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064 退魔師について②

祈里は全面的に優斗が神様の子孫だと言う事を信じていた。それが優斗が霊力を持っていると言う事で確信を持ったと言う事だった。


「それで祈里さんは俺が神様の子孫だと信じたんだね」


「はい。そうです。霊力を持っていたので初めて見たときにそう確信しました」


優斗は霊力を祈里以上に持っていると祈里は思っている。その優斗が神様の子孫であるあかしだと考えていた。


「納得がいったよ」


「でも、霊力を持っているだけで私たちが神様の子孫だという訳ではないのです。私たち退魔師の家系に生まれた者は10歳の誕生日の日に覚醒します。その時に持っていた霊力が格段に多くなり人知を超える力を得るのです。鍛えていなくても子供の力で大人2,3人に勝てるくらいの力を得ます」


「それは凄いね。普通の子供では考えられないね」


「そうですね。そして修行を積むことと武術や剣術に弓術などを習うことでさらに強くなっていきます。ラノベのようにレベルを上げなくても修行をすれば強くなれます。私は退魔師の中でも強い方ですがまだ修行をすれば強くなれます。まだ成長限界に達していません」


修行をすれば祈里はまだ強くなると聞いて優斗は驚いた。異世界で人が到達した最高のレベルが180と叡智は言っていた。しかし祈里の実力はレベル190はある。それだけ祈里は強いと言うことだ。そして、まだ祈里が強くなると言うのだ。


(叡智、どうして俺も神様の子孫なのに覚醒とかしなかったのかな? 美香もそんな兆候は見られなかったし……)


(それは、マスターたちの先祖である神様が人間として下界に降りたときに人間と結ばれたときの子孫だからです)


(えっ!? 祈里さんたちは俺たちとは違うの?)


(はい、祈里さんたちは神が神として下界にいるときに人間と交わった時の子孫です。なので、生まれつき人知を超えた力を持っているのでしょう)


(そうなんだ。理解できたよ)


叡智のおかげでなぜ優斗と美香が覚醒するようおなことが無かったか理解した。


「祈里さんより強い人がいるの?」


「はい、各家の本家の当主は私たちでは及ばないほど強いですよ」


「そういう人たちでないと勝てないほど強い妖魔がいるの?」


優斗は一番そのことが知りたかった。異世界のレベル255以上の魔物より強い妖魔がいるか知ろうと思った。


「はい、私では相手にできない妖魔もいます。でも心配しないでください。普通の日常を送っている人が妖魔に会う確率は車に引かれる確率よりも低いですから。そう頻繁に妖魔が出没するようなことがあったら世間で話題になりますよ」


祈里が言っていることは正しい。妖魔なんて世界的に見れば毎日人間界に出没しているが関東だけをみると週に一度でるか出ないかだ。そんなに頻繁に妖魔は人間界に出没しない。


「そんなに妖魔が出ないんだったら退魔師って仕事は成り立たないんじゃないの?」


「優斗さんは良いところに目をつけますね。退魔師の仕事は妖魔を討伐することだけではないのです。悪霊を払ったり強い妖魔を封印している土地の管理をしたりすることも退魔師の仕事なんですよ」


「妖魔だけでなく悪霊もいるんだ?」


「はい、妖魔退治よりも悪霊や建物に巣くう霊を払う仕事の方が多いです。そういう仕事で稼いでいます。それに浄化した妖魔の死体はお金になるんです。血液がガンの特効薬に使われたり肉から抽出した成分が難病の薬になったりするんです。でも、それだけで実家や分家の人たちを養うことは難しいのが現状です」


祈里の話を聞いて優斗は退魔師がもうかる商売じゃないのが分かった。命がけで人々を妖魔から救っているのに報われない職業なんだなと思った。


「退魔師ってお金が稼げない報われない職業なんだね」


「はっきり言うとそうですね。でも、退魔師は国にとって重要な役目を負った者たちです。そこで国は退魔師を税制面で優遇しています。退魔師の収入に税金はかかりません。確定申告も必要ないんですよ。それに相続税や固定資産税や法人税などがかかりません」


「それは羨ましいね。代を重ねるごとに資産が減ると言うことを避けることが出来るんだね」


退魔師は妖魔を退治するときに国から報酬を得る。でもその報酬はそんなにたいしたことはない。アニメや漫画の様に妖魔を退治して何億円も報酬が得られるということはない。それで国は退魔師を税制面で優遇する方針を取った。


「はい、そうやって国は私たち退魔師の家系を守ってくれているんです。そして相続税や固定資産税に法人税がかからないので退魔師の本家や分家は不動産業を副業にしている方が多いんです。私の家も多くの不動産を持っています。不動産から得られるお金で分家の退魔師を養っているんですよ」


「今までの話しで退魔師について少し理解したよ。でもそれ程、退魔師が強いなら戦国時代とか活躍出来たんじゃないかな?」


優斗の言うことは最もだ。レベル190を超える人が一人いるだけで万の人間を相手できるだろう。退魔師だけで天下を取ることが出来たはずだと優斗は思った。


「優斗さんの言うことはもっともなことです。でも考えて見て下さい。私たちの様な存在が人々の争いに加勢すると何万もの命を簡単に奪うことになります。そのため大名たちは退魔師を戦に加えることはしなかったのです。自分の陣営に退魔師を招くと言うことは敵の陣営にも退魔師が現れると言うことですからね。人の世に悪い影響を与える退魔師は退魔師の排除の対象になります。悪いことをする退魔師は全退魔師を相手取ることになります。だから退魔師は悪いことが出来ません」


「そういうことだったんだね。だから退魔師は表の世界に出てこないんだね。納得したよ」


「はい、それ以上に退魔師は自分たちが神様の血を引いていることに誇りを持っています。そのため、いくら頼まれても人の争いに退魔師が関わることはありません」


優斗は祈里の話を聞いてなぜ歴史の表舞台に退魔師が出てこなかったかを知った。


「いろいろ教えてくれてありがとう。退魔師について理解できたよ」


「それは良かったです。ただ、言っておかないといけないことがあります」


祈里の悲しげな表情を見て優斗はなんでそんな表情をするのか疑問に思った。


「話してみて……」


「はい。退魔師の人は神様の子孫だと言うことに誇りを持っていると言いましたよね」


「そう聞いたね。それで人の世の争いごとには組しないって言っていたよね」


「そうです。しかし、退魔師の家系で芦谷(あしや)家という家だけは考え方が違ったんです。芦谷家は『神様の子孫は力こそが全て』と言う考え方を持ったのです。それが明治時代の芦谷家当主の考えでした」


そして祈里は悔しそうな表情になる。神様の子孫で人を守るための力を芦谷家は他のことに利用しようとしたのだ。だがそういう退魔師は他の退魔師の一族の排除の標的となる。


「その芦谷家はどうなったの?」


「芦谷家はより強くなるために妖魔の血を継ぐ子供を作ったのです」


優斗は芦谷家の考えに驚いた。人間の敵で得ある妖魔の血をほっしたことに優斗はあきれた。


「大体想像つくよ。そういう内容のラノベやネット小説を読んだことがあるからね。でも現実にそういうことを考える人がいるなんて思いもしなかったよ」


「芦谷家は退魔師の総力を使って滅ぼしました。しかし妖魔の血を引いた芦谷堂満(あしやどうまん)だけは討伐を逃れたのです。その堂満は妖魔を利用して人々を襲っているのです」


悪いことをする退魔師は退魔師の威信にかけて排除される。芦谷家も例外ではなかった。


「退魔師は芦谷堂満とも戦っているんだね」


「そうです。妖魔以外との戦いもあるのです。そのことは知っていてほしかったんです」


祈里は退魔師の闇についても優斗に知って欲しくて全てを話した。優斗は退魔師について知れて良かったと思った。


(叡智、退魔師についての情報をインストールしてくれ)


(分かりました)


優斗は退魔師のことについて叡智から様々な情報を得た。そして退魔師が式神に人としての国籍を与えて仕事を手伝ってもらっていることを知った。漫画やアニメの世界で行われていることが現実で行われていることに驚く。


しかし、そのことを将来の優斗は利用することになる。それはどうしても優斗は日本で将来ソラにお願いしてミミックスライムを使い魔として使役している。


そして使い魔に人として国籍を与えて自動車免許を取ってもらったり宅地建物取引士の資格をとってもらったりすることになる。そうして優斗は日本で退魔師として更に不動産業をして成り上がっていく。日本では不動産王と呼ばれるまでに成長することになる。


「話してくれてありがとう」


「はい」


祈里は退魔師の話を終えてほっとした。退魔師の闇である芦谷堂満のことも話せたので満足した。

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