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065 祈里の告白

退魔師について話したいことをある程度達成した祈里は次の目的に移ることにした。その目的こそが祈里が優斗に会いに来た本当の理由だ。そして、祈里は緊張した面持ちで優斗を見る。


優斗は祈里の雰囲気が変わったことに気が付いた。祈里はなんだか真剣な顔立ちになった。どういう話が出るのか優斗は分からないが姿勢を正す。


「それでですね。優斗さんにお願いがあります。言いにくいのですが、優斗さんには退魔師になっていただきたいのです。そして、私を娶って下さい」


そう言う祈里の顔は真剣そのものだ。ちゃかしているようには見えない。でも、話していることの内容が簡単に答えられない内容なだけに優斗は暫く考え込む。そして優斗は決意を込めた顔をする。


真剣に話をしてくれている祈里に誠実であろうと考えた。優斗はもとから女性にはモテたことが無い。そんな優斗のことを醜い顔をしたときから真剣に思ってくれていた祈里のことが優斗は気になっていた。


それが優斗の気持ちだ。そのことだけははっきりしている。でもいきなり娶って下さいと言われたら困るのが本音だった。


「祈里さんを娶る話は置いておくとしましょう。ただ退魔師にならないと祈里さんとお付き合いは出来ないのですか?」


祈里はがっかりした表情をする。優斗には彼女として認めてもらいたいと言うのが彼女の本音だ。いきなり娶って下さいと切り出したのは失敗だったかと思った。


「はい。いくら霊力があっても退魔師ではない方に私は嫁ぐことが出来ません。ただこれだけは伝えておきたいのです」


そう言い祈里はますます思いつめたような顔になる。そして今までよりも言葉に力を感じる。


「私は優斗さんの正妻になれなくても良いのです。妾でも構いません。この先、優斗さんが愛するような女性が現われても私は気にしません。なので、私のことを真剣に考えて下さい」


祈里は言いたいことはこのことだった。星詠みで優斗には複数の女性と付き合うと出ていた。そのせいで自分のことが重荷に感じられることが嫌だったのだ。それに現代人なら複数の女性と付き合う事なんて出来ないと思うのが当たり前だ。


その考えを優斗が持っている場合。自分のことを先に好きになってもらえなかったことで敬遠される恐れがあった。それを失くすために妾でもいいと告白することにしたのだ。


優斗は祈里の発言に驚く。妾でも良いと言うことが信じられなかった。優斗はラノベやネット小説でハーレムものの小説を読んだことはある。好きな部類にも入る。でも自分がハーレムの主人公のような立場になれるとは思わなかった。


今まで醜い顔で女性に嫌われてきた優斗が顔を作り替えて整った顔になったからと言って直ぐに女性と仲良くなれるとは考えていなかった。優斗は自分を愛してくれる人が一人でも現れたらその人を幸せにしようとそんなことだけを考えてきた。だから祈里の告白に衝撃を受けた。


「それは本気なの? 昔ならともかく今の時代に妾とかいう話を聞いたことがないんだけど……」


「本気です。実際に私の父には三人の妻がいます。正妻一人に妾が二人です」


祈里の告白に優斗は驚く。実際にそんな話があるなんて優斗は思いもしなかった。退魔師の家系は普通の家ではないと優斗は思った。


「そんなことってあるんだね。何か理由があったりするの?」


「はい、陰陽師の家系では神の血を引いて人知を超えた力を得る代わりに子供が出来にくいのです。私の父も正妻の他に二人の妾がいますが子供は4人しかいません。四人のおやから四人の子供しか生まれていないのですよ。子供が生まれても退魔師の人口は増えているわけではないのです」


「たしかに子供は四人いて兄弟が多いように見えても退魔師の人口増加は見込めないね」


四人の親から4人以上の子供が出来ないと人口増加は見込めない。退魔師が子供を残すのは大変なことなのだ。


「はい、そうなんです。普通の家のように子育てにお金を使うのが嫌だから子供は一人で良いというようなことで子供が少ないわけではないのです。父はもっと多くの子供を欲しいと思っているようですがなかなか子供が出来ないんです」


祈里の家庭事情を聞いて優斗は恥ずかしい気持ちになる。でも、一生懸命説明する祈里を見て話を聞いてあげようと思った。


「祈里さんのお父さんにお妾さんがいると言うことには驚いたよ。でも子供が出来ないってことで何か問題があるの?」


「問題はあります。子供が減ると退魔師が減ります。人々を守る退魔師が減ると妖魔に多くの人々が襲われると言うことになります。だから霊力の多い退魔師の男性は複数の女性を娶るのです。優斗さんは多くの霊力を持っています。数人の女性を娶っても誰も文句は言いません。なので、優斗さんの側に侍る女性の一人に私を選んでいただければ結構です」


祈里の話を聞いてどこのラノベの話しだよと優斗は思った。しかし退魔師が子供を残すということが大事な役目であることも分かった。納得は出来ないが理解はした。そして祈里が複数の中の一人の女性として扱われるのに何の不満もない事も理解した。


だが現代日本に生まれた優斗が直ぐに複数の女性と付き合って良いと言われて「はいそうですか」というはけにはいかない。暫く考え込んで祈里を傷つけない様に話をすることにした。


優斗は初めて自分に告白してくれた祈里のことを大切にしたいと思っていた。これから付き合うとかそう言うのは抜きにしてだ。優斗はスキル未来視で祈里と結婚する未来を見ている。だから余計に祈里のことを第一に考えている。


「俺は多くの女性を侍らそうとは思っていないよ。祈里さんのことは悪いようにしないつもりだから安心していいよ。ただ、さっきも言ったようにお互いちゃんといろいろなことを知ってからお付き合いしたいと思っている。そのことは譲れないかな」


祈里は優斗の言うことを聞いて安心した。少なくても優斗は祈里に対して悪い印象は持っていないと彼女は思った。そして優斗に愛されるように努力しようと心に決めた。


(好きになってしまったから仕方ないじゃない。運命の人とか関係ない。優斗さんとお付き合いしたい)


それが祈里の正直な思いだった。


「優斗さんの言うことは理解できます。これからお友達としていろいろお互いのことを知っていきましょう。でも、もし誰か私の他に好きな方が出来たときはちゃんと相談してくださいね」


「そんなことはないと思うけどね。その時はちゃんと祈里さんに話をするよ」


祈里は優斗が誠意を持って話していると言うことが理解できてうれしく思った。ただ、星詠みで優斗の周りに数名の女性が現われることだけは伝えなかった。少しでも自分だけを見て欲しいと言う願いが祈里にはあった。でも、優斗が誰か他に好きな人が出来ても優斗の邪魔をするつもりは無かった。


「今までの話しで理解したと思いますが私が嘘を見抜く力を持っていたり真実を見抜いたりする目を持っているのも神様の血を引いているからなんです」


神様の血を引いていると言うことが特別な血を引いていると言うことだった。祈里はその中でも顕著で特殊な感覚と目を持っていた。


「それで、俺が嘘を言ったり誤魔化そうとしたりしたことに気づいたんだね」


「はい、なので、私に嘘は通じないと理解してくださいね」


「分かった。嘘は言わないよ。でも、それだと良かれと思ったことでも嘘はつけなくなるんだね」


「そうですね。友達がサプライズ誕生日をひらこうとして嘘をついているときなどそのことに気付かず嘘を言っていると思って問い詰めたときなんか友達を困らせました。そんな悲しい思い出があります」


「ということは俺もサプライズのようなことは祈里さんに出来そうもないね」


祈里はその言葉を聞いて悲しそうな顔をする。そうどんなに祈里のことを思って嘘を言っても彼女にはばれてしまうのだ。


「そういうことになりますね。残念です」


「ちなみに祈里さん誕生日はいつ?」


優斗はサプライズのはなしから祈里の誕生日を知らないと言うことに気付いた。初めてできた友達の誕生日は知っておこうと思った。


「私の誕生日は12月5日です。優斗さんはいつですか?」


「俺は7月22日だよ」


祈里は思わぬところで優斗の誕生日が分かって良かったと思った。そして7月22日はもう直ぐだと言うことに気付いた。優斗の誕生日を一緒に祝いたいと祈里は思った。


「丁度、夏休みですね。一緒にお祝いしましょう。約束しても良いですか?」


祈里は勇気を振り絞って優斗を誘う。顔がほてってくるのが分かる。今の祈里の顔は頬が赤くなっているだろうと自覚する。


優斗はこれと言って予定が無いので祈里の申し出を受けることにした。優斗も美少女の祈里に誘われて平常心ではいられない。心臓がドキドキしているのが優斗自身でも分かる。


「いいよ。これといって予定もないし祈里さんが祝ってくれるのは嬉しいよ」


優斗は今まで家族に無視されていたので家族に誕生日を祝ってもらうと言う習慣が無かった。だからこの時、優斗の家族や美香が優斗の誕生日を祝おうと計画を立てていることに気が付かなかった。


そのせいでこのあと美香の機嫌がかなり悪くなることになる。


「それじゃあ、約束ですよ。私の方で予定は組んでおきます」


「分かった」


優斗の言葉を確認して祈里は大事な話を聞きそびれていたことに気付いた。祈里は本来の目的の話しに移ることにした。

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