076 ダンテス達を招待する
村長の家についてシャルルが村長の家のドアをノックする。すると家の中からアンナが顔を出した。優斗がアンナに会うのは久しぶりだ。
「アンナさん。村長はいますか?」
「ダンテスは畑に行っているよ」
「そうですか? それなら畑に行ってみます。アンナさん、私は優斗と明日村を出て行きます」
アンナは驚いた顔をする。ダンテスと一緒でアンナもシャルルの両親に世話になっていた。シャルルが孤児になった時から彼女を自分の娘だと思って接していた。そんなシャルルが村を出て行くと言うことに寂しさを感じた。
でも、前にダンテスが優斗にシャルルをこの村から連れて出て行くように頼んだことを知っている。シャルルのためにはその方が良いことは分かっていた。それでシャルルを快く見送ることに決めた。
「シャルルがいなくなると寂しくなるね。でも優斗と一緒なら安心だ。なんせキングミノタウルスを討伐できるほどの男だからね」
そう、こんなに心強い相手がそう簡単には見つからない。アンナから見ても優斗は優良物件だった。この機会を逃したくないとアンナも考えていた。
「はい、優斗はとても頼りになる男の子だと思います」
「そうだね。安心してシャルルを任せられる男だね」
アンナは優斗のことを高く評価している。優斗が自分の息子だったらシャルルを村から出て行くように言うようなことはしなかったのにと思ってしまう。いまからそう思ってももう遅いことだとは知っていてもだ。
「大分、私が優斗に迷惑をかけることになると思いますが頑張ってみようと決めました」
「そうかい。私はシャルルの考えを尊重するよ。優斗は良い男だからね。シャルルを養うだけの甲斐性はあるだろうさ」
「はい、私も優斗と一緒なので安心して村を出て行くことが出来ます。それで、今日の夕食にダンテスさんとアンナさんを招待したいのです。来てくれますか?」
「なんだい。私たちに御馳走でもするのかい?」
「はい、御馳走で持て成そうと思っています。酒も用意しますよ」
優斗はアンナを歓迎することを告げる。
「優斗がそういうなら美味しい酒が飲めそうだね」
アンナは優斗がよく家に持ってくる酒が高級品なことを知っている。何度もダンテスと飲んだことがあるからだ。酒は領主の家でもご馳走になった事の無い酒だった。昔ダンテスと旅をしていた時でもお目にかかったことはない。それくらい良い酒だ。
「はい、楽しみにしていてください」
「いいよ。夕食の時間にシャルルの家に行けばいいかい?」
「はい、それくらいの時間に来てください。待っています」
「その時間にお邪魔するよ」
アンナは優斗が魔物を狩ってきていることを知っている。そして、今日は何を食べさせてくれるのか楽しみにすることにした。まあ、酒も楽しみにしていた。
「ダンテスさんのところには今から向かって知らせてきますので……」
「わかった、お願いするよ」
「では、行ってきます」
シャルルはアンナの悲しそうな顔を見て後ろ髪を引かれる思いになるがこれから優斗と一緒に旅に出る方が数倍楽しみのため笑顔でいられた。そしてダンテスの管理している畑に向かう。
ダンテスの管理している畑は村長と言うこともあり村で一番広い畑を持っている。そこには村長の子供たちも働いていた。その子供たちはシャルルの姿を見てあからさまに嫌そうな顔をする。
それくらいダンテスがシャルルのことを気にかけていることが嫌なのだ。村人を煽ってシャルルに嫌がらせするような連中だ。シャルルは子供たちを無視してダンテスの方に行く。いくらダンテスの子供でも彼らに愛想を振りまくほどシャルルはお人好しじゃない。
優斗も子供たちを無視してシャルルの後についていく。畑の中を歩く優斗とシャルルの姿に子供たちは不機嫌さを隠さない。二人が現れたことに不満を持っているのは見ていてよくわかる。
ダンテスは珍しく優斗とシャルルが畑に来たことに首を傾げて不思議そうな顔をする。いきなり二人で現れたのだ。なにか大切な用事があって来たとダンテスは思った。
「ダンテスさん、こんにちは」
シャルルは何時もの様に挨拶をする。
「ダンテスさん。お世話になっています」
「おう、どうした。シャルルは分かるが、優斗まで畑まで来るなんて珍しいな」
「実は私は明日、優斗と一緒に村を出て行こうと思っています」
ダンテスは遂にこの時が来たかと思った。自分が優斗にシャルルを村から連れ出すように頼んだんだ。いつかはシャルルが優斗と共に村を出て行くと思っていた。そして、ダンテスは優斗の顔を見る。優斗はダンテスの視線を感じてただ頷く。
そして、優斗がシャルルを説得してくれたことを嬉しく思った。優斗に任せていれば問題はないとダンテスは確信している。そしてシャルルが幸せになることを願った。
「そうか、村を出て行くか?」
「はい、優斗と一緒に旅に出ようと決心しました」
「優斗、シャルルを任せても大丈夫なんだな」
ダンテスは娘を嫁に出す心境で優斗に尋ねた。優斗はダンテスがそんな思いを胸に抱いているなんて思わない。でも、ダンテスの真剣な眼差しが優斗をとらえている。それくらいは優斗にもわかる。
「安心してください。シャルルさんが幸せになれるまでサポートしますよ」
優斗の言葉にシャルルは驚く。ダンテスは優斗の言葉を聞いて安心した表情を見せる。そして悲しそうな嬉しそうな複雑な顔をする。
「優斗の決意は分かった。シャルルはそれで良いんだな」
「はい、私はどこまでも優斗についていくつもりです」
シャルルの意気込みを聞いてダンテスは安心する。シャルルも優斗には心を許していると思った。そしてこれで自分の役割が終わったことにほっとする。しかし寂しさがこみ上げてくる。可愛い娘をよそにやる親の心境だ。
「優斗、本当にシャルルを頼むぞ」
「はい、任せて下さい」
優斗はダンテスの気持ちが分かるような気がした。苦渋の思い出シャルルを優斗に任せたいとダンテスが告白した時のことを思い出す。ダンテスはシャルルの幸せを考えて真剣だった。
「それならかまわない。シャルル、優斗と共に村を出て行けばいい」
「有難うございます。それで、今までお世話になった感謝を込めて村長とアンナさんを夕食に招待したいのです。今日の夕食は私の家で取って下さい」
ダンテスはシャルルの誘いに嬉しそうな顔をする。そしてどういう料理が出てくるか楽しみになる。優斗が準備する食材は高級品が多い。今回の料理にそれらが使われることに期待をしている。
「優斗、もちろん酒も用意しているだろうな」
「もちろんですよ。飽きるまで吞んでいってもらう予定です。リクエストはありますか?」
ダンテスは優斗がこれまでに持って来た酒を思い起こす。
「日本酒と赤ワインが飲みたいな。用意できるか?」
「大丈夫ですよ。用意しておきます」
「そうか、楽しみにしているぞ」
「はい」
「ダンテスさん。楽しみにしてきてくださいね」
シャルルの言葉にダンテスは嬉しそうな顔をする。
「分かったよ。アンナと一緒にお邪魔するよ」
「有難うございます」
「村長、酒も準備しておきますね」
「優斗は分かっているな。楽しみにしているぞ」
シャルルと優斗はダンテスを招待すると家に戻った。そして、夜に出す料理やお菓子にフルーツをどれにするか相談して時間を過ごした。




