085 シャルルをダンジョンへ連れてきた
優斗とシャルルは村を出て森の方向に向かって歩き出した。そして門番をしているガンズの姿が確認できなくなったところまで辿り着いた。優斗はシャルルを呼び止める。
「シャルルさん、そろそろ村から俺たちは見えないと思います。変身を解いても大丈夫ですよ」
シャルルはダンテス達に別れの挨拶をしに行くにあたり変身で前の姿に戻っていた。
「そ、そうね。やっぱりこの姿にはもうなりたくないわ。惨めな思いをするのはもうこりごりよ。本当は最後に私の生まれ変わった姿を村の人たちに見せ付けてやりたかったわ」
シャルルはそう言い変身を解いた。変身を解いたシャルルは北欧の美少女の様な容姿をしている。美しい銀色の髪が風で漂う。銀色の瞳は魅惑的に見える。
「シャルルさんのその気持ちは分かりますよ。生まれ変わった自分の姿を見せつけて、『よくも今まで蔑ろにしてくれたな』とか言いたいんですよね」
「そうよ、そして村の人たちに今の私を自慢したかったのよ」
「俺も最後はシャルルさんにそうさせてやりたかったですが、いきなり姿が変わったシャルルさんを見たら村の人たちが、変にかんぐるといけないですからね。今はその気持ちを抑えて下さい」
優斗も過去に自分が太っていた時のことを思い出す。そして虐めてきた者たちや、その虐めを黙認していた者たちに今の自分の姿を見せつけてやりたいと何度も思った。だが優斗は高校を辞めることを選んでしまった。もう、そういう人たちに今の優斗の姿を見せつけることは出来ない。
「それでも、まあ、いつか今の姿を村人に見せてやるわ。そして今まで散々私のことをブスとか言って馬鹿にしてきた者たちを罵ってやるわ」
「その意気ですよ。シャルルさん、その時には変身の魔法の薬を手に入れたとか言って誤魔化せばいいですよ。そして、生まれ変わったシャルルさんを見せつけてやりましょう。でも、今はその姿を村人たちに見せたら大事になってしまいますよ」
「だから変身は解かなかったんじゃない。残念だわ」
「シャルルさん、そろそろ転移して俺の住んでいるところに行きますよ」
優斗は早速転移してシャルルをダンジョンの城に連れて行くことにした。そうすれば少しは気がまぎれると思っていた。それくらいダンジョンの城のインパクトは強いものだと優斗は思っている。昨日美香が驚いていたのがいい例だ。
「転移で行くんだね。お願いするわ」
「それじゃあ、行きますよ。転移」
優斗は昼間と言うこともあり敢えて城の中ではなくて湖の畔に転移した。そこからは広い湖が見渡せて城も一望できる。
シャルルは浮遊感に襲われて次の瞬間には目の前に湖が見えた。シャルルは今まで湖を見たことが無かった。物凄く広い湖を見て興奮する。
「優斗、この水が溜まっていてすごく広いのはなんて言うの? すごく綺麗なんだけど……」
「これは湖って言うんですよ」
「これが湖って言うんだ。綺麗な水だね」
シャルルは井戸の水か水たまりしか見たことが無いので湖を見てまず水が綺麗に透き通っていることに驚いた。知識では湖や海のことは知ってはいたが湖がこんなに大きく広いものだとは思っていなかった。
そして振り返り森の中に建っている城を見てまた驚く。シャルルは城という建物も見たことはない。でもその大きさに驚いた。村で一番大きな家である村長の家の何十倍もの大きさだ。しかも四階建てなので高さもすごい。
「あれが優斗の住んでいるところなの?」
「そうですよ。ダンジョンコアのソラに作ってもらったお城です。どうですか? 素敵でしょう」
「あれが城という建物なんだね。物凄く素敵だと思うよ。優斗に貰った地球の知識にあるビルというものとはまた違った建物なのね」
「そうですね。あれはビルとは違います。あの建物は国の王様が住むような建物ですよ。それじゃあ、城の中に案内しますね」
シャルルは優斗の後についていく。そして外壁の門を超えてそこから城まで続く庭園の美しさに目を奪われる。ここはダンジョンなので季節に関係なく色とりどりの花が咲いていた。シャルルが今までに見たことが無い花でいっぱいだった。
「綺麗なところだね」
「俺もそう思います。庭を世話している者がいますので詳しいことが知りたいならその者に尋ねて下さい」
シャルルは庭を世話している人に会って花の名前を聞き出そうと思った。季節に関係なくダンジョンの植物は常に花を咲かせたり実をつけたりしている。とにかく理屈ではないのだ。ダンジョンとはそういうところなのだ。
優斗は庭に目を奪われて立ち止まっているシャルルに歩くように言う。そして念話でミミックスライム達とソラに優斗が帰ってきたことを伝えてロビーで待つように伝えた。
「シャルルさん、行きますよ。城の中で使用人たちが待っています」
「ごめん、こんなに綺麗な花々を見たことが無かったから感動した。物凄く綺麗な場所だね。気に入ったわ」
「それなら良かったです。さあ、行きましょう」
優斗はシャルルを連れて城に向かう。そして城の中に入って行く。シャルルは城の中に入ってその広さに驚く。入ってすぐあるロビーは村長の家が入る以上の広さがあった。そして壁に飾られている絵を見て感動する。
ロビーを見渡すといろいろな装飾品が置かれている。それがどれも価値のある物だとシャルルには分かった。そのロビーにはメイド服を着た少女や執事服を着た男性にコックの格好をした男性もいる。
シャルルはメイド服や執事服などを見たことが無いのでただ「綺麗な服を着ている人たちだなー」としか思わなかった。
「「「「「優斗様、お帰りなさいませ」」」」」
メイド服や執事服を着た人たちが一斉に優斗に挨拶をしてお辞儀をする。その光景を見てシャルルは驚く。今日は驚いてばかりだなとシャルルは思った。
「シャルルさん、この人たちが城で働いている使用人たちです。ソラこちらはシャルルさんていって俺が世話になっていた人だ。全員に攻撃しないように通達してくれ」
「分かりました。優斗様、城で働いている全員にシャルル様のことは伝えます」
シャルルは目の前にいる全員が優斗の使用人だと言うことに唖然とする。
「シャルルさん。彼女がダンジョンコアのソラと言います。困ったことがあれば彼女に言ってください。それ以外のメイドや執事に頼みごとがあればいつでも申し付けて下さい」
「シャルルと言います。ソラさん、宜しくお願いします」
シャルルは急に畏まった態度をとる。シャルルはてんぱっていた。自分より綺麗な服を着ている人たちを見て全員教養があって頭がいい人たちだと思って委縮してしまっていた。
「シャルルさん、そう畏まらなくても良いですよ。アキ、こっちに来て」
「はい、優斗様」
優斗に呼ばれてメイド服を着た少女が優斗とシャルルの方に歩み寄る。
「シャルルさん、彼女の名前はアキと言います。今日からこの城でシャルルさんの世話をすることになるメイドです。アキはシャルルさんのお世話をお願いするよ」
「畏まりました。シャルル様、宜しくお願いします」
「私こそよろしくお願いします」
「シャルルさん、いつもの話し方で大丈夫ですよ。彼女は使用人です。丁寧な言葉は必要ありません」
「そう言われてもなー」
シャルルは綺麗な服を着ていると言うだけで気になってしまう。どうしても言葉が丁寧になってしまうのだ。こればかりは田舎で生まれた村人の処世術である。すぐに対応を変えるのは難しいとシャルルは思う。
でも優斗が使用人たちに普通に話しているのを見て。「それでもいいのかなー」と思うようになった。シャルルがそう思っているときにメイドを連れた少女がロビーに現れた。




