100当番最強説
かつて、高校を風を切るように歩く1人の男がいた。
男は、バックボーンにと、裏社会と名のつく物なら、片っ端から味方につけていた。
学校に来る上級生や同級生、下級生にいたるまで、誰もそいつに口出しができなかった。
何せバックボーンには、奴等がいるからだ。
男は、学校に交通機関を使って、通学していた。
どこでもかしこでも、風を切ったように歩き、電車では、その男が座ると一区画、電車の席が空くという状態だった。
だが、男の性格は素直な性格だった。
電車ではお年寄りに、肩を揺らしながら席を譲り、仲間がやられると、怒り出し、先生達からも一目置かれる存在だった。
しかし、いかんせん、男は危険な物を近づけ過ぎた。
身を守る為、カッコいいと思われたい為。理由は様々だが、男は自分自身の力で身を守る力が無かった。
誰もその事に気付きはしなかったが、ある時露呈してしまった。
隣街の女の子にフラれたのだ。
そのダメージたるもの、男にとって、凄まじい物だった。
何せ今まで、風を切ったように、肩を揺らしながら、自分を偽って生きて来たのだ。
それがフラれたという事実の為、衰弱して行く男は、学校でも、肩を揺らす所か、足が震え、遂には自分のバックボーンであるはずの、裏社会からも、弱いと判断され、狙われた。
もう終わりだ。男は追い詰められた。
そんな時、学級指導の先生が、手を差し伸ばした。
お前は、今まで、危ない橋を渡っていたんだ。
自分の力じゃあない物を、自分の力と過信し、自分の良い所まで、潰してしまっていた。
確かに番長みたいな生き方は、自分からみたらカッコいいかもしれない。
でも、鏡を見てみなさい。いつのまにか本来の自分とは違った自分になってはいやしないかい?
男は反省と後悔に入り浸れてしまった。
どうすればいいんですか??
学級指導の先生は答えた。
お前の本気はこの程度なのか??
誰かに本気で助けて下さいって言えないのか。
小学生でも、やりたい事をみつけたら、親や祖父母と真剣に向き合って相談してみる。
犯罪に巻き込まれたら、警察署や110番にかけて、一緒に対処する。ちっちゃい子でも、習っている基本だぞ。
俺と今向き合って話してるように、それぞれの問題に助けて下さいと頭をきちっと下げて見る事だ。
その男は考えた。最近誰かに頭を下げただろうか??
いつも羽もないのに空中から人をみて、気づいたら、今みたいに足元に何も無かったと落下して気づく。そんな人生でいいんだろうか。
喧嘩はカッコいい。
でも、大人として、頭を下げるのはもっとカッコいい。
男は110番をした。
警察は丁寧に対処を手伝ってくれた。
110番は文字にすると、100の当たりの番である。
つまり、皆が使える、心強い味方なのである。
番長より、怖い人達よりも、何かあれば、100当番。勇気を出すのは、今じゃないか。