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079 ダンテス達をもてなす③

ダンテス達は嬉しそうに料理を食べて良く、でも四人で食べられないくらいの量を作っていたので料理が余ってしまう。まだ、ケーキも出していない。


だが、ダンテス達はもうお腹がいっぱいになっていた。これ以上食べることが出来ない。まだ手を付けていない料理もある。ダンテスは申し訳ない気持ちになる。


「すまねーな。全部食べることは出来ない」


「私もお腹いっぱいだよ」


ダンテスとアンナはもうこれ以上食べられないようだ。シャルルと優斗はいつでも自分が作った料理を食べることが出来るのでお腹がいっぱいになるまでは食べていない。余っている料理のことは心配いらない。


「余った料理はあとで包みますので家に持って帰ってから食べて下さい」


「村長、まだケーキというお菓子があるんですよ。もう食べるのは止めて下さい」


優斗が料理を包んでくれると言うのでダンテスは食べるのをやめる。シャルルがまだお菓子があると言う言葉を聞いてこれからまだ食べるのが出てくるのかと心配そうな顔をする。それはアンナも同じ状態だった。


「お菓子があるのか? 今は無理だ。これ以上食べきれない」


「私も無理ね。初めて見る料理だから食べられるだけ食べようと思ってお腹いっぱいになってしまったよ」


そう言ってダンテスとアンナはすまなそうにする。でも、優斗もシャルルも気にしている様子はない。全て今日一日で食べきれるとは思っていない。それくらいの量の料理を二人は作っていた。


ダンテスとアンナは初めて食べる料理を前に食べるペースを考えないで沢山食べていた。そのせいで全ての料理に口をつけることが出来なかったのだ。そのことを誰が怒ることが出来るだろうか。


「大丈夫ですよ。酒を呑みながら時間をつぶしましょう。そしたらまた食べられるようになりますよ」


「お菓子は美味しいですよ。食べてから帰って下さい」


ダンテスもアンナもお菓子には興味がある。料理だけでこれほど美味しいのだ。お菓子がどれ程美味しいか想像しただけで食べたくなる。それに農民であるダンテスとアンナはお菓子なんてめったに食べられるものではない。


二人は、しばらく酒を呑み休憩を挟んでお菓子を頂こうと思った。優斗はダンテス達が全ての料理を食べきれないだろうと思ってあらかじめ植物性のプラスチックを利用したタッパーを準備していた。


タッパーは植物性なのでちゃんといずれは土にかえる。環境破壊とかの問題はない。それぐらいの気配りは優斗は出来るのだ。ラノベやネット小説の知識も馬鹿には出来ない。


「ありがとう。優斗、シャルル。残った料理はお土産として頂くよ」


「明日もまたこの料理が食べられると思うと嬉しくなるね」


ダンテス達は嬉しそうにそう言う。たしかに二日続けて美味しい料理が食べられるのだ。こんなに嬉しいことはない。だが息子たちには内緒にしようとダンテスとアンナは思っていた。


「これから出すケーキもお土産に差し上げるので無理して食べなくても大丈夫ですよ」


優斗がそう言うとダンテスたちは嬉しそうな顔をした。それだけお菓子というものはめったに農民が口にできるものではないのだ。お菓子と聞いただけでよだれが出るくらいだ。


「そう言ってくれると助かるよ。正直、胃が痛いくらい食べたからな」


「そうなんですか?」


「ああ、こんな料理はそう食べることが出来ない。もう一生口にすることが出来ないかもしれないからな。そう思って食べ過ぎてしまった」


「シャルルは幸せ者ね。優斗と一緒にいればこんな料理が毎日食べられるのでしょう。羨ましいわ」


「はい、優斗には感謝しています。一緒についていって優斗に恩返しがしたいと思っています」


シャルルにそう言われ優斗は照れる。でも、シャルルは本気で優斗に恩返しをしようと考えていた。


「そう気にすることはないよ。シャルルさんは俺と一緒に旅に出てくれるだけで十分だよ」


「そういう訳にはいかないよ。本当に優斗には感謝しているんだからね」


シャルルは真剣な眼差しを優斗に向ける。優斗はその目を見てシャルルが本当に優斗に感謝していることが分かった。でも、シャルルには普通に過ごして欲しいと言うのが優斗の願いだった。


「シャルルは俺の義姉になるんでしょ。それなら義弟に遠慮しないで欲しいな」


「優斗は良いことを言うな。俺の義理の娘をよろしく頼むぞ」


「私の義理の娘を宜しくね」


「はい、任せて下さい。シャルルさんが幸せになる様に見守ります」


「ありがとう優斗、これからもよろしくね」


シャルルはダンテスやアンナに義理の娘と言われ嬉しかった。そして義弟と宣言した10歳も年下の男の子である優斗のことを可愛く思った。そして義姉として優斗を支えて行こうと決心した。


「シャルルさんは普通にしていていいんだからね。特別に何もしなくても良いよ。なにかして欲しくて村から連れ出すわけじゃないから」


「それでも、優斗の為に何かしたいのよ」


「一緒にいるだけで心強いと思っているんだけどな」


優斗はなにもシャルルに望んでいない。初めてできた友達だと思っている。彼女が幸せになるならそれで良いと思っていた。


でもシャルルはそういう優斗の気持ちを知らない。だから優斗の役に立ちたいと本心から願っていた。自分を生まれ変わらせた優斗に恩義を感じていた。


「そう言ってくれるとありがたいわ」


「それで、優斗とシャルルは村を出てどこに行くんだ?」


「私は優斗についていくだけで何も考えていません」


シャルルは優斗に一緒に村を出ようと言われているだけでどこに行くか聞いていない。ただ、シャルルのレベルを上げることだけしか知らない。


「俺はバネット公爵領に行こうと考えています」


ダンテスは優斗がバネット公爵領に行くと聞いて驚く。その貴族はあまり評判のよい貴族ではない。村に来る行商人から悪い噂を聞いたことがある。


「バネット公爵領はあまり勧められないんだがな」


「そうね。あまり良い噂を聞いたことが無いわ。悪い噂ならよく聞く貴族だけどね」


アンナも村長の妻だけあってバネット公爵領の悪い噂を知っていた。


「それは、分かっています。この国でこの村の領主は良い部類の領主だと聞きました。この村に来てこの村がどれくらい恵まれているのか俺は知りません。だから評判の悪いバネット公爵の領都に向かってみようと思ったんです」


「優斗がそんなことを考えているなんて知らなかったよ。私は何処に行くにしても優斗についていくよ」


「ありがとう、シャルルさん。心配しなくても危険な目には合わさないよ」


「優斗なら安心だな。キングミノタウルスを一人で倒すくらいだからな。シャルルに酷いことをする奴は全員ぶっ飛ばせばいい」


「そうね。優斗なら安心してシャルルを任せられるわね」


ダンテスとアンナは一抹の不安はあるが優斗の力を知っているので心配するのをやめた。シャルルも優斗を信頼しているので何も不安に思っていない。シャルル自身が危険な目にあうことなんて微塵にも思っていなかった。


「心配してくれてありがとうございます。俺なら大丈夫なので安心してください」


ダンテスとアンナは優斗に全幅の信頼を持っている。だからシャルルが危ないことに巻き込まれるとは思っていない。

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