081 美香を異世界に招待する。
ダンテスたちが帰った後、シャルルと優斗は明日、村を出て行くことについて話し合いを持った。
「シャルルさん、明日の朝には村を出て行きますが準備は出来ていますか?」
「準備は問題ないわ。亜空間倉庫に全てしまってあるから直ぐにでも出かけることが出来るよ」
シャルルは優斗に貰ったスキルを使うのが楽しくてRoom内にある全ての物を亜空間倉庫に仕舞って楽しんでいた。そして家にある自分の持ち物も亜空間倉庫にすべて仕舞っていた。
なので、いつでも村を出る準備は整っていた。
「そうですか、それなら良かったです。それと明日からレベル上げを行うのでそのつもりで支度をお願いします」
「直ぐにレベル上げを行うんだね」
シャルルは直ぐにレベル上げを行うとは思ってもいなかった。旅に出ると優斗が言うからしばらくは旅を続けるものだと考えていた。しかし、優斗の考えは違ったようだ。
「旅には危険がつきものです。シャルルさん、には自分の身は自分で守れるくらい強くなってもらいます。自動防御で守られていますが反撃が出来るようにしておきたいのです」
「分かったわ。レベル上げが直ぐに行えるように準備するわ」
シャルルは自分が両親のように魔物に殺されない様に強くなることを望んでいた。そしてその願いを優斗が叶えるという。そればかりか虐げられて過ごしてきた村からも連れ出してくれる。そんな優斗にとても感謝していた。
「今日は、もう遅いので風呂に入って寝ましょう。シャルルさんから風呂に入っていいですよ」
「それじゃあ、ありがたく先に風呂を入らせてもらうわ」
シャルルは亜空間倉庫に着替えやタオルなどを仕舞っているのでそのままお風呂場に向かう。優斗はその間にコーヒーを準備してリビングで寛ぐ。二人とも風呂に入った後は明日村を出て行くので早めに寝ることになった。
優斗は自分の部屋に入るとダンジョンの城の自分の部屋に転移した。そして異世界のドアを出して日本に戻る。そして自分の部屋に出ると直ぐに美香の部屋に向かう。そしてドアをノックする。
コンコンコン。
「はい、入ってきても良いよ」
優斗は美香の返事を聞いて彼女の部屋の中に入る。美香はジャージを着て待っていた。異世界について話をした時に優斗は金曜日の夜に異世界に連れて行ってレベル上げを行うから汚れても良い服を着て待っておくように美香に言っておいたのだ。
美香は優斗の忠告に従って中学校のジャージを着て待っていた。美香が持っている服で汚れても良いような服は中学のジャージぐらいだ。
「美香、支度は出来ているか?」
「うん、着替えなんかは亜空間倉庫にしまってあるから大丈夫だよ。三カ月分のおやつも買い込んでいるから準備は万端だよ。直ぐにでも異世界に行けるよ」
「おやつを三カ月分も買ったのか? それくらい俺が準備できたのに……」
「今頃言われても遅いよ。もう買ってきたんだから」
「しょうがないなー。じゃあ異世界に行くぞ俺の部屋に来てくれ」
「うん、分かった」
美香はそう言い優斗の後についていって彼の部屋に入った。そこには禍々しい雰囲気の両開きのドアが鎮座していた。美香はそのドアを見て驚きを見せる。それくらい見た目が異様なドアだった。
「このドアで異世界に行くの?」
「そうだぞ」
「なんだか地獄にでも行きそうな雰囲気なんですけど……」
「大丈夫だ。ちゃんと異世界に行けるよ」
優斗はそう言いドアを開けて美香を導いて異世界に足を踏み入れる。美香は優斗に導かれるままドアの中に入って行く。そしてドアを出て美香は驚いた顔をする。そこはとても広い部屋だった。
そして部屋の装飾品はどれも洗練されていて高級ホテルのとても広い部屋を連想させる。いいや高級ホテルよりも広い部屋だと美香は思った。
「お兄ちゃん、異世界では、こんな素敵な部屋に住んでいたの?」
「それは、違うぞ。この部屋はダンジョンを制覇した時にダンジョンコアのソラに作ってもらった城にある俺の部屋だ。でも、この部屋で生活したことはない。今日からはこの城を拠点にしてレベル上げを行っていく予定だ。美香の部屋に案内してやろう。その前に城の皆に紹介しないといけないな」
ここはダンジョンの中だ。優斗はダンジョンマスターだから襲われないが美香はただの人間として襲われる可能性がある。そのためソラやミミックスライムたちに紹介しておく必要があった。
「ここは前に話していたダンジョンの中の城なんだね。こんなに凄い作りの部屋だとは思っていなかったよ。外から城の様子も見てみたい」
美香は優斗の城の部屋が見たこともないほど豪華な作りで装飾品も高そうなものばかりで揃えられていることに感動していた。そしてこの城がどういう建物か興味を持った。
「いいぞ、一階に行こう。そこで城で働いているミミックスライム達とダンジョンコアのソラを紹介するよ」
優斗はスキル創造で念話というスキルを作り出した。そしてソラと城で働いているミミックスライム達に一階のロビーに集まるように連絡をした。ついでに美香に念話Lv.10を与えておく。
優斗と美香は城の一階にあるロビーに向かった。そこには五人のメイドと二人の執事にコックの格好をした男性が三人に作業服のような服を着た五人のミミックスライムとソラがいた。
優斗は特に世話になるメイドのミミックスライムにはハル、ナツ、アキ、フユ、シグレと言いう名前を与えていた。執事の二人にはジャック、セルゲイという名前を与えていた。コックの代表にはミゲルという名前を庭師と厩を任せてある者にはダンという名前を与えていた。
そして美香にミミックスライムたちを紹介した後にミミックスライム達には美香が優斗の妹なので手出しはしないように言い含める。そしてハルは優斗の世話係をお願いしてナツには美香の世話係をお願いした。
「ソラ、エンブリオの実を渡してくれるか?」
後二つしかないエンブリオの実を優斗はソラに要求する。
「優斗様、あと二つしかないですがお使いになられるのですか?」
「ああ、妹に使おうと思っている」
「そうですか。優斗様の判断にお任せします。私が所持している全てのものは優斗様のものですから」
ソラはそう言ってエンブリオの実を優斗に渡した。
「それと、ソラは念話が使えるか?」
「使えますよ」
「ミミックスライム達も念話が使えるようにしておいてくれ」
「分かりました。そのようにしておきます」
優斗はエンブリオの実を持って美香のところに行く。美香は豪華絢爛なロビーの様子に目を輝かせて見ていた。どこの金持ちの家に行っても見られない光景だろう。ここはれっきとした城なのだから。
「お兄ちゃんは王様になったんだね」
「ダンジョン中だけの話だよ。さあ、ダンジョンを出て城を見て見ようか?」
美香は優斗に連れられて城の外に出る。今は外の時間に合わせて夜だが月明りと城から漏れている明かりであたりの様子が分かる。ダンジョンの中に月があることにも美香は感動した。それでも景色を楽しむには十分な明るさだった。




