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066 優斗退魔師になる様に誘われる。

祈里は本来の目的を果たしたので次の目的の話をすることにした。


「優斗さん。さっきも聞きましたが退魔師になってもらえませんか?」


祈里はどうしても優斗に退魔師になって欲しかった。優斗ほどの力があればほとんどの妖魔は優斗一人で対応できると考えていた。それほど優斗から感じる覇気の強さは尋常なものではなかった。


それは祈里が特別な目をもっているからわかることなのだ。他の人では優斗の強さに気づかないだろう。祈里も初めて優斗を力無しに見たときは戦えるような人には見えなかった。


「それはどうしても俺が退魔師にならないといけないってこと?」


「はいそうです。私と付き合うためにも優斗さんには退魔師になってもらいたいのです」


優斗は祈里に言われしばらく考えた。そして自分が得た力で弱い立場の人たちを救えるならそれは良いことだと考えた。力を持ったものが弱いものを虐めるのは許せない。妖魔の様な化け物が弱い人間を襲うことが許せないと思った。


「分かったよ。退魔師になろうと思う。どうすれば退魔師になれるかな?」


「退魔師になるには試験を受けなくてはなりません。試験は8月5日から二日間かけて行われます。優斗さんは成神家の分家扱いで受験を受けてもらおうと思っています。それでいいですか?」


退魔師は本家と分家に分かれている。そしてどこかの家系に属しているのが当たり前だ。その本家を通して退魔師としての仕事が入ることになる。優斗が途中から成神家の分家扱いになるのには問題が無い。


これまでも退魔師の家系に生まれながら霊力が低く退魔師になれなかった者が一般人として生きていきいつの間にか退魔師の家系であることを忘れた家があった。そういう家系から突然、霊力の高い子供が生まれるときがある。


退魔師たちの家では、はそういう子供を引き取って家系に組み込むことがたまに行われてきた。なので、優斗たち九条家を成神家の分家扱いにして退魔師の家系にするのに何の不都合もなかった。


「それでいいよ。悪いけど俺の妹ともう一人女性も受験できるようにしてもらっていいかな?」


優斗がいきなり妹ともう一人の女性の話を出してきたので祈里は少し戸惑う。しかし霊力の高い優斗の妹なので妹も霊力が高いのだろうと想像した。でも、一応は優斗に確認することにした。


優斗はシャルルと美香を異世界のダンジョンで鍛えることを考えていた。そしてシャルルを日本に招待することも考えている。そのために祈里の実家である成神家の力が必要になると思っていた。


優斗は成神家の力でシャルルとミミックスライムの戸籍を成神家に作ってもらうようにお願いしようと考えていたのだ。


「妹さんともう一人の女性はいくつですか? それと妹さんは霊力を持っていますか?」


「4月が誕生日だから15歳だよ。霊力も問題ないよ。もう一人の女性は訳ありだけど15歳だから問題ない」


「それなら大丈夫です。退魔師の資格を持つことが出来るのは15歳以上の霊力を持ったひとですから」


「それなら問題ないね」


「はい、優斗さんが試験を受けると言うことなのでこの本を渡しておきます」


祈里はそう言って一冊の本を優斗に手渡す。


「この本は退魔師を目指すもの向けの教材です。退魔士試験では実技試験の他に筆記試験もあるので勉強してくださいね」


「勉強も必要なのか。分かったよ。この本は借りるね」


「その本には妖魔に会った時の行動規範とか妖魔の弱点なんかが記されています。試験に出るので覚えておいてください」


「分かったよ。ちゃんと読むようにするよ」


優斗は家に帰ってから美香に説明しないといけないなと思った。異世界に行って強く成りたいという美香なら退魔師になることを引き受けてくれるだろうと思っていた。


「返さなくても結構ですよ。妹さんともう一人の方にも読んでもらってくださいね」


「分かった。本は貰うね」


「はい」


「それと念の為に聞いておきたいんですが、もう一人の女性と優斗さんの関係を教えてくれますか?」


祈里は身を乗り出して優斗に迫ってくる。優斗は祈里の圧に押されてシャルルのことを話すことにした。


「もう一人の女性はシャルルさんていう人なんだ。おれのお姉さん的な存在なんだよ」


「本当にそれだけの人ですか?」


祈里は優斗の女性関係が気になって仕方がない様子だった。


「本当にそれだけの関係だよ。ああ、シャルルさんは異世界人だからそのことで祈里さんに相談があるんだ」


「どういう事でしょう。優斗さんは異世界人を日本に連れてくるのですか?」


「そういうことだね。それで俺のスキルで退魔師について調べたんだけど、退魔師では式神に戸籍を与えたりして人として過ごさせているよね。それでシャルルさんにも日本の戸籍が欲しいんだ。それと俺の使い魔の戸籍も欲しいと思っているんだ」


祈里は暫く考えてから返事をした。


「優斗さんの事情は分かっているつもりです。その話は父に相談しておきます。優斗さんお誕生日の日までに結論を出しておきます。それで良いですか?」


「それで良いよ。ありがとう。祈里さんに相談できてよかったよ」


「どういたしまして」


そう言い祈里がなんだかソワソワ、モジモジし始めた。そして、意を決したような顔をした。そんな祈里を見て優斗はどうしたのかなと考える。


「優斗さん、この後お暇ですか?」


「別に予定はないよ。今日は祈里さんにあうだけだったから」


祈里は優斗の言葉を聞いて嬉しそうな顔になる。そして優斗に誘いをかける。話をする目的は達成したのでこれからは自分の思うように優斗との時間を過ごしたいと祈里は考えていた。


「それでは、これから私とどこかに行きませんか?」


「えっ!?」


突然の誘いに優斗は驚く。


(これってデートの誘いでは……?)と優斗は思った。


「優斗さんに用事が無ければ一緒にどこかに行きたいです」


「えーとー、祈里さんさえ良ければ一緒にどこか行きますか?」


優斗も話をしただけでさようならということはないかなと考えた。でもどこに祈里を連れて行っていいかよくわからない。優斗は今までに友達がいなかったので外で遊ぶと言う事をしたことが無い。


いきなり女性とデートをするなんて思ってもいなかったことだった。


「はい、どこに行きますか? 私は近くの公園でも良いですよ」


祈里の提案に優斗は拒絶反応を示す。目的が無く公園に行って女性と何を話していいか分からない。こういう時にラノベやネット小説の知識が頭をよぎる。映画なら会話をしなくても一緒の時間が過ごせる。でも何も会話が無いのは問題だと優斗は思った。


それならゲームセンターだなと閃く。ラノベではよく主人公がヒロインと遊びに行くことが描かれている。そのことを優斗は思い出した。


「俺はインドア派だからどこに遊びに行っていいか分からない。だから近くのゲームセンターにでも行ってみない?」


「そこで良いですよ」


「じゃあ、これから場所を確認するね」


優斗はゲームセンターどころか映画館さえも行ったことが無い。勿論、どこにゲームセンターがあるか知らない。直ぐに、スマホでググった。そして、駅前にゲームセンターがあるのを知ってそこに向かうことに決めた。


「ゲームセンターの場所が分かったよ。そこに行こう」


「はい」


こうして二人は喫茶店を出てゲームセンターに向かった。

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