086 シャルルと美香の出会い
メイドを連れてくるその少女を見て綺麗な少女だなと思った。シャルルは村から出たことが無い。それでも誰よりもその少女が綺麗だと思った。
「お兄ちゃん、遅れてごめん」
「美香、お客様を待たせるなんていけない子だな」
その美少女は優斗のことを「お兄ちゃん」と呼んだ。それでシャルルはその子が優斗の妹だと認識した。そしてシャルルはその少女をよく見る。しかし、優斗にはあまり似ていない。
優斗は自分で顔を作り替えているので遺伝子的にもう前の優斗とは全く違う人間になっていた。だから美香とは遺伝的なつながりが無い。その為に美香と優斗はあまり似ていないのだ。
「美香ちゃんていうんだよね。私はシャルルって言うんだよ。今日からよろしくね」
美香はシャルルを見て驚く。そして優斗の腕にしがみついて優斗の腕に自分の腕を絡める。優斗は美香の突然の行動に戸惑う。
「どうしたんだ? 美香、離れてくれ。それとシャルルさんに挨拶をしろ。失礼だぞ」
「お兄ちゃん、話しが違う。シャルルさんは25歳の女性と言っていたじゃない。彼女はどう見ても私と同じ年くらいじゃないの。それに物凄く美少女だし……。どうして25歳なのにこんなに若いの? 異世界の人はみんな二十歳を過ぎても少女の様な容姿なの?」
美香は何故か分からないがシャルルを警戒しているように優斗には見えた。そして美香は優斗を問い詰める。
優斗は立て続けに質問ばかりしてくる美香に戸惑っていた。美香は普段とても冷静でいるような娘だった。ここまで取り乱すようなことは一度もなかった。過去に優斗が醜い時は『私の前から消えて』とか言っていたが、その時でさえ冷静な態度だった。
「なんでそんなことを言うんだ。美香、シャルルさんが若いのを気にするな」
「どうしてそう言うことを言うのよ。話が違うじゃない。お兄ちゃん」
優斗は美香を無視することに決めた。美香は興奮していて今は話が出来る状態じゃない。
「シャルルさんごめんなさい。美香は良い奴なんですが今日はちょっとおかしいんですよ。美香、シャルルさんに若返りの薬を使ったと言っただろう。シャルルさんはその薬で若返ったんだよ」
「美香ちゃん、私はシャルルって言うのよ。これからは一緒にレベル上げをすると聞いているわ。仲良くしてくれると嬉しいわ」
「お兄ちゃん、シャルルさんとはどういう関係なの?」
美香はシャルルの挨拶を無視して優斗を問い詰める。美香には何よりもそのことが重要だった。
「シャルルさんに失礼だぞ。ちゃんと挨拶をしてくれ。それとシャルルさんは義姉のような存在だ。シャルルさんも俺のことは義弟と思っているんだ。俺たちは家族みたいなものだよ」
「ふーん、そうなんだ」
美香はシャルルのことを義姉という優斗の言葉に嘘が無いか優斗の目を見て確認する。そしてスキル心眼で優斗の言っていることに嘘が無いことが分かった。そして美香は安心した表情を見せる。そして優斗から離れる。
優斗には美香が何を考えているのかさっぱり分からない。でも美香が優斗から離れたことで安心する。
「シャルルさん、さっきは失礼しました。私は優斗の妹で美香と言います。これから宜しくお願いします」
「許すわ。美香ちゃんも私のことは義姉と思ってくれていいわよ。優斗も私のことを義姉と思っているようだからね」
美香はスキル心眼でシャルルの言っていることに嘘は無いと分かり安心する。そして美香も兄妹が兄一人だけだったので姉が欲しいと昔から思っていた。それでシャルルの提案を受け入れることにした。
「分かりました。シャルルさん。私の義姉になって下さい。いろいろ相談にも乗って下さい。これから宜しくお願いします」
「私こそよろしくね。美香ちゃん」
優斗は二人の会話を聞き安心した。一時はどうなるかと思ったが杞憂だったようだ。
「美香も素直になって良かった、これからは初めてあった人に失礼な態度をとるんじゃないぞ。さっきの美香の態度はいただけないものだったぞ」
「ごめんなさい。お兄ちゃん、反省しているからあまり責めないで」
シャルルは二人がフランクに話しているのに気付いて自分だけ敬語を使われているのを面白く思わなかった。優斗は義姉とシャルルのことを思っていると言いながらいつも敬語で話をしていた。
シャルルはもっと優斗に普通に接してほしいと思った。これからは優斗と共にいる時間は増えると思っている。そんな優斗ともっと親密な関係になりたいと考えた。
「優斗、美香ちゃんと話しているときは話し方が変わるのね。とてもフランクな話し方をしているから仲良く見えるわ。私にもそう言う話し方をしてほしいわ。私だけ他人のようで寂しいもの」
「分かったよ。シャルルさんとも普通に話すようにするよ。こんな話し方でもいいかな?」
「それで良いわ。これからはそう言う喋り方をしなさい。美香ちゃんも優斗に話しているような話し方で私に接してほしいわ」
「分かったよ。シャルル姉。これからはこういう喋り方にするね」
シャルルは二人と仲良くなれたような感じがして嬉しかった。
「嬉しいわ。その喋り方で良いわ。それにシャルル姉って呼び方が気に入ったわ。その呼び方で私を呼んでね」
「うん、これからはそうするよ。シャルル姉も、美香ちゃんではなくて美香って呼び捨てにしてほしいな。もう子供じゃないからちゃんづけは恥ずかしいよ」
美香はいまさら『ちゃん』と言われるのに抵抗があった。家族でも美香と呼び捨てにしているのだから『ちゃん』付けには慣れていなかった。
「分かったわ。これからは美香って呼ぶようにするわ。そして優斗と同じように美香も私のことは義姉と思ってね。私も美香のことは義妹と思うことにするから」
美香はシャルルが義姉になることを嬉しく思った。そしていつか二人で日本に行って買い物をしたいと考えた。
「ねえ、お兄ちゃん、シャルル姉を日本に連れて行くことは出来るの?」
「シャルルさんなら日本に連れて行っても大丈夫だと思うぞ。俺はシャルルさんを信用しているからな。それに俺とシャルルさんは魔法契約をしているし。シャルルさんは俺が秘密にしてほしいと言ったことを他人に話すことが出来ないんだ。シャルルさん、美香が異世界人と言うことは秘密にして下さいね」
優斗はシャルルが日本に行っても大丈夫なように祈里にシャルルとミミックスライムの国籍の取得を依頼している。次に会うときにその答えが聞ける手筈になっている。だからシャルルが日本に行くことを何も心配はしていない。
「分かったわ。義妹の秘密を他の人に話すことは無いわよ。安心していいわ」
「それは良かったです。レベル上げを終わったらシャルルさんを俺の故郷に連れて行ってあげますよ。楽しみにしておいてください」
「それは楽しみね」
シャルルはまだ見たことが無い優斗の故郷に行けると聞いて嬉しく思った。自分の住むリアースとどう違うのか優斗が与えた知識では知っていても実際に自分の目で見て見たいと思っていたのだ。その機会が訪れることに胸を弾ませる。
「シャルル姉、私の故郷に行ったら一緒に買い物に行こうね」
「楽しみにしているわ。美香、案内は宜しくね」
「うん、任せて。シャルル姉に可愛い服を選んであげる」
「シャルルさん、美香。そろそろレベル上げに行こう。その前に城の前の湖に行って魔法の練習をしようと思うんだけど、それでいいかな?」
「そうね。そろそろ行こうか」
「魔法を使うのが楽しみー。早く行こうよ」
美香とシャルルはまだ魔法を使ったことが無い。それで魔法を使うことが楽しみで仕方がなかった。美香は優斗の腕を引いて城の外に向かう。シャルルもそれについていく。




