094 シャルルまだ見ぬ日本を思う
美香はすっかり自分もコーディネートスキルを持っていることを忘れていた。と言うかスキルの数が多すぎて全てのスキルを美香もシャルルもまだ把握していなかったのだ。
「美香、俺はコーディネートのスキルを持っているんだぞ。美香も持っているだろう」
「そうだった。忘れていたよ。なら私の服も創造スキルで作ってよ」
美香は優斗と買い物に行ったときに急に優斗の服を選ぶセンスが良くなった時のことを思い出した。優斗がコーディネートのスキルを持っていることで納得する。そして、自分も優斗が作る服を欲しいと思った。
「それだと、さっきも言ったけど異世界で得たお金の使いどころが無くなるぞ。それに友達とかシャルルさんと店を回って買った方が楽しいと思うぞ。日本に行ったときにシャルルを服屋に連れて行くって約束していただろ」
「そうだね。友達と服を見に行くだけでも楽しいよ。お兄ちゃんの言う通り日本に帰ってから服を買うようにするよ。シャルル姉とも一緒に買い物に行くのが楽しみになってきたよ」
美香は服をただ欲しくて服屋を見て回っているわけではないことに気づいた。服を買う目的が無くても友達と一緒に服を選びながら見て回ることが楽しいのだ。
優斗が選んでくれる服が欲しいとは思うがそのせいで服を選びに行く楽しみが減ってはつまらないと考えた。なので、優斗に服を作ってもらうのは諦めた。でも、優斗自ら作った服を貰って嬉しそうにしているシャルルを見て羨ましく思った。
「私は優斗に貰った服に満足しているわ。でも自分で服を選んでみたいわ。美香、服屋に行って、こんな服を選ぶことが出来たらとても楽しいと思わない? 日本に行ったときは案内を宜しくね」
シャルルは優斗に素敵な服と靴を貰えて物凄く喜んだ。こういうことをしてもらうために優斗と同行することを選んだわけではない。でも優斗と一緒に村を出ることを選んでよかったと思った。
「シャルル姉、その時は美香に任せてよ。ここでお金を稼ぐことが出来るからお金の心配はいらないよね。高級ブランドのお店も回って見ようと思っているよ。いつもは買えない服を見られて買うことが出来るし、楽しいと思うよ」
シャルルが2百万以上も稼いでいると言うことは美香もそれくらいの金額を稼いでいると言うことだ。ただでさえロト7のお金が2億5千万円も持っている美香はお金の心配をすることが無いと思った。
「それは楽しみね。美香に任せるわ」
シャルルと美香は食堂の席に着いてそれから地球でどのように過ごすか話し合っている。
「服以外にも食べ物を食べに行くのも良いと思うよ」
「おいしいケーキとかもある?」
シャルルは優斗にケーキを食べさせてもらってからケーキの虜になっていた。それにチョコレートが好きだった。地球の知識を得てシャルルはまだ食べたことが無いお菓子が沢山あることに気づいている。なので、地球に行ったらいろいろな食べ物を食べに行きたいと思っていた。
「美味しいケーキ屋さんなんて沢山あるよ。ケーキが食べ放題のバイキングもあるから行ってみようか」
「それは、楽しみだわ。あのケーキが食べ放題なんて……」
ケーキの食べ放題と言う言葉にシャルルは敏感に反応した。リアースで今まで通りの生活をしていたらケーキなんて食べる機会は一生無かっただろう。優斗に出会えたことをシャルルは神に感謝した。
「楽しみにしていていいよ。日本に行ったら直ぐに夏休みに入るから。休みの間にいろいろなところに案内するよ」
「そうか、美香は学生だから学校と言うものに通っているのよね。私の世界では義務教育という制度が無いから学校がどういうところか優斗がくれた知識以外では分からないわ」
「学校は退屈でつまらないところだよ。できれば行きたくないところなんだよ。でも、友達に会えるから、そのことだけで学校に通っているようなものだよ」
シャルルは美香に友達がいると聞いて羨ましく思った。シャルルは村で腫物扱いされていて同じ年の友達がいなかったからだ。でも、優斗に会えて友達みたいになれたことが嬉しかった。美香にも会えたし今は楽しいのでそれで良いかと考えた。
「でも、もっと沢山の友達が欲しいな」
シャルルの囁きが美香に聞こえた。美香はレベルが上がって五感が鋭くなっていた。
「私の友達をシャルルさんに紹介するよ。買い物に行くときに私の友達も誘う?」
「うん、美香の友達を紹介して。友達と一緒に買い物に行くのも楽しそうだわ」
シャルルは美香が友達を紹介してくれると言うことを喜んだ。今のシャルルは美しく生まれ変わっている。シャルルは自分に自信が持てるようになっていた。今なら友達が出来ると考えていた。
「私の友達ならシャルル姉とも直ぐに仲良くなれると思うよ」
美香は北欧の美少女の様なシャルルを友達に自慢しようと考えていた。シャルルはそれほどの美少女だ自慢できると美香は思っていた。
「そうね、美香の友達との買い物も楽しみにしているわ」
「みんなで出かけたほうが楽しいと思うよ」
シャルルはまだ見ぬ日本に大いに期待していた。優斗から得た知識でデパートやアウトレットモールやショッピングセンターなどの知識も得ている。そう言うところに買い物に行けることを楽しみにしていた。
優斗に出会わなければあの小さな村だけで一生を終えていただろうと思うと今の自分がどれだけ幸せで恵まれているのかが分かる。とにかく日本にはこの世界に無いものが山ほどある。そして田舎の村ではあじわえなかったものも山ほどある。
どんどんシャルルの期待は膨らんでいく。そして美香と一緒に買い物に行くことを想像すると楽しくてたまらない。
「私もそう思うわ。美香、お願いだからいろいろなところに案内してね」
「わかったよ。シャルル姉の行きたいところはないの?」
「うーん、服屋と靴屋さんには行きたいでしょ。それに美香が言っていたケーキの食べ放題にも行ってみたいわ。それと優斗から得た日本の食べ物にも興味があるわ」
「例えばどういう食べ物に興味があるの?」
「そうねー。お好み焼きとかたこ焼きに焼きそばなんて興味があるわ。優斗はそういうジャンクフード的なものを私に作ってくれなかったのよ」
「ああ、そういうもの系が食べに行きたいんだね。分かったよ。美香の行きつけの店に案内してあげるよ」
美香はシャルルが庶民的な食べ物を食べたいと言う事を聞いて微笑ましく思った。そして早くシャルルと日本に行きたいと思った。
「へー、美香はそう言うお店の行きつけの場所があるのね。そういう環境に育った美香が羨ましいわ」
「シャルル姉が異世界でどういう生活をしていたか知らないけど、大体のことはお兄ちゃんから聞いて知っているつもりだよ。でもシャルル姉もこれからは日本に行けるし、ダンジョンでお金持ちになれるんだから、今までよりも良い暮らしが出来ると思うよ」
美香は異世界の文明レベルを優斗から聞いていた。中世のヨーロッパをイメージしたようなところだと聞いている。そして封建社会であり平民が虐げられていると優斗から聞いていた。しかもシャルルはその封建社会の底辺にいる田舎の村出身と聞いていた。
「そうね、そう考えたら、これからの人生を楽しもうと思えたわ。美香、ありがとう。私は過去を気にしないようにするわ。そして未来を楽しむことにする。早くレベル上げを終えて日本に行ってみたいな」
「そうだね。先ずはレベル上げを終わらすことが先決だね。お兄ちゃんは三カ月くらいはかかると言っていたよ」
「三カ月なんて直ぐに過ぎると思うわ。それまでの辛抱ね。でもこのダンジョンの城も住み心地がよさそうだと思わない?」
シャルルはRoomも住み心地は良いと思っていたがRoomは閉塞感があるが城は広くて開放感があってとても住み心地が良いと思っていた。村の自分の家とは比べ物にならないとシャルルは感じていた。
「美香もそう思ったよ。昨日一晩だけ泊まったんだけど専属のメイドさんはいるし料理も美味しいしベッドも高級感があるし眠りやすかったよ。それに部屋がとにかく広いんだよね」
「私も案内された部屋を見たけど広さに驚いたわ。それに部屋にトイレと風呂場もあるなんてすごいわよね」
「そうでしょー。シャルル姉、日本の美香の家よりもこの城の方が住み心地は良いと思うよ」
「そうなの? でもやっぱり日本には行きたいわ」
二人はそれから日本でどこに遊びに行こうかと話し合っていた。
優斗はその間にタブレット端末を亜空間倉庫から取り出すし異世界もののラノベを読んで時間をつぶしていた。




