばなんで龍之介は私が襲われたところにちょうどいたの?」
龍之介は気まずくなりながら説明する。
「僕の家がこの道をもう少し進んだところにあるんだよね…」
「え!そうだったの…全然気づかなかった…」
「僕もさっき下校してる時に気づいたよ…」
「えー気づいたなら話しかけてくれれば良かったのにー」
「いやーそれは……そうした方が良かったかもねー……」
龍之介が気まずく返す。三月さんはそんな龍之介には気づかず話かけてくる。
「てことはさ!龍之介君の家って私の家と近いんだよね?」
「ここから5分ぐらいの位置にあるよ。」
そう答えると三月さんは顔をパァッと輝かせる。
「だったらさ!明日から一緒に登下校しない?また襲われたりするのが怖くて……」
龍之介は驚きで目を丸くし、一つ質問する。
「一緒に帰ってる権田さんはどうするの?」
「大丈夫大丈夫。いろかちゃん私と違って友達いっぱい居るし他の友達と帰るでしょ。」
三月さんはさらりとそう言ってのけた。
「でも…僕なんかが……」
「僕なんかが………………何?」
「なんでもないです……」
「じゃ決定〜〜!明日うちに朝8時に集合ね!」
「わかりました……」
クラスのマドンナと一緒に登下校するという事実に心臓がバクバク鳴っている。
「あ!lineも交換しない?」
「あ……はい……」
流れでlineまで交換してしまった。
このまま一緒にいると緊張で変なことを言ってしまいそうだったので龍之介は帰ることにした。
「僕そろそろ帰るよ。」
「顔の傷は大丈夫?具合が悪いとか無い?」
三月さんが心配そうに聞く。
「大丈夫だよ」
そう言い龍之介は玄関に向かう。後ろでは心配そうに三月さんが龍之介を見ている。
「じゃあまた明日」
そう言い玄関を開けると
「気を付けて帰るのよー。」
三月さんが見送ってくれる。どこか不思議な感覚になりながら龍之介は帰路に着いた。
翌日の朝、8時に三月さんの家の前に行くとすでに三月さんは玄関の前で待っていた。
「おはよう。待たせちゃった?」
「ううん。私も今出てきたところ。」
そう言い三月さんは龍之介の隣にきて歩き始める。
「昨日はありがとね。龍之介は怪我大丈夫だった?」
「大丈夫だよ。それと昨日の怪我の手当てありがとう。」
「いいのいいの。助けられたのは私だし……それと、そのさん付けやめない?私も今日からやめるから。」
「え……じゃあ…三月?」
「そうそう!」
呼び方を変えるのは違和感を感じるが、呼び捨てで呼び合えるほどの仲になったことに龍之介は嬉しく感じた。
「三月は昨日の件学校とか友達に言ったの?」
「学校と警察、家族には言ったわ。友達は本当に仲がいい数人にだけ。みんな無事でよかったって言ってたわよ。」
龍之介は相槌を打ちながら三月の話を聞く。
「あ、どういうことがあったか説明する時に龍之介の名前出しちゃったから、学校行ったらいろかちゃんに質問攻めされるかもね。」
「えっ」
この時点で龍之介は今日の学校生活が大変になることを悟った。
その後は最近あったことや面白かったことなどをポツポツ話しながら学校に登校した。
途中同じクラスの人にジロジロ見られてとても気まずかったが…
学校に着いてから龍之介はクラスの男子に質問攻めされた。
付き合ってるのかどうかや出会いはどこなんだとか、龍之介は適当に受け流しつつ学校を過ごす。そして、気づけば放課後になっていた。昨日と同じように教室に残って勉強していると、誰かが龍之介の目の前に立った。
「ねえ、龍之介?」
顔を上げると権田さんが見下ろしていた。顔が顎のせいもあって少し怖い。何を言われるのかハラハラしていると、
「昨日あんたがさやかを助けてくれたんでしょ…………ありがと。」
「…………どういたしまして…?」
お互いに微妙な空気が流れる。数秒間お互いに無言になった後、権田さんが話し始めた。
「それはそうとあんたさやかと一緒に登下校してるらしいじゃない。」
「そうですね…」
龍之介が答える。すると権田さんは目を逸らしながら
「あんたはさやかと仲良くしなさいよ」
と答えた。予想外の返しに龍之介は固まる。てっきり「私のさやかを奪うなー!」ぐらいは言ってくると思ったのだ。
「は…はい…?」
「さやかの周りにくる男はみんなさやかの顔に釣られて話しかけてるだけだから…だけど龍之介はそうじゃない。」
「は…はぁ…」
「龍之介ならさやかを楽しませられると思って…その…と、とにかく!仲良くやるんだぞ!」
そう言いクラスから勢いよく出て行ってしまった。これが話題のツンデレだろうか?そんなことを考えていると三月が教室に入ってきた。
「今いろかちゃんすごい顔して教室出てったけどなんかあったの?」
「なんか僕も分からないんだよねー。一人で盛り上がってそのまま出てっちゃった。」
「ふーん……。まあいいわ。それより早く帰りましょ!」
そう言い三月は龍之介を急かす。僕は急いで教材をリュックにしまいながら窓を見る。空は夕焼けに染まり赤く輝いていた。準備が終わり2人で学校を出る。校門を出ると三月が話しかけてきた。
「今日は昨日みたいなのいないといいね。」
「そうだね…」
ここで「僕が君のことを守るから心配いらないよ。」とか言えればかっこいいのかもしれないが、そんなこと龍之介には出来なかった。朝と同じようにたわいもない話をしながら帰路に着く。昨日襲われた場所も特に何もなく歩くことができ、三月の家に着いた。
「また明日ー」
「じゃあね龍之介〜」
そう言い二人は別れる。ちょっと前では考えられない青春をしていることを噛み締めているとスマホの通知が鳴った。
「tukika:全然大丈夫ですよ。テストの後の投稿楽しみに待ってます!」
スマホのホーム画面にコメントが表示される。
どうやら昨日龍之介が書き込んだ、テストで忙しくなるから絵を投稿できなくなるという内容にtukikaさんがコメントをしてくれたみたいだ。
「ryukeke:すみません。テストが終わったら沢山投稿したいと思います!」
と返してスマホを閉じる。龍之介の描く絵を楽しみにしてくれている人がいることに嬉しく思いながら、テストが終わったら沢山絵を描いて投稿しようと心に決める。ホクホクした気持ちになりながら龍之介は帰路に着いた。
三月が誘拐されかけた日から一週間が経った。あれから毎日三月と登下校しているのでクラスでも特段何か言われることもなくなってきていた。今日は期末テスト最終日。テストが終わったら一緒に帰る予定だ。
放課後、教室で龍之介が荷物をまとめていると、三月からline がきた。校門で待ってるという内容だったので、荷物を持ち校門に向かう。校門で合流し、ポツポツ話しながら校門を出る。空は曇り模様だった。北風と合わさって少し肌寒く感じる。
「龍之介はテストの出来はどう?」
三月が話題を振ってきた。
「全教科80点はいったと思う…」
龍之介がポツリと言う。
「テスト返ってきてないのに自信ありすぎ……やっぱ天才様は違うのね……」
「あはは…」
三月の返しに龍之介は苦笑いをする。
「私なんて平均点いくかも怪しいくらいだよ…」
「平均点取れれば十分だよ…」
龍之介が控えめに言う。
「私より点高いのによくそんなこと言えるわね。」
三月が龍之介のことを睨む。
「ごめんってーー」
龍之介が返す。その後もたわいもない話をワイワイ話しながら歩いて行く。
「これで二学期も終わりかー…」
ふと龍之介が呟くように言った。
「そうねぇ…」
そう呟く三月の声は何故か悲しげだった。
「なんか悲しげじゃない?いつもの三月らしくないよ。」
龍之介がそう言う。
「そうかもしれないわね……」
そう言い三月は下を向いてしまう。龍之介の言葉で落ち込ませてしまったのだろうか?そう考え何か言葉をかけなければと思ったが、うまく言葉が出てこない。龍之介が口を開いては閉じを繰り返していると、三月は顔を勢いよく上げた。その顔は覚悟を決めたような顔だった。
「いつも元気な私が落ち込んでちゃダメよね!」
三月は元気そうに言う。その気迫に押され龍之介は目を丸くする。
「龍之介に話したいことがあるの。」
三月はそう言って龍之介の目を見た。その言葉と表情に今更ながら何かあるのだと悟る。緊張で胸がはち切れそうになりながら、龍之介は三月の次の言葉を固唾を飲んで待った。
「私、二学期が終わったら転校することになったの。」
そう言った三月の表情は吹っ切れたような、それでいて泣きそうな表情をしていた。
「え………て……転校…………?嘘…だよな……」
「本当……だよ……」
三月が答える。龍之介はひどく動転した。せっかく三月と仲良くなったのに!登下校を一緒にし、仲良く話せるようになったのに!高校生らしい青春を送れていることが嬉しかったのに!それもこれもあと少しで終わってしまうのだ。その絶望に心が埋め尽くされていると三月がポツポツと話し始めた。
「お父さんが転勤になって私もついて行くことになっちゃたんだ……私はここに残りたいって言ったけど、どうしてもダメだって。」
そう言い三月は言葉を区切る。
「だから後少しの期間目一杯楽しもう!」
三月が笑顔でそう言う。
「うん……」
龍之介は下を向いてそう答えることしかできなかった。
「じゃあ私帰るね。バイバイ龍之介。また明日。」
いつのまにか三月の家の前についていたようだ。そう言い三月は家の中に入って行っってしまった。その時、ちょうど雨がポツポツと降り始める。龍之介は何も言うことができず雨に濡れながら玄関を眺めることしか出来なかった。
家に帰って龍之介はベッドの縁に腰を掛け頭を抱えていた。その頭の中は三月が転校すると言うことで埋め尽くされていた。気持ちは酷く沈んでいるが、龍之介は気づいていた。何故自分がこんなにも落ち込んでいるのかに。さっき三月が転校すると聞いた時、せっかく三月と仲良くなったのに!登下校を一緒にし、仲良く話せるようになったのに!高校生らしい青春を送れていることが嬉しかったのに!と頭では思い浮かべていたが、本当の理由は違う。本当は龍之介が三月のことが好きだから遠くに行って欲しくないだけなのだ。しかし現実は変えられない。暗い部屋で龍之介は最後に自分が三月にできることは無いかと必死に考えた。しかし何も思い浮かばなかった。放心状態になりボーっと部屋を眺めた時、ふと龍之介の視界にアクリル絵の具と筆が目に入った。
「はっ……!」
そうだ。龍之介は勉強と絵だけは得意であり、その中でも水彩画が得意なのだ。ならばやることは一つ。
「水彩画を描いてプレゼントして、三月に告白しよう……!」
暗い部屋の中、龍之介は決意を固めた。やる事が決まった後、行動に移すのは早かった。まずはスマホを取り出し、twitterを開く。まずはtukikaさんに、テストが終わったけど絵を投稿できないという旨の内容と、謝罪文をDMで送る。返信はすぐに返ってきた。
「tukika:DMありがとうございます。全然大丈夫ですよー。それにしても、何かあったんですか?」
「ryukeke:僕には好きな人がいるんですけど、その人が転校するらしいんです。なのでその子に水彩画をプレゼントして告白しようと考えてるんです。その関係でそれ以外の絵を描く暇が無くなり、投稿出来なくなると思います。すみません…。」
龍之介もすぐに返信を返しておく。
「tukika:そうだったんですね……!告白うまくいくといいですね!」
またすぐに返信が返ってきた。
「ryukeke:ありがとうございます!」
そう返し龍之介はスマホを閉じた。そしてスマホの代わりに筆を握る。二学期が終わるまでは後一週間しか無いので急いで水彩画を完成させないといけないのだ。龍之介は筆を走らせる。水彩画のイメージは龍之介と三月が楽しく笑い合っているところだ。自分を水彩画に入れるのは図々しいかと思ったが、この水彩画を渡して告白するのだ。この際どうにでもなれと思い描き進めていった。そのまま時間が経つのを忘れて描き進める。そして気づけば日付が変わろうとしていた。慌てて風呂に入り、身支度をしてベッドに潜り込む。明日三月と上手く話せるだろうか?そんなことを悶々と思いながら眠りについた。
翌日の朝、少し早めに三月の家についた龍之介はソワソワしながら三月を待っていた。自分は上手く話せるだろうかという不安が頭をよぎる。やがてガチャリと音を立てて玄関が開く。
「おはよう龍之介」
いつもと変わらない明るい挨拶だ。
「おはよう」
龍之介もいつもと同じように挨拶を返す。
いつものように三月は龍之介の隣にやってきて歩き始める。つられて龍之介も歩き始めると三月が話し始めた。
「私ね26日に引っ越すことになったんだ。だからさ、25日のクリスマス私と遊ばない?」
ということは25日が三月と会って話すことが出来る最後の日だ。龍之介はその日に絵を渡し、告白をしようと決心しつつ返事をする。
「いいよ。25日で遊んで三月とお別れか〜。」
「そうだね……いっぱい楽しもうね!」
そう言い三月は龍之介の目を見てくる。龍之介つい恥ずかしくなって目を逸らしてしまった。その後はいつももように登校し、1日を過ごし、部活をした後いつものように三月と下校する。
「じゃあね。龍之介」
「じゃあねー」
そう返し三月は玄関を開け家の中に入って行く。それを確認した龍之介は家まで走り始めた。早く水彩画の続きをやりたかったのだ。無我夢中で走り玄関に飛び込む。リュックを放り投げた後、龍之介は筆を持った。三月との思い出を想い描き、それを水彩画に落とし込んでいく。そのまま作業に没頭し気づけば日付が変わろうとしていた。
また、慌てて風呂に入り、身支度をしてベッドに潜り込む。そんな生活を龍之介は24日の終業式の日まで続けた。
12月25日の12時、龍之介は目を覚ました。昨日は三月に渡す水彩画を完成させるため夜遅くまで作業していたのだ。龍之介は寝起きの覚束ない足で水彩画を見にいく。
「よかった……ちゃんと乾いてる……」
水彩画を確認した後は身支度をする。今日は2時に三月の家に行き、一緒に街へ出る。そして映画を観た後ショッピングをして遊ぶらしい。龍之介が水彩画を渡し、告白するのはその後になるだろう。そんなことを考えながら朝ご飯兼昼ごはんを食べる。食べながらスマホを弄っているとtwitterに一件のDMがきていることに気づく。
「tukika:水彩画は完成しましたか?」
tukikaさんから丁度いいタイミングでDMが来ていた。
「ryukeke:完成しました!今から渡して告白に行くところです。明日からまた絵の投稿も再開できそうです!」
するとすぐに返信が返ってくる。
「tukika:水彩画喜んでくれるといいですね!告白頑張ってください!絵の投稿楽しみにまっています!」
「ryukeke:ありがとうございます!」
コメントを返信し終えると同時に食べ終わり食器を片付ける。時計を見ると出発の時間が迫っていた。急いでバッグに荷物を詰め込み、龍之介は家を出る。三月の家には1時50分ぐらいに着いたが三月はすでに玄関の前で待っていた。
「ごめん!待たせちゃったかな?」
「全然まってないわよ!私も今出て来たし。」
三月はそう言っていつものように龍之介の隣に来る。いつもは制服姿で会っているので三月さんの私服姿は新鮮だった。どんな服でも似合いそうな三月さんだが、今日着ている膝丈のワンピースは特に似合っていると思う。いつもの登下校のように三月と話しながら街に出る。クリスマスでいつもより人が多い街を歩き、映画館に着いた。
「うわぁ……人がいっぱい……」
三月が呟く。
「クリスマスだからねー。映画のチケットちゃんと取れるといいな…」
龍之介は呟きながらチケットを買うための列に並ぶ。幸い二人が見たかった映画の席は少し余っており、チケットを取ることができた。そのままの流れでポップコーンも購入し、二人でシアターまで歩いていると三月が話しかけて来た。
「私ホラー映画初めてなんだよね〜。だからどれくらい怖いかわからないんだよね。」
「僕は数回だけ見たことあるけどピンキリかな。これは普通ぐらいだと思うよ。」
「私怖いのは苦手だから心配……。でも、龍之介がそう言うなら平気よね!」
そんな話をしているとシアターについた。シアター内はカップルが多かった。それを横目に自分たちの席に座る。少ししたら照明が消え上映が始まった。映画は龍之介が思っていたよりも怖い映画だった。三月が怖がってないかチラリと見ると少し涙目になって映画を観ていた。後で謝ろうと思いながら映画に目を向けると、右手に冷たい何かが乗った。もしやと思い見ると龍之介の右手に三月の左手が重なっている。映画が怖いせいか三月の手は冷たかった。本物のカップルみたいな状況に龍之介は顔を赤くする。しかし、三月は映画が怖すぎて自分が手を乗せていることに気づいていないようだった。龍之介は一度深呼吸をし、冷静に考える。よくよく考えれば好きな人と手を合わせているのだ。わざわざ自分から退かす必要は無いだろう。龍之介はこの状況を噛み締めながら映画に視線を戻す。三月とはそのまま映画の終わりぐらいまで手を合わせていたのだが、流石に気付いたのかスッと手が退かされる。横目に彼女の顔を見ると暗くても分かるぐらい顔を赤らめていた。その顔が面白くて少し見ていると、三月がいきなりこちらを向き龍之介を睨む。龍之介が知らん顔をして映画の方に目を向けると、三月は左手で龍之介の右足を突ついてから映画の方に視線を向けた。そのまま2人が映画を見ているとエンドロールが流れ、映画が終わった。照明がつくと同時に三月が声を上げる。
「いつから……私は…手を重ねてたの…?」
そう呟く三月の顔をは真っ赤だった。
「ちょうど映画が半分くらいのところかな……」
「そんな前から……何で教えてくれなかったのよ…!」
三月が今にも消えそうな声で呟く。
「三月がわざとやってると思ってたんだよねー。」
「それが嘘ってことくらいは私でも分かるわよ。映画の最後の方で私を見てニヤニヤしてたの知ってるんだから!」
そう言い三月は突然歩き出す。龍之介もそれに慌てて付いて行き、2人で映画館を出た。そのまま少し無言で歩き続けた後、龍之介は謝った。
「手、気づいてたのに教えなくてごめん。」
「もういいわよ。」
三月はそう言うと少し目線を下に向け、
「別に龍之介と手を重ねるぐらいなら、その…嫌では無いし……」
小さな声で三月が呟いた。龍之介はその言葉に目を丸くする。
「映画の話はもういいわ!ショッピングいきましょ!」
そう言い三月はショッピングモールの方向に走り始める。龍之介は急いで三月の後を追いかけた。
ショッピングモールもクリスマスとあって人でごった返していた。龍之介はちょっと走っただけで息が上がっているのに、三月はちっとも疲れていなかった。さすがは陸上部だ。
「まずはそこの店に行きましょ。」
そう言い三月は人気アパレル店に入って行く。龍之介が店に入ると、三月はすでに服を両手に悩んでいた。
「どっちの方が可愛く見える?」
三月が龍之介の方を向き聞いてくる。龍之介は三月はどんな服でも似合うと朝から思っていたが、改めて見るとほんとにどんな服でも似合っている。
「三月が着るとどっちも似合うと思うけどな……」
素直に感想を口にすると三月は顔を少し赤らめ恥ずかしがりながら言う。
「どっちもいいじゃ決まらないでしょ…。」
「もう少し他のところも見ようよ。」
龍之介が提案する。
「それもそうね。こうやってすぐ欲しくなるの私の悪い癖だわ。」
そう言いながら三月は服をハンガーに戻した。その後は2人で話合いながら色々なアパレル店を回った。どの服も三月に似合っておりなかなか決まらなく、時間は18時を回りそうだった。しかし今いるアパレルショップにある白色のコーディガンが三月にとてもよくに似合っておりそのコーディガンを買うことになった。
「龍之介が全部似合ってるって言うからどれにしようかメチャクチャ悩んだよー。」
会計に並びながら2人は話す。
「素直に思ったことを言ってたらこうなっちゃったんだよ……でも、そのコーディガンは一際似合ってたよ!」
笑顔で龍之介が返した。
「龍之介のおかげでいいのが選べたわ……。ありがと。」
三月がそれに対し、小さい声でお礼を言った。
「それにしても三月が僕の服を選んでくれてるとは思ってもなかったよ。」
実は、三月は自分の服を選びながら龍之介に似合う服も探してくれていたのだ。龍之介がそのことを嬉しく思っていると、
「だってそのコート龍之介に絶対似合うと思ったから…」
三月が恥ずかしがりながら答える。そんなことを話しているうちに会計の順番がやって来た。龍之介が財布を取り出すとそれを三月が止める。
「私が払うわ。龍之介には前誘拐されかけたところを助けてもらったし、今も一緒に遊んでくれてるから。それに…今日はクリスマスだからね。」
そう言い三月は会計を始める。龍之介があたふたしているうちに三月は会計を終わらせて、コートを龍之介に差し出す。
「龍之介、メリークリスマス」
そう言い三月はコートを渡してきた。断ることなど出来ず、されるがままにコートを受け取る。
「あ、ありがとう。」
申し訳なさを感じながらお礼を言うと、三月はパァッと花が咲いたような笑顔をした。その笑顔に見とれていると、三月が話しかけて来た。
「ショッピングモールの外でイルミネーションやってるらしいんだけど見に行かない?」
その言葉に龍之介の心臓が跳ねる。ショッピングも終わり後はイルミネーションを見て帰ることになるだろう。告白するならこの後しかない。
「いいよ。見に行こう。」
龍之介は頷いた。
緊張しながらショッピングモールを歩いていた龍之介はやがて外に出てた。
外は綺麗なイルミネーションがされており、真ん中にはイルミネーションが施された高いクリスマスツリーがあった。
「綺麗……」
三月が呟く。そのまま2人でイルミネーションを見て回る。龍之介はイルミネーションを見ながら三月との思い出を振り返っていた。三月と話し始めたのはちょっと前、まだ一ヶ月も経っていない。それなのに思い出があり過ぎて、考える間も無く次々と思い出が蘇る。しかしもう今日で三月とは会えなくなってしまうのだ。もう思い出を作ることが出来なくなってしまうかもしれない。
「龍之介……泣いてる……?」
三月に声を掛けられた。気付いたら泣いてしまっていたらしい。
「もう三月に会えないかもと思うと悲しくて……ひぐっ、うぅっ……」
言葉にするとさらに涙が出てくる。
「もう!やめてよ!そんなことを言われたら私まで……ひぐっ……」
2人は泣いたまま少し歩き、クリスマスツリーの下のベンチに腰を下ろす。
何分泣いただろうか。龍之介は気持ちを落ち着かせるために深呼吸をする。
「三月大丈夫?」
「大丈夫なわけ無いでしょ……龍之介が泣くから私ももらい泣きをして……」
そう言いながら三月は目元を拭う。龍之介はもう一度深く深呼吸をする。最高のシチュエーション。告白するなら今しかないと思った。龍之介は覚悟を決め、ベンチから立ち上がり、水彩画を取り出す。そして三月の目を見て言う。
「三月さん。貴方が転校すると知ってから貴方に何かを贈りたくて水彩画を描きました。どうか受け取ってください。」
龍之介は水彩画を差し出す。水彩画には楽しく笑い合う龍之介と三月の姿が描かれていた。
「やっぱり、私のために描いててくれたんだね。」
三月がそう言った。その一言で龍之介が考えていた告白の文を頭から吹き飛ばすには充分だった。
「え……今なんて……」
龍之介が困惑していると、三月がスマホを取り出しtwitterの画面を開く。
そこにはryukekeをフォローしている状態になっている画面があった。そしてそのアカウント名は…………tukikaだった。
龍之介が震えながら聞く。
「い……いつから……知ってたの…?」
三月ははにかみながら答える。
「部活終わり初めて話した時……龍之介の後ろを通った時、偶然視界に入ったスマホの画面を見て、もしかしたらと思って。」
「最初から知ってたんだ…」
龍之介は目を見開く。
「言うタイミング逃して今になっちゃった……ごめんね。」
三月が謝るが、龍之介は急いで慰める。
「そ、そんなことないよ!身近に僕のことをフォローしてくれてる人が居て、しかもコメントも良くしてくれてる人だったなんて……嬉しい限りだよ!」
そう言って龍之介は思い出す。今日起きてからtukikaさんに送ったDMのことを。
「あ……」
龍之介が口を開けて硬直していると、三月がベンチから立ち上がった。
「それはそうと……告白したい人が居るんだっけ?龍之介?」
そう言う三月の顔はまるでいたずらっ子のようだ。
「え………………あ……」
龍之介が口をパクパクさせていると三月が呟く。
「実は私も好きな人が居るんだよねー。」
「え……」
龍之介の動きが止まる。そして三月は龍之介の目を見て言う。
「龍之介君。ずっと好きでした。私と付き合って下さい!」
そう言いながら三月は目を瞑り右手を差し出して来た。その時、龍之介は怒涛の展開に頭が真っ白になっていた。その後、数秒間硬直し、やっと自分の状況を理解する。その間も三月は右手を差し出してくれていた。龍之介は両手で三月の手を握り返す。
「僕も三月のことが好き。こんな僕でよければお願いします!」
その瞬間三月が龍之介に抱きついて来た。
「これからよろしく!龍之介!」
そう言い三月は龍之介を抱く手に力を込める。龍之介は動揺し、顔を赤らめながらも三月を抱き返す。
「よろしく!三月!」
いつまで抱き合っていただろうか。その時間は長かったようにも短かったようにも感じた。抱き合うのをやめた後、2人は再びベンチに腰を下ろした。空からはパラパラと雪が降ってきていた。
「まさかtukikaさんが三月だったなんて……」
龍之介が呟くと三月は少し笑いながら言う。
「私も最初は目を疑ったよー。でも龍之介とryukekeの行動と発言が酷似してたからそれでだんだん確信に変わったんだー。」
「そう思うとなんだか恥ずかしくなってきたな……」
ryukekeとしての自分をずっと三月に見られていたのだと思うと途端に恥ずかしくなる。
「あ!ちゃんとryukekeとしての投稿は続けてよ?龍之介に会う前から楽しみにしてるんだから。」
「はいはい。」
龍之介は投げやりに答える。それから少し無言の時間が流れた。その後、龍之介は空を眺めパラパラ降る雪を眺めながら言う。
「付き合うことは嬉しいんだけど、明日にはもう引っ越しちゃうんだよな…」
暗い雰囲気で龍之介が言うと、三月は何故か気まずそうに目を逸らしながら言う。
「実は……引っ越し………私と母は行かないことになったんだよね……」
龍之介はしばし固まる。
「え…………?じゃあ転校もなくなるの……?」
「そういうことになる……ね。」
「よかったぁーーーーー!」
気づけば龍之介は感情が声に出ていた。それにびっくりして三月は龍之介を見る。龍之介もその視線に気付き一度落ち着いてから冷静に三月に聞く。
「でもどうして転校しなくてよくなったの?」
龍之介が聞くと、三月は下を向いて顔を真っ赤にしながら答える。
「父にどうしても好きな人が居るからこの家に残りたいって言ったんだ……」
その言葉に龍之介まで顔が赤くなる。
「そんなこと……言ってたのか…………」
龍之介も恥ずかしくなり固まっていると三月が勢いよく顔を上げて龍之介の目を見てきた。
「だから龍之介!これからもよろしく!」
そう言う三月の笑顔は、今まで龍之介が見たことがない最高に美しい笑顔だった。