092 シャルルと美香のレベル上げ④
二人は素早い動きをするウィンドウルフに手を焼いたがどうにか倒すことが出来た。そして少しは魔物を倒すことに自信が持てた。そして自動防御のありがたさを自分の身をもって理解した。
そして、優斗が緊張感を持てと言ったことも理解できた。ウィンドウルフに会うまでは美香はまだゲーム感覚が抜けていなかった。目の前に迫る魔物に恐怖して初めてこれが実戦だと理解した。
「二人ともどうだった? 格上の魔物の相手は面白かったか?」
「死ぬかと思ったわ。でも緊張感が増して楽しかったわ」
「美香も死ぬかと思った。車に跳ねられたらああいう感じで吹き飛ぶんだろうなと思ったよ。魔物ってバカにできないね。お兄ちゃんが言うようにダンジョンでは緊張感を持つようにするよ」
「分かってくれたらいいんだよ。これからはウィンドウルフのエリアだから二人とも気を引き締めて」
優斗は二人を気遣いながらウィンドウルフの遺体を亜空間倉庫にしまう。それが済むと二人に向かう。
「さあ、次の獲物のところに行くぞ」
「次もまかせてよ。今度はウィンドウルフに跳ねられないようにして見せるから」
「私も頑張るわ」
「美香もシャルルさんも頑張りは認めるけどレベルがウィンドウルフに近付かないと対応できないと思うよ。ウィンドウルフの俊敏力は異常だからね。いくらステータスが4倍になっていても難しいと思うよ。ただ、高速思考と多重思考と未来視のスキルをうまく使うことが出来ればウィンドウルフとのレベルの差があっても勝てるかもしれないけどね」
シャルルと美香は目を見開いた。優斗の忠告は今朝の魔法の練習の時のことを思い出させてくれた。
「その手があったかー!」
「私も今気づいたわ。優斗、先に教えてよね」
「だって二人とも余裕そうな顔をしていたし緊張感もないようだったから少しお灸をすえることにしたんだよ。でもスキルをうまく使いこなせるようになるにはそれなりの時間といろいろな戦闘経験が必要なんだよ」
二人は優斗の言うことがあっているのでなにも言えなくなった。ここまで緊張感に欠けていたことは事実だし、美香とシャルルは楽しい話で盛り上がっていたのも事実だ。二人はそのことを反省した。
そして、次こそは持っているスキルを使いこなして魔物を倒そうと決めた。いくらスキルを多く持っていても上手く使いこなさないと意味がないことに二人は気付いた。
「次の獲物のところに行きましょう」
「美香も次こそはうまく戦えるようにするよ」
「分かった。次の獲物のところに向かおう」
三人は次の獲物に向かう。そして、またウィンドウルフに2人は吹きとばされる。優斗は隠密を使っているのでウィンドウルフには見つからない。離れたところから二人の戦いを見ていた。
二人は何度か吹きとばされながらもどうにかウィンドウルフを倒すことが出来た。そして何度かウィンドウルフとの戦いをこなすうちに二人は徐々に多重思考と高速思考に未来視をうまく使えるようになってきた。
レベルも上がってウィンドウルフとの差が縮まってきたころようやくシャルルが向かってくるウィンドウルフにヘッドショットを決めることに成功した。美香はまだ成功していない。
それからシャルルはウィンドウルフの動きをスキル未来視で読み取りウィンドウルフが移動する先を読んでその場所に『アイスアロー』を飛ばす。その『アイスアロー』は明後日の方角に飛んでいくがそこにウィンドウルフが飛び込んできて頭を撃ち抜いた。
シャルルはウィンドウルフが通る道筋をスキル未来視で読み取ることに成功したのだ。シャルルは大いに喜んだが美香は悔しがった。
「シャルル姉、凄い。でも先を越されて悔しいよ」
「美香も練習すれば出来るようになるわ」
「美香も頑張ってみるよ」
「そうね。そのいきよ」
「さあ、次の場所に移るぞ」
そして次の獲物であるウィンドウルフの群れを発見した。数は6匹もいる。森の中心に近づくにつれてウィンドウルフの群れの数が多くなっていく。そしてシャルルはスキル未来視でウィンドウルフがやってくる方向に『ロックニードル』を放つ。
その『ロックニードル』は寸分たがわぬ正確さでウィンドウルフの頭を貫いた。その光景を見て美香は自分もとやる気を出す。そしてスキル未来視と高速思考に多重思考を利用してウィンドウルフのだどる道筋を予測する。
そして『アイスアロー』を放つ。それは魔物のいない方向だったがそこにウィンドウルフが現れてその頭を『アイスアロー』が貫いた。それを見た美香は大いに喜んだ。でも、まだウィンドウルフはいる。
美香は最後まで緊張感を切らさないように気持ちを引き締める。そしてまた同じ様にスキルを使いこなしてウィンドウルフを仕留める。もう美香はスキルを使いこなすことを覚えていた。
それから三度ウィンドウルフと戦闘して最後に美香もスキルを利用してウィンドウルフの頭を撃ち抜くことに成功していた。もう今日教えることはないと優斗は思った。
「そろそろ、城に戻ろう」
「そうね。陽が傾いてきているわね」
「残念、折角調子が出てきたところなのになー」
美香は最後の方でスキルを使いこなせるようになっていたのでがっかりした顔をする。それくらいスキルを使いこなすことに満足感を覚えていた。ただ魔法を放つだけでなく、未来を予想することに魔物を狩る醍醐味みたいなものを感じていた。
だから優斗が城に帰ると言ったことに少しだけ不満だった。それでも優斗の考えは変わらなかった。
「美香、今日は諦めろ。もう十分にスキルを使いこなせているだろ」
「まあ、そうなんだけどね。やっと楽しく思えてきたところなんだよね」
「私も楽しくてしょうがないわ」
「また明日もレベル上げはある。今日で終わりじゃないんだぞ」
シャルルと美香はレベル上げが今日一日で終わらないと改めて思った。
「お兄ちゃん、わかったよ。帰ろう」
「じゃあ、美香が転移してくれ。城の食堂でいいだろう」
「了解、転移」
美香がそう唱えると次の瞬間に三人は城の食堂にいた。優斗が念話でハル達に今から食堂に帰ると伝えてあったのでそこには、ハル、ナツにアキが待っていた。
「これからお風呂に入って食堂に集合な。2時間後で良いか?」
「それくらいで良いよ」
「ゆっくりお風呂に入れるわね。その時間でいいわ」
「じゃあ、解散」
優斗の号令で三人はメイドたちに連れられてそれぞれの部屋に向かった。




