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096 シャルルと美香

優斗たちはミゲルが作ってくれた料理を全て美味しく頂いた後に今日のレベル上げについて話し始めた。


「今日のレベル上げはどうだった」


優斗は初めて自分が魔物を殺した時の達成感を思い出していた。そして、叡智がいなかったら自分は直ぐに死んでいただろうと思った。


「美香はもっと魔物の血を見てオロオロすると思っていたよ。だけど、魔物を殺すのも死体を見るのも思っていたよりも平気だったな」


美香は魔物がスプラッターになって死ぬところを見たら吐くことがあるかもしれないと思っていた。でも案外平気なことに違和感を持っていた。美香は生き物である魔物を殺すことに罪悪感を持つだろうと思っていた。


「私はゴブリンを殺したことがあったから何も感じなかったわ。それよりも一日でレベルが20も上がったことの方が驚きだわ」


シャルルは両親の敵である魔物を殺すことに躊躇いはない。それよりも自分自身のレベルの上がり方を異常に思っていた。


この世界の普通の人ならレベルを20あげるのに1年はかかることもある。レベルが上がるほどレベルは上がりにくくなる。それだけ魔物を殺してレベルを上げることが難しいと言うことだ。直ぐに殺せるような同等のレベルの魔物を殺してもレベルはなかなか上がらない。


「美香が魔物を殺すのに罪悪感を持たないのは精神耐性のスキルのおかげだな。俺も初めて魔物を殺した時に罪悪感は無かった。死体を見ても何も思わなかったよ。今では人を殺すことも出来ると思う。それにレベルが直ぐに上がるのは格上の魔物を相手にして殺したからだね。獲得経験値増加のスキルのおかげでもあるよ。二人でレベルが10以上も上の魔物を200匹近くも殺しているんだからそれくらいのレベルは簡単に上がるよ」


シャルルと美香が容易くレベルを上げることが出来たのは格上の魔物ばかりを倒していたからだ。優斗はそのことに気づいているので二人に格上の魔物をあてがった。それでもシャルルと美香の二人は魔物を思いのほか簡単に倒していた。


「そうなんだね。私の感覚がおかしくなりそうよ。この話をしても誰にも信じてもらえないと思うわ」


シャルルは自分の常識が優斗には通じないと思った。それに格上の魔物に挑むような人はこのリアースにはいない。そういう挑戦をする者は必ず死んでいることだろう。それだけ危険を伴うレベル上げをシャルルと美香は行っているという訳だ。


「美香は何となくわかるような気がする。強い魔物を倒す方が沢山の経験値が得られるってことでしょ?」


「美香が言うとおりだよ。これからも格上の魔物を倒していくから物凄いスピードでレベル上げが出来ると思うよ」


シャルルは優斗の言っていることを理解した。確かに普通の人が自分よりレベルの高い魔物を一人で倒すことが出来ないと思った。優斗に出会っていくつもの常識が覆されていくのをシャルルは感じた。


そしてシャルルは村を出て優斗について行くと決めたことに間違いはなかったと思った。


「明日も朝から格上の魔物を相手にレベル上げをおこなうから今日は早く寝よう」


「えー。もう眠るの?」


「美香、この世界では太陽が昇る前に起きて太陽が沈んだら寝るのが普通なんだよ。城の中は魔道具で明るいけど普通の家庭ではそんな高級な魔道具はない。蝋燭なんかを使って明かりを得ているんだ。その蝋燭も高い物なんだぞ。俺たち地球の人は夜も自由に遊んだりできるけどこの世界では夜は寝ることが常識なんだよ」


美香は優斗の言っていることを理解した。


「でも、せっかくの異世界の初日なのにすぐ寝るのはもったいないとは思わないかな?」


美香は異世界でみんな揃った初めての日だから何か特別なことがあってもいいような気がしていた。でも優斗はそう言う事を求めてはいなかった。


シャルルは優斗が言っていることが当たり前のことなので美香の気持ちが分からない。


「美香、明日もレベル上げがあるから今日は早く寝たほうが良いぞ。明日の朝は日本と違って日の出とともに起きないといけないからな」


「そうなんだね。そうだ、今日はシャルル姉と一緒に寝るね。シャルル姉、良いでしょ」


「良いわよ。一緒に寝ましょう」


シャルルはずっと長いこと一人で暮らしていたので美香の申し出は嬉しかった。優斗は男なので一緒に寝ることは出来ない、でも美香は女性なので問題ない。


さっそく、美香とシャルルはシャルルの部屋に向かうことになった。美香は一度自分の部屋に戻って寝間着に着替えてシャルルの部屋に向かった。


優斗はハルを伴って自分の部屋に戻り眠たくなるまでタブレット端末で異世界物のラノベを楽しんだ。


美香はシャルルの部屋に着いた。シャルルが部屋に明かりを消してから入りベッドに二人で入る。そして二人は直ぐには眠らない。これからのレベル上げの話しや地球の食べ物についての話をして時間を過ごす。そして夜は更けていく。


シャルルは両親を亡くしてから初めて誰かと一緒に寝るのが楽しくてたまらない。美香との話しをすると時間がいくら有っても足りないと思った。そしてシャルルの知らないことの多くを美香から学んでいく。


シャルルは美香と一緒にベッドで眠ることを楽しいと思った。

美香もパジャマパーティーみたいで楽しく思った。


「シャルル姉は優斗お兄ちゃんのことをどう思っているの。本当に義弟と思っているの? 優斗お兄ちゃんみたいに素敵な男の人に会って何も感じないの?」


シャルルは美香の質問を聞いて「はっ!」とする。でも、そのことを態度に出さないようにした。


「優斗は義弟よ。それ以上でもそれ以下でもないわ」


「シャルル姉がそう言うなら信じることにする。良かった」


美香はシャルルの話を聞いて安心したように微笑みを見せる。


「何が『良かった』なの?」


「……うーん、内緒」


「そうかー、内緒なんだ」


シャルルは今まで優斗のことを素敵な男の子だなと思っていた。でも、シャルル自身が25歳の女性だったし見た目が良くなかったので優斗とは不釣り合いだと思っていた。


それに年齢的に年下の優斗を弟のように可愛がっていた。優斗のことを一人の男性として見たことはなかった。でも、美香の言葉を聞いてなんだか、胸の奥でモヤモヤしたものを感じてしまった。


それに、今のシャルルは美しい美少女になっている。そして、シャルルは自分に自信が持てるようになっている。歳も若返って今ではステータス上は優斗よりも一歳年下になっている。そのことを考えると優斗がかっこよく思えてきた。


そして、「今の自分ならもしかして……」そういう気持ちが僅かに浮かんでくる。


シャルルは頭を振るって今考えたことを頭から捨て去る様にする。そして「優斗は義弟だ」と自分に言い聞かせる。


「シャルル姉、どうしたの?」


「……なんだか眠くなって来たみたい。美香、もう寝ましょう」


「そうだね。いっぱい話したから夜も遅くなってきたしもう寝ようか?」


「おやすみ」


「おやすみなさい」


シャルルは眠ることで頭に浮かんだことを忘れようと思った。

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