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080 ダンテス達をもてなす④

ダンテスは優斗がバネット公爵領を出てからその後どこに行くか興味があった。だから優斗に尋ねることにした。


「分かっている。心配はしないさ。バネット公爵領に行った後はどうするんだ?」


優斗は取り敢えずバネット公爵領がどれ程酷い状態なのかを確認したいだけだった。この世界に住むにあたり酷い領主という者がどういう存在なのか知りたかっただけだった。


「バネット公爵領に行った後は王都を目指そうと思っています。この国がどういう国なのか知るには国の中心である王都を見たほうが良いと思いました」


「私も王都には行ってみたいと思っていたよ。お父さんとお母さんは生きているときに王都の話を良くしてくれたんだ。だから行ってみたい」


シャルルは冒険者をしていた両親からいろいろな地方の話しや王都の話を聞いて育って来た。両親が健在なら剣の使い方を習って冒険者になって国中を回って見たいと考えていた。


しかし、両親が死んで一人になってからは日々生きるのに精いっぱいで冒険者になる夢など諦めていた。だけど優斗がその願いを叶えてくれると聞いて嬉しくなった。優斗についていくと決めて良かったと考えた。そして、まだ見ぬ王都を想像してみる。


「なら、王都に行くのは決まりだね。その後は各地を回って見よう」


「優斗は冒険者になるのか?」


「冒険者も良いと思っているのですが商人になろうと思っています。俺しか扱えない商品がありますからね」


ダンテスは納得した。優斗が持っている酒だけでも商売になるだろうと思った。それにいつも何もないところからものを出すのをダンテスとアンナは知っている。アイテムボックスが使えるなら商人にはうってつけのスキルだ。


「そうなのかい? もし商人になるならたまにはうちの村にも物を売りに来て欲しいね」


アンナは優斗がどのような商品を扱うか知らないが今取引している行商人とは違った商品を扱うだろうと期待をしている。


「たまにはこの村に帰ってきますよ。その時にはお土産も持ってきます」


「そうかい? その時はシャルルも一緒に帰ってくるんだよ」


「アンナさん、私も優斗と一緒に帰ってくるので安心してください」


優斗がたまにこの村に帰ってくると聞いてシャルルは嬉しく思った。優斗からしたらこの村の近くのダンジョンマスターなのでたまには村によることもあるだろうと思っている。時空魔法の転移が使えるので問題はない。


シャルルもレベル上げを行って魔力が上がれば大陸のどこにいても村に一瞬で帰って来られるようになる。その時は優斗が付き添わなくても大丈夫だと思った。


「帰ってくるときはシャルルさんも一緒です。必ず戻ってきます」


それからこの国の他の領地についてダンテスが知っている範囲で話を聞いた。この国の貴族は貴族派と国王派と中立派と庶民派の四つの派閥に分かれているらしい。今は国王派と庶民派が手を結んでいて政権は安定しているという。


この領地のダンケル男爵は庶民派の貴族と言うことだ。そしてバネット公爵は貴族派の派閥に属しているらしい。貴族派の貴族は庶民のことを考えるよりも貴族にもっと特権を与えるための行動をとっているとダンテスは教えてくれた。


そしてこの国の貴族は貴族同士の争いが絶えないらしい。この国は封建制を取っているが国王は貴族の代表と言う位置にいて国の統治は各貴族にゆだねられていると言う事だ。だから戦国時代の様に貴族同士が土地を奪い合うような争いごとが起るという話だ。


だけど派閥単位で団結が強くそう言う争いごとになる前に派閥のトップで話し合いがもたれると言う事だ。しかし、争いの種はいくらでもある。だからいつでも争いに巻き込まれても良いように村人も戦闘訓練はしているという話だった。


「貴族派の貴族には十分気をつけろよ。平気で平民を殺すような奴もいると聞くしな」


「そんな酷いことがまかり通るのですか?」


「優斗の国の貴族のことは知らねーが。この国では貴族に逆らう平民はいねーよ。優斗の国ではそんな貴族はいなかったのか?」


優斗は自分の国のことをシャルル達に話したことはない。でも、この世界では封建制が当たり前のことなので話を合わせることにした。


「俺の国の貴族も似たようなものですがむやみやたらに平民を殺すような貴族はいませんでした。なので、ダンテスさんの言うことを聞いて正直驚いています」


「そうなのか? じゃあ悪い貴族の話をしておいてよかったな。決して貴族に歯向かうんじゃねーぞ。後が怖いからな」


「はい、貴族にはなるべく関わらないようにします」


ダンテスにはそう言ったが優斗は力で押さえつけようとするやつはたとえ貴族でも許すつもりは無かった。そのためにダンジョンでレベルを上げたのだ。そんな貴族がいたら吹きとばすくらいの気持ちでいた。


シャルルにも同じように貴族や暴力を振るう者たちにこびへつらうことが無いように鍛えるつもりでいた。この村を出たらすぐにでもダンジョンに行きレベル上げを行う予定でいる。シャルルにはまだそのことは話していない。


「そろそろ、お腹の調子も戻ってきましたよね。お菓子を出しますね」


「優斗、私が持ってくるよ」


シャルルはそう言いケーキを取りに向かった。そしてチョコレートケーキとレアチーズケーキののった皿を持って来た。そしてカップに紅茶を注ぐ。


「ダンテスさん、アンナさん、優斗が作ったケーキです。食べて見て下さい」


ダンテスはケーキを見て驚く。真っ黒い食べ物が食べられるか不思議に思った。でも甘い良いにおいがしてくる。一口サイズにフォークで切り分けて口に運ぶ。


「美味い!! これは美味しいな!」


「ほんと?」


アンナはダンテスの食べている姿を見てチョコレートケーキを食べる。


「美味しいわ。こんなものが食べられるなんて幸だよ」


「喜んでもらって良かったです。ケーキのお土産もありますから明日にでも食べて下さい」


それから四人はこれから優斗がどのように旅をするのか話し合った。食事の時間があっという間に過ぎていく。


「ありがとう。全て美味しかった。今日は楽しい時間を過ごせたよ」


「私も幸せな時間を過ごせたわ。もうこの料理が食べられないと思うと残念ね」


本当に楽しい時間はあっという間に過ぎていく。これでシャルルと別れになると思うとダンテスとアンナは悲しい気持ちになる。しかしシャルルが幸せそうな顔をしているので涙は見せない様に我慢する。


「いつか村に戻って来た時にまた御馳走しますよ」


優斗の言葉にダンテスとアンナは喜ぶ。


「私も帰って来た時にまた二人のために食事を作ります」


「嬉しいことを言うじゃないか。ありがとう。その時はまた御馳走になるわ」


「俺もごちそうになるぜ」


ダンテス達との食事会はあっという間に終わった。優斗はダンテス達にお土産として日本酒を五本に赤ワインを五本、桃にリンゴにイチゴと梨にキングミノタウルスの肉とチョコレートケーキにレアチーズケーキと食べ残した料理をタッパーに入れて持たせた。


料理のタッパーには腐敗防止の魔法を付与してあるので腐ることはない。ダンテスとアンナはお土産を喜んでくれた。そして二人は帰っていった。

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