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095 ダンジョンの城での初めての夕食

優斗はタブレット端末で電子版のラノベを読み始めた。しばらくすると料理が運ばれてきた。昼のように一品一品料理が執事のセルゲイによって運ばれてくる。


「今日の料理は日本の懐石料理でございます。先ずは先付でございます」


先ずは菜の花と言う辛子和え和え物が出てきた。


「和え物なんてあまり食べたことが無いよね」


「そうだな。母さんは和え物なんて作ったことが無いからな」


三人は料理の知識としては知っているが初めて食べる料理だった。


「菜の花の苦みが癖になる味だよね」


美香は菜の花の苦みが気になったようだ。


「独特な苦みがある味ね。山菜にもこの味みたいに苦いものがあったわ。私はこの味が好きになりそうだわ。今度、自分で作ってみたいわね」


「今度、食材として提供するよ」


三人は初めて食べる菜の花の辛子和えに満足した。そして、三人が食べ終わるタイミングで次の料理が運ばれてくる。


「次は小鉢でございます。桜湯葉豆腐に白身魚の焼き物になっております」


和食には料理に名前が無いようだ。セルゲイの言うように小鉢には桜の花の色がついたピンク色の豆腐に白身魚の焼き物が入っていた。これも三人は初めて食べる料理だった。その料理を食べて三人は舌鼓を打つ。


優斗とシャルルはいろいろな料理を作っていたが洋食がメインだった。食材が森のダンジョンの高級肉ばかりだったので肉料理ばかりだったのだ。豆腐もたまに食べるのも良いなと優斗は思った。そして、優斗は魚介類の食材も準備しておくんだったと後悔した。


「シャケや川魚の焼き物以外食べたことが無いけど、この魚の焼き物は美味しいわね。豆腐と言う食べ物も美味しいわ」


「今度からいろいろな魚料理が出るようになると思うから楽しみにしていてよ」


「美香も久しぶりの魚料理で嬉しいよ。それにこの桜色をした豆腐も美味しいね」


ソラには魚貝類をすでに渡してある。これからはダンジョンで得られた魚貝類がソラ特性のマジックバックの中に入ってくる。それがあれば魚貝類も食べられると優斗は思った。


「次はお椀ものになります」


お椀にえぞ鮑に若旬真丈、春子椎茸、花弁人参、木の芽が入っていた。どれも素材の味をしっかり残した味付けになっていて美味しいと優斗は思った。シャルルと美香も満足しているようだ。


「鮑なんて初めて食べたけど美味しいね」


「そうだな。高級食材だから家では食べられないものだからな。でも今度から家でも食べられるようになるぞ」


「本当!? それだと嬉しいな」


美香は家でも鮑が食べられると聞いて喜んでいる。


「次はお造りになります」


そう言いセルゲイは皿に盛られた刺身の盛り合わせを持って来た。シャルルは以前に寿司を食べたことがあるし地球の知識を得ているので生の魚を食べることに抵抗はない。刺身を見て美香は喜んだ。ここ最近肉料理ばかり家で食べていたので彼女は魚が食べたかったのだ。


「おいしー。お兄ちゃん、久しぶりの刺身は美味いね」


「そうだな、たまには刺身も良いな」


「私は生の魚を食べるのは二回目だけど、これは美味しいわ」


「魚だけじゃなくて日本では肉も生で食べたりするよ」


美香は馬や牛の刺身のことを言っている。シャルルはその事実を地球の知識で知ってはいるが肉を生で食べることにはまだ抵抗があった。


「肉も生で食べるんだね。でも、ちょっと怖い感じがするわ」


「シャルル姉大丈夫だよ。お兄ちゃん、今度は肉の刺身を食べてみようよ。ただの牛肉の刺身でも美味しいんだよ。キングミノタウルスの刺身なんてどんな味がするか楽しみだよ」


「そうだな、機会があったらコックにお願いしてみよう」


シャルルは優斗と美香の言葉に驚きあきれた顔をする。そして覚悟を決める。


「一応、楽しみにしているわ」


刺身を食べ終わるとセルゲイは煮物を持って来た。菜旬蒸しに芋黄味煮、蛸の柔らか煮、スナップエンドウが皿にのっている。見栄えも色とりどりで美味しそうに見える。これも優斗達が食べたことのない料理だった。


三人は料理を食べて絶賛する。どの煮物もとても美味しく出来ている。さすが料理Lv.10のコックが作っただけはあると優斗は思った。今度、自分で作るか和子にも作ってもらおうと考えた。


次に焼き物が出てきた。銀鱈の白酒焼に花弁百合根、帆立と春菊の木の芽和えだった。見た目も綺麗に見える。優斗は銀鱈の白酒焼の味を気に入った。


次に出てきたのは「替り」と言われるものだ。今までは魚がメインだったのに今回は肉が出てきた。キングミノタウルスの塩焼。ナスにアカパプリカ、ブロッコリーの炒め物もついていた。懐石料理に西洋の野菜が使われているのを不思議に思いながら優斗は食事を続けた。


「やっぱり、キングミノタウルスの肉は最高だな」


「塩だけの味付けでも美味しいわね」


「もう食べ飽きた味だよ。母さんはこの肉がお気に入りなんだよ」


「今度から魚料理も作る様に言っておくよ」


次にご飯が出てきた。ちりめんご飯だった。ご飯とおかずが一緒に出てくれば良いのにと美香と優斗は思った。


シャルルはご飯を食べる習慣は優斗と一緒に過ごしてからなので何も違和感は持たなかった。でも、ちりめんご飯はとても美味しいとおもった。


小吸が次に出された。野菜が少しお椀の中央に飾られてある様にある味噌汁だった。とても上品な味で優斗と美香はその味噌汁を気に入った。シャルルも美味しそうに食べている。


最期に水菓子が出された。苺蔵もち入りのプリンだった。優斗は最後のデザートは和菓子だと思っていたのですこし違和感を覚えた。


「なんで、懐石料理の最後がプリンなんだろうな」


「私は美味しいものが頂けるなら気にしないわ」


異世界生まれのシャルルには日本料理にプリンが出て来ても気にしなかった。初めて見る苺の餅入りのプリンに夢中になっている。でも、どうしても優斗と美香は納得がいかないような顔をしている。


コックは優斗が叡智からインストールされた知識を貰った異世界の知識を利用して料理をしている。なので、コック自身も懐石料理にプリンを出していることに違和感を持ってはいない。ちなみに、懐石料理では日常的にプリンやアイスにシャーベットというデザートが水菓子として出されている。


「美香も違和感があるよ。懐石料理って和食だよね。なんでデザートがプリンなんだろう?」


「美香もそう思うよな。なんでなんだろうな? 日本に帰ったらググって見るよ」


「美香も調べてみるよ」


三人は食事に満足して全て残さずに食べた。

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