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062 祈里とお出かけ③

祈里は結界を張ると優斗に目を向けた。その顔は真剣そのものだ。優斗も真面目な顔になる。退魔師についての話をするのには誰にも聞かれない空間が必要だった。結界を張っても周りのお客さんお反応は変わらない。


「音声遮断の結界を張りました。外の音は聞こえますが結界内の音は外の人に聞くことは出来ません」


「他人に聞かれるとまずい話をするの?」


「はい、退魔師の話は一般人にすることは出来ません」


「俺は一般人なんだけどな」


優斗はそう言いとぼけて見せる。


「霊力を持った人を私たちは一般人としては扱いませんよ。それに今日は優斗の隠し事を聞きに来たんですから真面目に話して下さい」


祈里の圧力に優斗は負けてしまう。もう嘘を見抜く力がある祈里には嘘をついてもばれると思っているので優斗は正直に話をする。


「わ、分かったよ。でも初めに行っておくけど本当に俺は退魔師とか関係ないからね」


祈里は優斗の顔を特別な目で見て特別な感覚で優斗が嘘を言っていないことが分かった。それで優斗の言っていることに納得した。


「嘘は言っていないようですね」


優斗は他人に自分のことを言うつもりはなかったがスキル未来視で祈里と結婚する未来を見ていたし醜い姿の優斗に運命の人と言い付き合って欲しいとまで言った祈里を信じることにした。


そして、素直にすべて話すことにした。ただ、虐められていたことや自分が醜かったことなどは話さないようにすることにした。しかし祈里は直ぐにその話をする気は無かったようだ。祈里は目の前のケーキに目が行っていた。


「話を聞く前にケーキを食べましょう。それから話を聞きます」


「そうだね。食べてから話をしようか」


祈里はショートケーキをホークで一口サイズに分けるとそれを頬張る。そして幸せそうな顔になる。


「このケーキは美味しいです。程よい甘さがたまりません。それに生クリームの味が濃厚です。気に入りました。この喫茶店のショートケーキが話題になるのが分かるような気がします」


祈里の家は名家なのでお土産にもらうケーキなどはどれも高級品だった。それに通っている西園寺女学園は日本でも有名なお嬢様学校だ。そんなお嬢様たちが普段通うお店は有名店ばかりだった。そのため祈里の舌は肥えている。


そんな祈里が絶賛するくらいだ。この喫茶店のショートケーキは美味しいのだろう。


「この店を選らんで、良かったよ。祈里さんがそんなに気にいるとは思ってもいなかった。スマホの情報は馬鹿にできないな」


「そうですね。私も新しい店を探すときにスマホを利用します。スマホで調べた結果で間違いがおこったことはたまにしかありません。友達もよくスマホで新しいスイーツのお店を探したりしているんですよ」


祈里は退魔師と言ってもまだ現役の女子高生だ。それらしい行動もとっている。優斗の方が男子高校生らしい行動がとれていないぐらいだ。優斗に友達がいなかったから仕方がない。


「俺は今回はじめて食べ物のお店を探したんだ。一緒に食べに行くような友達がいないからね」


祈里はなぜ優斗に友達がいないか不思議に思ったがそれは優斗のプライバシーに関することだと思い聞かないことにした。でも一緒に食べに行くような人がいないと言うことに不謹慎だが嬉しく思った。


(一緒に出掛ける相手がいないと言うことは本当に付き合っているような女性はいないようですね。それに一緒に遊びに行くような女性もいないようです。嘘は言っていないようなので嬉しいですね)


「優斗さんはいつもどのように過ごしているのですか?」


「俺はインドア派だよ。いつもは家でラノベやネット小説を読んでいるよ」


祈里は優斗のその言葉が意外だった。顔だけで判断すると外で遊んでいそうな印象を受ける。今の優斗はスキル創造でかなりイケている顔立ちをしている。それなので祈里がそう思うのも当然だった。


「外には出ないんですか?」


「友達がいないからね。一人で遊びに行っても面白くないでしょ」


「それはそうですね」


祈里は優斗の様な素敵な男性に友達がいないと言うことが信じられなかった。でも優斗が嘘を言っていないと言うことは分かっている。


「でも、これからは外に出て遊ぶのもいいなと思っているんだ。昔から友達とキャンプに行ったり海に行ったりすることが夢だったんだ」


邪神の呪いの様な嫌がらせを払拭した優斗はこれから友達が出来るだろうと思っていた。そして友達といろいろなところに遊びに行ってみたいと思うようになった。


「それじゃあ、私と一緒にキャンプとか海に行きましょう」


祈里の言葉に優斗は顔を赤くする。優斗は今まで女性とまともに話したことが無い。それどころか「私に話し掛けないで」とか優斗が近づくだけで「あっちに行って」とか言われたりして嫌われたりしていた。そんな優斗と一緒に遊びに行きたいという女性が目の前にいる。


優斗は嬉しくてたまらなかった。そしてその女性は誰が見ても美しいというような美少女だ。恥ずかしくて照れてしまう。


「一応、俺は男なので女性の祈里さんとキャンプに行ったり海に行ったりするのは恥ずかしいというか……」


「私は気にしません。優斗さんは私の運命の人ですから。強制はしませんよ。でも、私のことを意識してくれると嬉しいです」


優斗はこういう話をラノベやネット小説で読んだことがある。モブな少年のところに突然美少女がやってきていきなり好きになると言うパターンのやつだ。


でも優斗はそういう小説はあまり好みではなかった。優斗は醜かったので女性とは一生お付き合いをするようなことはないと思っていた。そのためラブコメ展開のラノベやネット小説は好きな部類に入る。


小説を読んで主人公になり切って疑似的恋愛を楽しんでいた。しかし、いきなり男女が付き合うようになる展開の小説は好みではなかった。まず、お互いに知り合うところから始まってだんだんと好きになって行って最終的に両想いになり最後に付き合うようになる展開の小説が好きだった。


だから祈里が突然、優斗に「意識してくれると嬉しいです」と言われても「はい、俺も好きです」と言うことに抵抗があった。優斗はちゃんとお互いを知って恋愛をしてお互い好きになって付き合うことが理想だった。


「祈里さんの気持ちは嬉しいですが、すぐに俺が祈里さんを好きになることは無いと思いますよ」


優斗はこれまでいろいろな女性に嫌われてきた。だから、直ぐに人を信用できない体質になっていた。祈里の気持ちを素直に受け入れることが出来ない。


「それでも私の気持ちは変わりませんから。いつか私が好きだと優斗さんに認めさせるつもりです」


「もっと、お互いを知ってから祈里さんのことは考えさせてくれるとありがたいです」


祈里は優斗の言っていることを理解した。確かに祈里も恋愛小説で素敵な男性と言うだけで直ぐに付き合うような女性を好ましくは思っていなかった。それに、祈里自身かわいいというだけでよく男性から告白を受けていた。


それも名前も知らない男性からだ。その時に祈里は自分のことを何も知らないくせに告白してくる男たちのことを快く思っていなかった。祈里はそういう出来事があったことを思い出した。そして優斗の言っていることに理解を示した。


「そうですね。ではお友達から始めると言うのはいかがでしょう?」


「それなら俺も納得できます」


「お友達なら一緒に遊びに行っても問題ないですよね?」


「そ、そうですね。問題ありません」


祈里は優斗の言葉を聞いて心の中でガッツポーズをする。


「では、今度映画を見に行きませんか?」


突然の誘いに優斗はたじろぐが美少女の祈里の誘いを断ることは出来ない。なんせシャルル以外に初めてできた友達だ。そんな祈里の申し出を素直に受けることにした。


「俺で良ければ一緒に行きましょう」


「見たい映画が決まったら連絡しますね」


「それは任せるよ。俺は映画館にも行ったことが無いから」


「分かりました。任せて下さい」


二人は世間話をしながらケーキを食べる。モンブランを食べた祈里は目を細めて嬉しそうな顔をする。


「このモンブランも美味しいです。濃厚な栗の味がします。素材の良さを引き立てています。この店に来て良かったです」


「そう言ってもらえると嬉しいよ」


祈里は注文したケーキを美味しそうに食べている。優斗はその光景を見てこの店に連れて来て良かったと思った。

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