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083 シャルルに真実を話す。①

Roomに着いた優斗は直ぐにベッドに入って眠りについた。次の日は何時もより早く目が覚めた。部屋を出るとシャルルも朝早く起きたみたいですでにリビングでコーヒー牛乳を飲みながら寛いでいた。


まだ、朝食を準備する時間には早いのと思っていた。それなのにシャルルが部屋から出てきた。『いつもならぐっすり寝ている時間なのに』なと優斗は思った。


「シャルルさん、おはようございます」


「優斗、おはよう」


「少し待っていてください。直ぐに朝ごはんを準備しますね」


「慌てなくても良いわ。私が寝付けなくて早く起きただけだから気にしないで……」


シャルルは村を出るのは初めてのことだ。緊張しているのだろう。しっかりと眠ることが出来なかったようだ。いつもならフカフカのベッドの布団にくるまれてなかなか起きてこないのに今日は優斗よりも早く起きているのがその証拠だった。


優斗は顔を洗い朝ごはんの支度をする。今日は日本食を準備する。シャケの切り身に卵焼きにわかめの味噌汁と作った。よく優斗の家で和子が作る朝食と同じものだ。それに納豆が加わるがシャルルが納豆の匂いを嫌うので納豆は出していない。


それから二人で朝食を食べる。いつもながら美味しくできたと優斗は思った。日本で二週間余り過ごしていていっさい料理を作っていなかったが料理の腕は落ちていないようだった。


ダンテスさんたちに作った料理は寿司を握ったのと天ぷらを揚げただけだったので料理らしい料理は久しぶりだった。シャルルも優斗の料理に満足しているようだ。


「優斗、今日からレベルを上げに行くんだよね」


「そうですね。今日からレベル上げを行います。そのつもりで支度をして下さい」


シャルルはそう言い覚悟を決める。レベル上げを行うと言う事は魔物と戦うと言う事だ。そのためには覚悟が必要だ。いくら優斗がくれた腕輪の自動防御があると言っても魔物は怖い。


「分かったわ。剣も装備していくようにするわ」


「始めは魔法で戦った方が良いと思います。すぐにオークのところに行きますから剣は亜空間倉庫(インベントリ)にしまっておいてください」


シャルルは優斗の言葉に驚く。オークなんてこの村でも門番をしているガンズくらいなものだ。いくら危なく成ったら優斗が助けてくれると言っても危険だと思った。今のシャルルはゴブリンと戦うことで精一杯の状態なのだ。


いきなりオークと戦うと言われても正直困るのがシャルルの思いだった。それでも優斗の顔は自信に満ち溢れている。本当に優斗はシャルルをオークと戦わせるつもりでいるとシャルルは思った。


「それは、危険じゃないかな?」


「大丈夫ですよ。その腕輪が自動防御で守ってくれますから。それにシャルルさんの全ての属性魔法のレベルは10です。魔力10万の腕輪もありますからそれだけでもシャルルさんはB級の冒険者の魔法使いよりも強いことになりますよ。安心してオークに魔法をぶっ放せばいいんですよ。途中で魔法の練習もしてみましょう」


「ぶっつけ本番じゃなければ大丈夫だと思うけど、心配だわ。確かに魔法の知識はあるけど魔法を使ったことが無いからかもしれないけど……」


「大丈夫ですよ。その知識とスキルさえあればオークなんて魔法一発で狩ることが出来ますよ」


「そう簡単に言わないでよ。オークんてこの村ではガンズくらいしか倒すことが出来ない魔物なのよ」


「大丈夫ですって。危ない時は腕輪の自動防御が何とかしてくれますよ。それに俺がついています」


「本当に大丈夫なのかなー」


シャルルが優斗からスキルと魔法の知識を貰ってから一日しか経っていない。不安に思うのも当然だ。優斗はその間に日本で1週間とちょっとくらい過ごしているのでシャルルと時間的な感覚が違っていた。でも優斗にはシャルルがオークごときに後れを取るようなことが無いと確信している。


優斗自身もただの高校生だったのにウィンドウルフやオークとこの異世界に来た初日に戦ったのだ。ゴブリンと戦闘を経験しているシャルルよりも不利な状況だった。それでもウィンドウルフやオークを倒すことが出来た。


同じことをシャルルが出来ない訳が無いと優斗は思っていた。でも、シャルルは優斗がそういう経験をしていることなんて知らない。シャルルは優斗が初めから強い少年だと思っていた。出会った時には数匹のゴブリンをあっという間に倒していたからだ。


そういうところがシャルルと優斗の考えに誤差を生んでいた。


「シャルルさん、村を出る前に話しておきたいことがあります。どうか怒らないで聞いてください」


「なんだい? 改まってするような話なの?」


「はい、俺はシャルルさんに嘘をついていました。まず、そのことを謝ります。ごめんなさい」


「えっ!? どんな嘘か分からないうちに謝られてもどう答えて良いか分からないわよ」


シャルルは本当は優斗が嘘を言っていることは薄々感じていた。


「俺は転移の魔法の事故で魔の森に来たと言いましたよね。それが嘘なんです」


「なんだ。そんなことなの? そのことについては私も優斗が嘘をついているんじゃないかと思っていたわよ」


「えっ!? そうなんですか?」


優斗は驚いたような顔をして大声をあげてしまう。まさかシャルルに転移の事故でこの村の近くに来ていたことが嘘だとばれているとは思ってもいなかった。


「あたりまえでしょう。優斗は私と魔の森に行くときに転移の魔法を使っていたじゃないの?」


「あっ! なるほど」


そこでようやく優斗は自分が冒していたミスに気が付いた。


「優斗は何処か抜けているところがあるわよね。転移の魔法の事故で魔の森に来た優斗が転移の魔法を使っているのよ。普通の人なら転移の魔法が使えるのならその魔法で元居た場所に戻れると言うことを思いつくわ。それなのに優斗はいかにも帰ることが出来ないと言うような嘘をついて私の家に厄介になっていたでしょう」


優斗はシャルルの言ったことを当然だと思った。転移の魔法で魔の森に行くのが楽だと思い使っていたことがあだになっていた。シャルルは全てお見通しだったのだ。急に優斗は恥ずかしくなった。


「シャルルさんの推理はあっています。俺は自分の故郷に帰ることが出来ます。でも俺の故郷はこの世界には無いのです。そう言えばこの世界は何という名前ですか?」


シャルルは考えていた答えの斜め上を行く優斗の返答に目を白黒させる。こことは違う世界とはどういう事だろうと考える。でも、ただの村人の知識にこことは違う世界などと言うような発想が思いつかない。


「この世界と言うのは私たちが今住んでいる世界のことなの?」


「そうです。その世界の名前を教えて下さい」


「私たちが住んでいる世界はリアースというわ。創造神エルケリオン様が作った世界だと言われているの。教会もエルケリオン様を主神にして祀っているわよ」


創造神エルケリオンという神がニーベルリングを優斗に渡した神なのかは優斗には分からない。でも神様がいると言うことはニーベルリングを貰った時に会っているので存在は認めている。いつか、教会に行って祈りを捧げようと優斗は思った。


「リアースと言うのですね。俺の住んでいた故郷は地球と言います。俺の生まれた国は日本と言う国です。魔法が無い世界ですが科学という学問が発達していてこの世界よりも住みやすい世界です。いままで黙っていてすみませんでした」


優斗は今までシャルルに嘘をついていたことを謝った。シャルルは優斗が嘘をついていたことは知っていたが優斗がリアース以外の世界から来たと言うことまでは想像していなかった。


「優斗はリアースの生まれじゃなくリアースとは異なる世界から来たってことなの?」


「はい、そうなります。ですので、俺はこの世界のことは何も知らないのです」


シャルルは異世界と言われてもパッと思いつくことが出来ない。それだけの教養がシャルルには無かった。

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