077 ダンテス達をもてなす①
シャルルの家に戻ると優斗は日本酒やワインを50本ずつ等価交換で得てそれをテーブルの上に並べていく。そしてシャルルを呼ぶ。
「シャルルさん、このお酒を持って行って近所のお世話になった人たちに挨拶してきてください。あと、キングミノタウルスお肉も分けますね」
そう言い優斗はシャルルにキングミノタウルスの肉の塊を50ほど与えていく。
「ありがとう、優斗。このお礼はいつか必ず返すからね」
「そう、畏まらないでください。シャルルさんがお世話になった人たちにはきちんとお別れの挨拶とお礼をしておいた方が良いでしょ」
「その優斗の気持ちがありがたいんだよね。これは貰っておくわね」
シャルルはそれを受け取り亜空間倉庫に仕舞っていく。そして家を出て行った。
シャルルは家を出て行ったあと孤児になってもシャルルを助けてくれた家々をまわって村を出て行くことを伝えて日本酒とワインとキングミノタウルスの肉の塊を渡していった。そして一軒一軒家を回ってお礼を言っていく。
シャルルにお礼を言われた村の人たちはガラス瓶に入っている透き通った酒に驚いた。そしてシャルルとの別れをおしんだ。彼らもダンテス同様に孤児なったシャルルの心配をいつもしていた。シャルルが最近、優斗に出会って変わったことには気づいていた。
なので、シャルルが優斗と一緒に村を出て行くと聞いても納得してシャルルの旅立ちを喜んでいた。そして貰った品物のお礼を言ってくる。シャルルが渡した酒も肉も高級品だと直ぐに分かる。
そんなものを準備できる優斗と旅立つのだからみんなはシャルルが幸せになると考えていた。そしてシャルルが村を出て行くことを悲しんだ。
でも、シャルルが明るく振舞っているので彼女が幸せになれるなら村を出て行っても大丈夫だろうと思い優斗と一緒に行くことを歓迎した。シャルルは村人との別れに寂しさを感じ涙を流すがその顔は笑顔だった。
シャルルは涙ながらに彼女が出て行くことを歓迎しているみんなを見て後ろ髪惹かれる思いだった。それでも優斗と一緒にいるほうがシャルルは幸せになれると自分に言い聞かせる。
家に帰って来たシャルルは今日の夜の料理について優斗と話し合う。シャルルは出来るだけいろいろな料理やお菓子をダンテスたちに食べてもらいたかった。優斗は和食と洋食と中華料理から二品ずつ作ることをシャルルに提案した。
そして、洋食からはビーフストロガノフとローストビーフを選び日本食からは天ぷらと握り寿司、中華料理からはオークキングの酢豚とエビチリをえらんだ。
選んだ理由はキングミノタウルスの肉とオークキングの肉が活かされる料理と村では食べることのできない海の魚やエビを使った料理が良いと思ったからだ。
料理は等価交換で得ることはしない。等価交換で得た料理より料理Lv.10のスキルを持つシャルルと優斗が作った方が美味しいからだ。今日に限っては料理する時間があるのでデザートも二人で作ることにしている。
果物も出すのでケーキはチョコレートケーキにレアチーズケーキを作ることになった。昼から料理の準備をするので今日はデザートのケーキを作る時間も十分にある。ケーキも等価交換で得たものより優斗たちが作ったものの方が何倍も美味しいに決まっている。
優斗とシャルルは二人で手分けしてRoomで料理を行う。Room内のキッチンの広さを広げて二人でキッチンに立ってもぶつからないように優斗が作り替えてある。そして優斗はデザートのケーキと和食を作りシャルルは洋食と中華料理を作ることになった。
料理Lv.10のスキルを持っている二人の料理する手際は物凄く良い。二人が料理をするのにRoomのキッチンで不都合は無かった。なので、料理をするのになんの問題もない。
問題は料理ではなかった。シャルルの家にあるテーブルは二人が食事するのに適しているが四人で食事をするとなるとこのテーブルでは狭い。四人分の料理をいっぱい並べることが出来なかった。
それで優斗はスキル創造で四人が余裕で座れるテーブルと椅子を作り出した。そのテーブルの上に出来上がった料理を並べていく。そして、料理に虫がつかないように虫よけの結界で部屋を囲んだ。
料理を並び終えてダンテス達が来るのを優斗とシャルルは待つことになった。時間はまだ少しだけある。優斗はシャルルに日本で飲んでシャルルにも味わってもらいたいと思っていた。タピオカミルクティーをだして振舞った。
「優斗、これは何?」
「これは俺の故郷ではやっていた飲み物ですよ。飲んで見てください」
シャルルは直ぐにストローに口をつけてタピオカミルクティーを飲む。そして幸せそうな顔をする。
「美味しいわ。なんだかつぶつぶがあって変わった飲み物ね。でも気に入ったわよ」
「そう言ってくれると嬉しいです。お替りも準備しますか?」
「今日はこれからお酒も呑むから一杯でいいわ。いつかまた飲ませてくれるとありがたいわ」
「じゃあ、またの機会に準備しますね」
家の外に優斗が出てみると陽は西に傾いている。そして空が赤く染まっている。夏の三の月だ。もう直ぐ秋の一の月になる。空が秋のように赤く染まるのはそのせいだ。ウクライーナ王国では一年が四つの季節に分かれている。
夏が三カ月に秋が三カ月、冬が三カ月、そして春が三カ月になっている。正月は春の一の月の一日になる。そこが地球と違うところだろう。優斗がこの異世界に来たときは夏の一の月だった。
それから、二カ月以上優斗は異世界で過ごしてレベルを上げをして過ごしたことになる。その間、一日もレベル上げを休む日は無かった。シャルルもその間に薬草採集を休む日は無かった。二人が家で一日中過ごすのは初めてのことだ。
優斗が『もう直ぐ秋だなー』と思っていたころシャルルの家に向かってくるダンテスとアンナを見つけた。二人は並んでこちらに向かってくる。
「ダンテスさん。こんばんわ」
「ああ、おじゃまするぜ」
「今日はお邪魔するわね。どんな料理を食べさせてもらえるのかしら?」
二人は態々優斗たちが夕食に誘ってきたので少しは期待していた。なんせ優斗はキングミノタウルスの肉やオークキングの肉を持ってくるような強者だ。そんな優斗が出す料理に二人が期待しないわけがない。
「俺の故郷の料理を用意しました。お口にあえばいいですが……」
「それは楽しみだ。俺たちはこの国から出たことが無いからな。他の国の料理は食べたことが無い」
「そうね。楽しみだわ」
「どうぞお入りください」
「それじゃあ、遠慮なくさせてもらおう」
「失礼するわね」
そう言い二人はシャルルの家の中に入る。そして玄関を入り直ぐにダイニングになっているのでテーブルの上に並んでいる料理と酒の瓶に目が行く。料理はダンテス達が見たこともないものばかりだった。
そして、料理の数にも驚く。村では野菜炒めにナンのようなパンにスープくらいしか食べない。テーブルの上にはいくつもの料理の皿が並んでいる。そして以前優斗に貰った日本酒という酒に赤ワインが三本ずつ準備されている。
料理だけでも驚いているのに酒が三本ずつ用意されているのにも驚いた。そしてダンテスのお腹が『グー』となる。




