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「特訓」

 〜1年後〜

 来る日も来る日も来る日も来る日も特訓長スギィ!!


 「もうムリ!」


 汗にまみれ、疲れ果てたケイトが最後の力を振り絞ってそう叫び、その場に倒れ込んだ。


 「あ?」


 それを見たトレイはケイトを睨みつけた。


 「特訓長いよぉ…。しかも休憩が三日に一回ってなに?もうヤダよぉ……」


 「…それな。」


 ゼェゼェと荒い息遣いの中、ケイトは痛みを叫ぶ。あとからサイスも倒れ込み、便乗する。ケイトの不満は止まらない。


 「寝られてもお兄ちゃん夢に出てきて特訓させられるし。」


 「それな。」


 トレイの顔が曇る。


 「なんか美味しいものが食べたいなぁ〜。」


 「それな。」


 「っていうかお兄ちゃんが特訓してるとこ見たことないんだけど、特訓してるの?」


 「それな。」


 トレイの額に血管が浮き出る。こちらも我慢の限界だ。


 「今日という今日は許さねェ…」


 「ソレナ。」


 ケイトは「何が?」といったような表情でトレイを見つめる。サイスに関しては脳死である。その姿がトレイの堪忍袋の緒を切った。


 「テメェら…今日からばちこり叩き直してやる。覚悟しろ!!」


 トレイの怒髪天を見たサイスは冷や汗をかいた。が、恐れを知らぬケイトは不機嫌そうに、眉間に皺を寄せた。


 「人は叩いたらだめなんだよぉ〜??」


 「ケ、ケイトさん…」


 マズいと思ったサイスはケイトを止めに入るが、時すでに遅し。ケイトのその発言はトレイの堪忍袋の緒を微塵切りにした。


 「ウルセェッッ!!ごちゃごちゃ言ってる暇があんならさっさと走れッ!!」


 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」


 流石のケイトもその目に涙を浮かべ、逃げるようにドタバタと走り出した。


 「よし。」


 腕組みをし、仁王立ちのトレイの傍には、倒れ込むサイスだけが残された。トレイはサイスを睨んだ。


 「お前もやるんだよ。」


 「俺にはごちゃごちゃ言ってる暇はn…」


 「ごちゃごちゃ言ってる暇があんならさっさと走れ。」


 トレイはサイスに食い気味で突っ込んだ。そして一瞬の静寂が流れた。


 「クソがァァァっ!!スパルタは嫌いなんだよォ!スパルタはッッ!!!」


 「だったら言われる前にやれ!!」


 サイスが似つかわしくない大声を荒らげた。そしてまたしても一瞬の静寂が流れた。

 と、サイスは静かに立ち上がり、トレイの前で両腕を横に伸ばし、広げた。


 「なんでやらなきゃならない??

 俺はそもそも魔王になりたいとは言ってない。」


 「じゃあテメェ、なんのために特訓してんだ?」


 「俺ぁやらされてんだよ!バーーーーカ!!!」


 そう言うとサイスはトレイに背を向け、スタコラサッサと逃げ出した。「ムリなもんはムリだバーカ」と叫びながら…


 (問題児だなぁ…)


 すると丁度ケイトが折り返して戻ってきた。


 「お兄ちゃんって問題児だよね。」


 「身、削ぎ落とすぞ。」


 数秒後、泣き出しながら走り去る少女の姿があった…

 そして今度はサイスが折り返して戻ってきた。彼は猛スピードで逃げ出すケイトを見つめた。


 「アイツすげぇな!俺はムリだ!

 あいつだけ鍛えてやってくれ!!」


 数秒後、「バーカバーカ」と叫びながら走り去る少年の姿があった…

 そしてまたしてもケイトが折り返して戻ってきた。


 「サイスも頑張ってるしさぁ〜…

 そろそろ休憩にしない?」


 その日の特訓は、トレイにサイスがギリギリまで貯めた怒りをケイトが爆発させる形でいつまでも続き、彼らは本当にばちこり叩き直された…

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